銀行強盗に巻き込まれまして
こんにちは初めまして
初投稿者よろしくお願いします…
モブサイコ100というアニメが好きです
それが反映されているかも知れません
というかかなり反映されています
すいません
お願いします
手足をもぞもぞと動かす。
ぎしぎしと音を鳴らすガムテープ。
いや、これは絶対に無理だろ。
「おい、優、ほどけたか?」
師匠が僕に尋ねた。
「師匠、これは無理です。」
奴らに見つからない角度で、爪をガムテープに突き立てる。少しキリ目が入ったが、このままでは何日かかるか分からない。
「馬鹿お前、希望を捨ててどうするんだ」
師匠も腕をもぞもぞと動かす。師匠は女性らしく爪を伸ばしてマニキュアを塗ったりしない。だから、なかなかガムテープが切れないらしい。こんなときに、師匠の女子力のなさが裏目に出るとは。
「おい、お前ら!いったいさっきから何をしてるんだ!動くな!じゃないと撃つぞ!」
奴らの一人がこちらに拳銃を向けた。
周りの客たちが悲鳴を上げる。
このご時世で銀行強盗に遭うとは。我ながら運が無い。
「すまんすまん、もう動かないからそれをよけてくれ。女の子が怖がる。」
頭に拳銃を向けられていると言うのに、イケメンなことを言う師匠だ。確かに、師匠の横では二人親子の女の子が、ぶるぶると震えていた。
男は「……クソッ!」と言って拳銃を僕の目に前に置く。いいのか、それで。僕の目の前にに拳銃を置いていいのか。
心の中で呟きながらも、もう拳銃は向けられたくないので腕を動かすのを止め、何か無いかと考えた。
師匠も黙り込んでいる。
よりにもよって、あいつは今日里帰り中だ。午後には帰ると言っていたが、こりゃ間に合わない。きっと解読所の前で怒っているに違いない。あいつがビルをめちゃくちゃにする様子がありありと浮かぶ。
―うっわ……
やばい。早く帰らなければ、あいつがビルごと、いや町ごと破壊しかねない。
「優、そういや有栖はどうした?」
師匠が、あいつ―有栖の名前を口にした。
「今日は里帰りです。午後には帰るって言ってましたから、今頃解読所の前ですね。」
「そうか……やばいな。」
「はい。やばいです。」
師匠と僕の間に、冷たい風が吹いた。
「よし、優。もういろんなことを気にしている時間はないようだな。」
有栖のことで、頭がいっぱいになっている。それは僕も同じだ。早く帰らなければ。
「そうですね。どうしますか?」
「『孫悟空』の絵本とかないか?」
そういわれて僕は、かめはめはを出す方を想像する。あれに絵本なんてあったっけ。
「言っとくけど、猿の方だからな。」
師匠がじろりとにらむ。
「分かってますよ。それなら、あそこにあります。」
指を使えないので、しかたなく顎で場所を示す。
しゃくれている自分を想像して、笑いそうになった。
「孫悟空」の絵本は、奴らのリーダーと思われる輩のちょうど後ろの、絵本ラックのなかに入っていた。
「ジャスト。ぴったりじゃねえか。」
師匠が悪い顔をした。たぶん、僕もそんな顔をしている。
「いつものは?」
「いつもの」といわれたら大体あれだ。
ズボンの尻ポケットに潜ませた紙きれを、そっと師匠に手渡した。もう一枚、僕は自分の手の中に紙を潜ませる。
「オーケー。お前は、『かぐや姫』で援護を頼むぞ。」
奴らは外部の奴と連絡を取るのに夢中で、一切こっちを見ていない。
チャンスだった。
「いくぞ!」
小声をやめた師匠のバカでかい声が合図だった。
シュン!
叫んだ瞬間、師匠の身体が紙きれの中に消える。
叫び声に気付いた奴が、拳銃をこちらに向ける。しかし、その体制のままかたりと拳銃を落とした。
「『かぐや姫』、天人。」
何色とも言えぬ、美しい羽衣をまとった天人たちがゆらゆらと動いている。ときおり、ふふっと笑い声を上げる。
僕の持っている紙きれから現れた天人たちが、奴らの力を奪っているのだ。縛られていた客たちも、ぽかんとして宙を見上げていた。
「師匠!今です!」
ぽかんとして天人に気を取られていた強盗団のリーダーの後ろから、いきなり師匠が飛び出してきた。
孫悟空のように、如意棒を掴んで。
「如意棒!硬く、長く!」
師匠の手の中の如意棒が、ぐいーんと伸びる。
そのまま立っていた強盗団をまとめて薙ぎ払い、余裕の笑みでリーダーをふんづけた。
すうっと、如意棒が消え、天人たちも消えた。
しばらく状況が飲み込めていなかった客たちが、わあっと歓声を上げる。
それに応えるように手を振る師匠と、かおをまっかにして縮こまっている僕。
と。その時。
「お前ら!静かにしろ!全員撃つぞ!」
カウンターの裏にいた強盗団の一人が、大きな銃を構えて叫んだ。とたんに歓声は悲鳴に変わる。
師匠の顔が引きつり、僕の顔は青くなった。もう如意棒も天人も消えている。
もう一度出すにしても、この状態じゃ即刻撃たれる。
万事休す。四面楚歌。
そんな単語がぐるぐると頭の中をめぐる。
さて、どうしたものか。
そのときだった。
「さぁぁぁぁああああああああああああくらこぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
ドゴォッ!
見事に銀行の屋根を突き破り、煙をもうもうと上げながら、真っ赤なドレスに白いエプロンを着た少女――有栖が現れた。
僕達が心配していたのは、こういう事だったのだ。
ちゃっかり、あの強盗にドロップキックを噛ましている。
「櫻子、優!有栖が帰るっていってたのに、なんでいないの!アップルパイ用意しといてって、言っておいたのに!」
白目をむいた強盗とがれきの上に立ち、腰に手を当て、わがままを叫ぶ少女。でも今は褒めてやるべきだ。
「ありがとう、有栖。助かった。お礼にアップルパイ、いっぱい作ってやるからな」
師匠が苦く笑った。
「お?おお!何かよくわからないけど、どいたまして!」
仁王立ちのまま、満面の笑顔を見せる有栖。あーはっははは!と高笑いをして見せた。
さっきよりも増してぽかんとしている客たち。
閉じられたドアの向こうから、どたどたと足音が聞こえた。
「よし、突入!」
警察がわらわらと入ってくる。
そして、目の前の状況を見てどよめく。
倒れている強盗たち。
崩れている天井。
ぽかんとしている客たち。
高笑いをしながら、がれきの山の上に立っている少女。
さて、どうしたものか。
師匠が有栖の手を掴み、僕に向かって叫んだ。
「優、逃げるぞ!」
ぱたり。絵本が落ちた音がした。
さっきまでそこにいたはずの三人の姿は、一瞬にして消えた。
そこには絵本がおちていたが、絵本は何も語らない。




