プロローグ
明日は投稿できませんが、できるだけ8月中を毎日投稿を目標にしています。
ガタンゴトン、ガタンゴトン……ッ。
錆び付いた車輪が嫌に煩い音を立てながら、ろくに舗装もされていない石だらけの道を突き進む。
乗客は俺を含めて5人。
そのうち男性は俺を除いて3人。
2人が御者役で、1人が奴隷の見張り役である。
そして、この中で唯一の女の子である彼女は、隣で俺と同じように鎖でぐるぐる巻きにされている。
さて、ここまで状況説明したら勘のいい人ならばそろそろ気付くかもしれない。
そう、この馬車は奴隷商人の馬車。
ついでに言うなら、俺と隣の女の子は商品ーーーつまりは奴隷である。
特に犯罪を犯した記憶はない。(女の子については知らんけど……)
ただ、今年はうちの村が凶作だったこともあり口減しに何人か奴隷として売り出すことになってしまったのだ。
本当ならば、俺以外にも何人か成人になりたてのガキ、つまりは15歳ぐらいの男女をこの店に売る予定だったのだが……。
俺の容姿がそれなりに良いことが関係して、どうやら高値で俺を売り出すことに成功したらしく、俺一人で十分今年分を補うことができたようだ。
その結果、俺はこうして見も知らぬおっさんたちに囲まれながら、ドナドナされていったということだ。
……隣の奴?
いや、俺もこいつのことは知らんのよな。
俺が乗るときには既にいたしなぁ。
頭の上に犬っぽい感じの耳が生えているし、おそらく獣人のプリティーな少女なんだろうが……。
それ以上のことは何もわかってない。
というか、俺がいくら話しかけても全然喋ってくんねぇからこれ以上わかりようがないというか。
とにかく、今の俺にできることと言えば、奴隷の見張り役を担っている小汚いおっさんから話をせがむ事ぐらいだろう。
「結局のところ、この馬車はどこに向かっているのでしょうか?」
「んお?あ、あぁ……この馬車、ね。一応、帝都に向けて進んじゃいるが……お前ら二人とも綺麗な顔つきしてるからなぁ。もしかしたら、道中の街の貴族にでも買われる可能性があるな」
「道中の街、というと?」
「ああ、これから俺たちはーーー」
と、こんな感じで情報取集に勤しんでいたのだが、どうもそろそろ猶予は無くなってきてるみたいだな。
今まで、俺たちが向かった先は貧しい村ばかりだったから俺が買われる心配はなかった。
しかし、後二日も経たないうちに、貴族が住んでいるような大きな街へと着くらしい。
もし、そこで俺が買われるような目にあえば、奴隷の首輪をつけられること間違いなし。
さすがに奴隷の首輪を付けられたら俺でも逃げれる気がしねぇ。
ここらで潮時か……。
「そろそろ日が暮れてきたし、野営の準備をするぞ!マティス、テメェも鎖外すから手伝え!」
「「「了解!!!」」」
おっと、いきなりチャンスが来たみたいだな……。
◆
パチパチと薪木が燃える音を聞きながら、俺は奴隷用に与えられた泥のような飯を食っていた。
味はまぁ……許容できなくはない。
家でひもじい思いをしていた分、腹いっぱいに食べさせてもらえることを考えたらむしろ奴隷の方が良いかもしれない。
そう感じるぐらいにはうちの村は貧相だった。
……まぁ、それもこれも村長が自分の分だけ収穫を多めにとるような業突く張りだったからなのだが。
多分、今回の奴隷の売上の方も、相当村長が持っていっていることだろう。
そこら辺については、今世の両親には同情が芽生えるかもしれない。
ま、どうでも良いけど。
差し当たっては、どうやって逃げるかを考えるのが先決だ。
期間としては、今日も含めて後二日。
いや、あくまで見張り役のおっさんの体感だし、やっぱ今日中にここを出るべきか。
行動するんなら速い方が良いだろうし、そろそろ馬車の旅にも飽きてきた頃だ。
ちゃっちゃとこの鎖から脱出して、逃げるに限る。
しかし、そうなると問題は目の前で騒いでいるおっさん3人なんだよなぁ。
ガハハ、と豪快な笑い声を上げている彼らの様相は、一言で言えば筋肉マッチョというやつだ。
二の腕や太ももはこれでもかというぐらいに膨れ上がっているし、かなり背丈が高い。
色黒に加えて髭が濃いことも強そうに見える要因の一つだろう。
実際、奴らは道中で襲いかかってきた魔物を蹴散らしていたので、強いのには間違いない。
対して俺はどうだ。
貧しい村で育ったことも関係してか、ヒョロヒョロの手足に、170にも達しない低身長。
顔もイケメンだとよく褒められてはいたが、中性的すぎて全然怖くない。
異能を抜かせば間違いなくただの雑魚である。
そんな草食系男子がこいつらの目の前で堂々と鎖を外してしまえば、フルボッコに伸されてまた一から鎖に巻かれるのは目に見えている。
いや、むしろ一度抜け出したことで警戒されて更に厳重に巻かれる可能性すらある。
そんなのはゴメンだ。
俺は微に入り細を穿つ男。
行動を起こす前に、まずは計画を練るべし。
「ガハハッ、それにしても今年はあんまり奴隷が入ってこなかったが……中々売れそうなガキが二人も手に入るなんてな!」
「ああ、俺らはついてるな」
「それに一人は女っすよ。しかも、めちゃくちゃ可愛い!兄貴、ちょっとぐらいなら味見して構いやしませんか?」
「くくっ、あぁそいつはもともと非処女だからな。妊娠さえさせなけりゃあ、何回か出したってかまわねぇぜ?ただ、ヤるんだったら俺も混ぜろよ」
「おおっ!兄貴がヤル気なんて久しぶりっすね!?何っすか、ちょっとロリコン何すか!?」
「いや、最近処理してねぇから溜まってんのよお。俺もちょっとは遊びてぇしなぁ……。ゲルド!テメェはどうする?」
「俺はもうちょっと、熟してねぇと食指が反応しねぇよ。二人で楽しんでくれ」
「おう、そうか。俺たちだけ楽しむっーのもなんか、ワリィな。今度、いい店紹介してやろうか?」
「あぁ、そうしてくれるとありがたい」
「そうか。……じゃあ、ガンクとオレはあそこの洞窟でちょっと楽しんでくるからよ。お前はそこのガキを馬車に詰め込んどいてくれや」
「りょーかい」
「よし!ガンク、お前はあの娘を連れて来いや!」
「了解っす、兄貴!」
「ガハハッ、今日は楽しむぞぉッ!」
ふむふむ、なるほどねぇ。
となると、マジで今夜がビッグチャンスってわけじゃん?
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