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15.活動開始

1メドル=1メートル



「名前は、マティス。修めている武術が拳闘術。ランクは最低ランクからしか始められませんので、Fとなります。何か問題ありませんか?」


「あ、はい、問題ないです」


「では、そのように登録しておきますので少々お待ちください」


そう言って、受付嬢が書類の処理を始めた。

その間、カウンター前でずっと立っておくのも威圧的かな、と考えた俺はキーラを連れてロビーみたいなところに設置されている椅子に座ることにした。


ロビーは冒険者たちが大勢居て、とても座れるような雰囲気ではなかったのだがーー


「あ、さっきのやつだ」「あぁ、ランド吹っ飛ばしたやつ?」「え?それ、マジぃ?」「俺は見てたぞ!ランドが長剣を粉々にぶっ壊されながら地面に叩きつけられる様を!」「やっべ、超化け物じゃんか」「オレ、さっきあいつのこと笑ったんだよな……」「俺も」「私も」「とにかく近寄らないようにしようぜ」


と、こんな感じで、俺が近づいてきた瞬間に、モーゼの海割りみたいに人が避けて行ってしまい、ポカンと席だけが取り残される形となった。


先ほどの試験官との模擬戦は、良くも悪くも人々に俺のイメージを一転させる原因となっていた。


試合前は明らかに俺を軽蔑した目で見てきていた受付嬢たちは、試合後では俺のことをどこかの名のある武闘家みたいな人を見る目で見ていたし、周りの冒険者たちは、試合前にあれだけ俺を馬鹿にしたとあってか、仕返しを恐れてまったく近付かなくなってしまっていた。


確かに周りから見れば、怒りを抑えきれずに試験官をボコボコにした、というイメージが付いてしまっても仕方がないのだが……。

まさかあそこまで弱いとは思わなかったからなぁ。


ちなみにキーラは普段と変わらずに俺の横に居てくれているので、もう彼女だけが俺の精神安定の拠り所になっていると言っても過言ではない状態だ。


席に着いたら、ギルドの役員っぽい人がウェルカムドリンクをくれたので、それを飲みながらキーラと雑談をする。


「それにしても、お兄様があれ程までに強いとは思いませんでした。どうして、言ってくれなかったんですか?」


「いや、そんな隠し事をされて不満みたいに顔を膨らまされてもなぁ。俺も試験官があそこまで弱いとは思わなかったからさぁ」


「まぁ、2メドル近くある巨体が吹っ飛ぶ様は見ものでしたけど」


そう言って、キーラはふふっと微笑んでみせる。


うん、めっちゃカワイイ!

やっぱり、女の子はこうじゃないとな!


カイリちゃんみたいな強引な娘も嫌いじゃないんだけど、この可憐でお淑やかな様を見せつけられると、正統派ヒロインって感じがする。


俺はキーラから漂ってくる香水みたいな良い匂いを堪能しながら、話を楽しんでいた。


すると、しばらくして受付嬢さんがロビーまで来てくれた。


「マティスさん、手続きが終わりました。カードをお受け取りください」


「あ、はい、ありがとうございます」


「それで、今から依頼を受注しますか?それとも今日はお休みに?」


「あ、えーと……」


そう言えば、俺はここに金を稼ぎに来たんだったな。

だったら、今日中に一件は受けないといけないんだが……。


ギルドに来て、色々とゴタゴタに巻き込まれたことで、既に日は高く昇ってしまっていた。

今から受注したとして、日が暮れるまでに終わるのだろうか?


俺はその旨を受付嬢に伝えた。


「依頼によっては丸一日どころか、一週間、二週間と拘束されるものがありますが……マティスさんは今、Fランクですので受けられる依頼はEとFに限られます。E、Fランクは冒険者駆け出しのレベルになりますので、そこまで長くかかることはないかと……。マティスさんの実力なら、日が暮れる前に帰ってこれると思いますよ」


「なるほど……。わかりました、では受注させていただきます」


「はい、ではこちらの依頼からお選びください」


そう言って、5枚の依頼用紙を渡してきた。


「こちらは?」


「はい、現在のマティスさんが受けられる依頼をピックアップしてきました。本来ならあちらにあるクエストボードから自分のランクにあった依頼を持ってくる必要がありますが、何かと手間かと思いまして……。私が勝手ながら選ばせていただきました」


「あ、どうもありがとうございます」


「いえいえ。どちらになさいますか?」


グイグイと押し気味な受付嬢に少し戸惑いながらも依頼を吟味する。


すると、心なし不機嫌な雰囲気を醸し出しているキーラから発言があった。


「こちら二つの依頼でどうでしょう?」


「え?二つも受けるのか?」


「はい、でないと今晩の宿泊料だけで私たちの財布は空っぽになってしまいます。資金を増やすためにもここは二つほど受注すべきかと」


そう言って渡してきたキーラの依頼用紙はどちらも討伐依頼だった。


「ビックラビットとラージワームか……」


なんかどちらもジメジメしていて気持ち悪そうな魔物だな。

そう思ったけど、口には出さずに受付嬢にお願いした。


「はい、ビックラビットとラージワームの討伐依頼ですね。どちらも五体討伐が条件となっておりますので、注意してください」


「あ、はい」


「討伐部位はご存知ですか?」


俺が知らないので教えてください、と口を開きかけたが、それよりも速くキーラが発言した。


「私が知ってるので、問題ないですよ。それよりも、ギルドでは討伐部位を取るためのナイフの貸し出しがあると伺いました。そちらを用意していただいて宜しいでしょうか?」


「……かしこまりました。では、ナイフを準備しますので少々お待ちください」


そう言って、受付嬢はカウンターの奥へと引っ込んでいった。


じゃあ、受付嬢が来るまでしばらく暇だなー、と思っていたら不意に耳元にキーラの口が寄せられーー


「ーーお兄様はちょっと無防備ですよ。もう少し警戒心を持ってください」


と、忠告された。


……何で?







すみません、明日の投稿は遅れる可能性が高いです。


追記:8月22日の投稿は、23日に延期します。23日分も当日投稿する予定なので、明日は二話連続で投稿します。

さらに追記:はい、すいません。二十四日に延期します。本当に次こそは投稿しますので……もうちょっと待ってください。

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