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12.悪魔憑き

はい、すみません。8月19日の投稿は完全に無理であることを現時点で悟りました。うん、遅すぎだろ、と思うそこの貴方、正解です。

自分も19日の予定表をよく確認してから話を書くべきだったと後悔しているところです。気分的には課題が全く終わっていないのに少し清々しい気分になっている小学6年の夏休み最終日、といった感じです。

8月20日に19日分も含めて二話投稿することにしました。


最後にもう一度、すみませんでした。



「私も生まれつき人とは違う力を持っていました」


そう言って、虚空から白い鎖と黒い鎖をジャラリと出現させる。


「この力は悪魔の力なのだと……親類縁者、いえ村の人たち全員によって集って言われ続けました。お前は、生まれてはいけない存在なのだと」


ジャラジャラと蛇のようにうねりながら、俺の首筋へと巻きついてくる。


「しかし、彼らも悪魔憑きとはいえ村の住民を自らの手で殺したいとは思わなかったようで……。もしかしたら、奇抜な趣味を持つ貴族になら売れるかもしれない、と言葉遣いや仕草などの礼儀作法を教えつけられ、12歳の頃に奴隷商人へと売り出されました」


なるほど、平民らしからぬ礼儀正しい言葉遣いや姿勢は村で習ったのか。

しかも、その時点で12歳は確実に超えている……と。

少なくともJSじゃないな、JCかな?


……それよりも、首元にあるこの鎖を解いてもらっても良いですかね?

ちょっと、首が締め付けられて痛いんですけど。


「荷馬車に運ばれている最中、どうやら魔物に襲われたらしく……気絶から目が覚めたらあの有様でした」


そう言って、キーラは自分の身体を抱きしめる仕草をする。

キーラの大きめな胸がふにょんと形を変えている様を見て、ちょっとエロいな、と思ったのは俺だけの秘密だ。


「その後、奴隷商人に傷モノ用の檻に入れられて最低限生命維持ができる程度の食事を与えられて、生き長らえておりました。おそらく、一年ほど」


「……なるほどね」


じゃあ、キーラは中一と同じくらいの年頃というわけか。

まぁ、確かに中一くらいならこのくらい発育が良い娘もいるけど……それにしても、大きいな。


「……で?それが何で俺をお兄様呼びするのに繋がるんだ?」


「親近感が湧いたからです。私のような存在に今まで出会ったことがなかったものですから……。意識はほとんどなかったですが、私は覚えていますよ。お兄様が鍵のような物を何もないところからいきなり出現させている様を」


「あぁ、まぁな。確かに俺にもあるけどな、そういう力」


そう言って、俺は鍵を出現させる。


その様子を見て、キーラは目を輝かせた。


「やはり!それは、私と同じ悪魔の力!お兄様も悪魔憑きなのですね?」


うーん、どうなんだろう。

俺は村で暮らしてきて一度もそんなこと言われたことないからなぁ。

一応、鍵と錠の出現を人前では見せたことはなかったから、もし俺がそんなことができる、と言っていたら親に悪魔憑きだと言われていたんだろうか?

いや、でもあいつら自分の食い扶持以外は無関心だからなぁ。

泥棒するとき便利だな、程度にしか考えない気がする。


とりあえず、悪魔憑き云々については保留で良いかな。

実際、よくわからんし。


「それに、私と似た髪色の人も初めて見ました……」


「あー、この黒っぽい髪のことか?」


「はい……」


この世界では、黒髪黒目という配色は一般的ではない。

赤とか緑とか、茶色とか……。

ファンタジックな髪色が普通なのだ。


それを鑑みると、キーラや俺(と言っても、俺の髪色はどちらかというと紺色といった感じだが)はまぁまぁ珍しい配色ではある。


もしかしたら、髪の色も差別された原因の一つだったのかもしれないな。


「まぁ、過去のことは置いといて、だな。とりあえず、これからのことについて考えるとしようか」


「これからのこと、ですか?」


「あぁ、俺たちは今、重大な危機に面している」


「重大な危機……」


キーラを治療するために使った金額は銀貨7枚。

さらにここで一泊したことで、銀貨2枚を出費して、俺たちの手元には銀貨1枚しかない。


これでは、明日の寝床もままならない状態だ。

何とかして、この資金難を攻略しなければならない。


そう言った旨をキーラに伝えると、あっさりと解決策を提示してきた。


「ーー冒険者登録をしてみては如何でしょうか?」


「冒険者登録……?それって、つまりは冒険者になるってことだよな?」


「はい」


「いや、冒険者になってどうするんだよ。俺なんか元農民の一般人なんだぜ?冒険者って確か力が相当ないとやっていけないって話だが……」


冒険者ギルドに行って、登録を済ませれば誰だって冒険者になれる。

しかし、冒険者とは魔物の討伐から要人の護衛まで武力を用いることで仕事をこなす、謂わば傭兵のような職業なのだ。

そんなプロフェッショナルな仕事を俺ができるわけないだろ。


「いえ、一口に冒険者と言っても力仕事だけをこなすものではありませんよ。薬草の採取や町の清掃など、子どもでもできるような依頼がいくつもありますから。それにーー」


「……それに?」


「私の力を使えば、大抵の魔物はスムーズに倒せると思いますので、討伐依頼についてもそこまで苦労しないと思います。ですから、そこまで心配しなくても大丈夫ですよ」


「うーん、でもなぁ……」


いや、確かにキーラの言葉には一理ある気がする。

冒険者と言っても、力仕事だけが仕事じゃないだろうし……それに、俺の氣があればそれほど問題にはならない気がする。


キーラの異能も強いって話だし……。


「わかった。じゃあ、とりあえず冒険者になってみるか。キーラのこの力についても教えてくれるんだろ?」


「はい。口で説明するのは少し手間ですので、実演して見せたいと思います」


「そうか。じゃあ、とりあえずは宿で朝食を食ったら冒険者登録だな」


「はい、お兄様!」


そう言って、キーラは可憐に微笑み。

その笑みに内心でドキッとさせられながらも、俺は平静を装いつつ食堂へと向かったのであった。






「ご主人様、祝福持ちの奴隷の購入に失敗致しました」


「ーーは?」


ワイングラスを右手で弄りながら、男は短く問い返す。

その様子に、執事服を着た男性が思わず声を上擦らせる。


「ご、ご主人様が目をつけていた奴隷がですね……」


「ーーもしかして、死なせたのか?」


「い、いえ……既に売却済みになっておりました」


「馬鹿な……あんなボロボロの奴隷を欲しがる奴がいるのか?俄かには信じられんな……」


広い部屋に設えられている小さなテーブルの上にコツ、とワイングラスを置くと顎を撫でる仕草をとった。


「購入した人間の様相については聞いているのか?」


「は、はいっ……獣人の奴隷を連れた紺色の髪をした男だと、伺っております」


「獣人の奴隷だと……?」


(獣人を奴隷として引き摺り回すなど、何世代前の趣味なんだ、そいつは。少なくとも、今流行りの貴族の奴隷はエルフのはず……。とすると、そいつは貴族ではない、か……)


「チッ……予定が狂った。おい、バルトン」


「は、はいッ!何でございましょうか!?」


「金を握らせて、その奴隷商人からもう少し詳しい話を聞いておけ。我は近辺を探させる。いいな?」


「はいっ、今すぐに向かいます!」


「あぁ、金はリビングに置いてある共有金庫の中から持っていけ」


「はいっ、承知致しました!」


ドタバタと騒がしい音を立てながら、出て行った執事を見送った後、男はワイングラスに入ったワインで乾いた唇を湿らせる。


「ふんっ……。どこのどいつがそんな真似をしたかは知らんが……我の奴隷を持っていくような輩を逃すわけにはいかんな」


男はそう言うと、近くにいた使用人に部屋の清掃を任せてその部屋を後にした。







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