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10.治療《中》

やっと、主人公の能力が少しだけ出せました……。




どうやら宿屋が人を入れる条件というのは、ほぼほぼ悪臭の一点に集中しているようだ。


「他のお客様に迷惑がかからないようなら、問題ないです」


と、小汚い服を纏った俺とキーラは、スンと少しだけ匂いを確かめられた後に、すぐに部屋へと案内された。


部屋は一人部屋に二人で泊まるということにしたので、銀貨二枚の出費となった。

一応、二人部屋の方も検討してみたが、こちらは二人で銀貨4枚という値段になっているので、予算の都合上断念せざるを得なかった。

まぁ、俺が床で寝れば良いだけの話だしな……。


「こちら、105の部屋と鍵になります。部屋の鍵穴と鍵は番号で一致していますので、失くした場合は弁償することになります。ご注意ください」


ここの宿屋は一階に食堂と個室を設置し、二階に多人数が寝れる大部屋と二人部屋などが設置された二階建ての建物で、この街でも二番目ぐらいに規模が大きかった。

宿代を節約しようと思えばもう少し安いところに行けなくもなかったが……。

衛生面を考慮して、できるだけ高いところに泊まったのだ。


「お客様は、一泊のご予定ですので今日の夕食と翌朝の朝食がつくことになります。食堂でいただきますか?」


「えーと、部屋で食べることも可能なんですか?」


「はい。ただし、こちらの食堂は基本的に混んでいますので食事の持ち運びはセルフサービスとさせていただきますが、よろしいでしょうか?」


「あ、はい、特に問題ないです」


「それでは、夕刻の鐘が鳴りましたら食事の方へいらっしゃってください。すぐにお食事の用意をさせていただきますので」


「わかりました」


そう言って、宿屋の店員は静かにその場を後にした。


俺は部屋のドアに鍵を差し込み、ガチャリと開けるとドアの近くに併設されているベッドにキーラを寝かせた。


キーラは相変わらず荒い呼吸を繰り返している。

やはり、中品質のポーション程度では完治には至らないか……。


だとすると、問題はカイリちゃんがやっていた氣の譲渡なのだが……。

そこで負傷した右肩をそっと触ってみる。


「うん、やっぱほとんど痛みがないな」


巻かれている布を取ってみると、骨が見えそうなくらい深傷だった傷跡がほとんどなくなっている。


これを使えばおそらくキーラの状態も良くなるはず。

そう思って、先ほど習得したばかりの練氣を行う。


ブワッ、と湯気のような白いモヤモヤが全身を流動しているのを感じる。

試しに右足に集中させてみたり、右肩の傷に纏わせてみたり……。

自由自在、というほど流暢ではないが確かに操作できるようになっている。

後は譲渡をするだけだ。


そう思ってキーラの身体に触れてみたがーーー


「全然、氣が移動しないな……」


手で触れたことによってキーラ自身に流れている弱々しい氣を感知できるようになった。

それによって、俺の氣が全くキーラへと流れていないことも顕著になった。


うーん、何が駄目なんだろうか?

やり方がいけないとか?それとも接触している場所が悪いのか?


試しに心臓近くに手を置いてみた。


「あふっ……」


「…………」


ーーーセクハラになっただけだった。


いや、これはあれだよ?

意図しておっぱーーじゃなくて、む、胸に触るつもりだったわけじゃなくて、だな……。


うーむ、それにしても年の割に随分と大きなおっぱーーじゃなくて、発育が良いな。

俺のロリコンセンサーによると、おそらくカイリちゃんと同年代かそれよりも下ぐらいの年頃。

しかし、触ってみた感じはCぐらいはありそうな気がした。

いや、もしかしたら黒髪のせいで幼く見えるだけで実際はカイリちゃんよりも年上なのかもしれない。

俺の元カノもそんな感じだったしーーー


それはともかく、まずは氣の譲渡だな。


もしかして、氣って量が多くないと相手に渡せないのか?

そうだとするならば、俺が全然渡すことができないのにも納得がいくが……。


カイリちゃんの話によると、氣の量は修行することによって増えていくらしいが、個人の潜在値以上の量は出せない、とのことらしい。

それ即ち、氣とは完全な才能ということになるが……。


まぁ、結局のところその人個人が出せる氣の最大値は生まれた瞬間に決定づけられているものであり、氣の修行はあくまでその潜在値に近付こうとしているだけ、ということだ。


この話を聞くと人間の脳が実は3パーセントぐらいしか発揮されていないんだよ、とどこかの番組で言われてた与太話を思い出すのだがーーー


「ーーーッ!」


と、そこまで考えて俺はあることが閃いた。


氣はその人の潜在値に左右される。

即ち、今の俺は何かで蓋がされている状態というわけで……それを何らかの力で開放できれば、俺本来の力を使うことができる、という事ではなかろうか?


そして、その開放することのできる(異能)を俺は持っている。

そう、『全知全能の解鍵(マスターキー)』の出番である。





俺の潜在能力(ポテンシャル)を無理やり引き出すに当たって、『全知全能の解鍵(マスターキー)』を取り出したのだが……。


「あれ……俺の鍵ってこんな形だったっけ?」


全知全能の解鍵(マスターキー)』は、開ける対象によって差し込む部分が変形するようになっている。

そうでもしないと、鍵穴にささらないんだから当然といえば当然だが……。

その代わりに、鍵を持つ持ち手の部分の柄は変形しないようになっている。

そう、普段ならトランプのダイヤのような文様が刻まれているのだが……。


今回は、その持ち手の部分がスペードの柄になっていたのだ。


「……?」


これは果たして良い変化なのだろうか?

俺が潜在能力を引き出そうとしていることが、正解だと教えてくれているのだろうか?


まぁ、とにかく現状キーラを助けるにはこれしかないんだ。

今は俺の異能を信じよう。


そう思って鍵を持ったところで、俺ははたと気がついた。


ーーーあれ?こいつ、どこにさせばいいんだ?


普段なら開けたい物にさせば良い。

父さんのエロ本を隠してたタンスの鍵穴とか、母さんのへそくり用の金庫の鍵穴とか。

俺は常々人々が秘していた物の鍵穴を無秩序に開けてきた。


しかし、今回はどうだ?

俺が開けるのは俺自身の潜在能力。

だけど、俺の体には鍵穴なんてない。

一体、どこにさせば良いんだ?


そんな俺の疑問に、俺の身体が勝手に答えてくれた。

そう、胸の中心部分に奈落を思わせる黒い穴が、ぽっかりと空いた。


「ここに、入れろってことだよな……?」


俺はバクバクと鳴り響く心臓の鼓動を感じながら、震える手でゆっくりと鍵をさした。






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