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第46話:最強賢者は感心する

 長時間の戦闘で疲れ切ったティアナは、その場に未だその場に蹲って、息を切らしている。


「お疲れ様。よく頑張ってくれたな」


「あっ、ユーヤ君! 来てくれたんだ」


「おう。立てるか?」


 俺はティアナに右手を貸して、持ち上げる。まだよろよろとふらついているが、もう大丈夫そうだ。強靱な体力の持ち主であるが、回復力も高水準。すっかりいつもの笑顔を取り戻していた。


「それにしても、まさかスティーナがあんなに強いとはな。後半まで力を隠してたようには見えなかった。これは一本取られたよ」


 序盤はティアナが押しているように見えた。ティアナが勝てたのは、序盤のリードが大きかった。もし初めから本来の力を出していたら、結果は変わっていた。


「私もちょっと不思議だった。急に強くなったような気がして……。あれも何かの魔法なんですか?」


「……いや、身体強化魔法を使ったようには見えなかったし、単に序盤に手を抜いていただけだと思った。序盤から本気を出さなかった理由まではわからないんだが……」


「……そう、ですか。えっと、リーナさん」


「わ、私?」


 急にティアナから名前を呼ばれたリーナがピクっと反応する。


「もしセオリー通りに先鋒、中堅、大将の順番で強いとしたら、中堅のレイトさんはもっと強いはず。……最初から持てる力を全て出し切る方が良いと思います」


「わかったわ。私だってこの数日必死にオリジナル魔法の練習をしたんだし、ここで結果を出さないとね。最初から全開でいくわ」


 なんとも微笑ましい光景だったが、俺は別のことを考えていた。

 今年の一年生だけが極端に強い理由について。昨日と一昨日に行われた二年生と三年生の試合を見た限りでは、たとえ三年生が相手であってもティアナが苦戦するような相手ではなかった。


 スティーナが最低ラインなのだとしたら、レイトやキースの実力は想像を遥かに超えてくる。職業に関しては、スティーナとキースが狂戦士。これから試合があるレイトが剣士というくらいだ。俺やリーナ、ティアナのような特殊な者が混ざっているわけではない。


 いや、そりゃこっちだってエリスが強いのだからおかしいと指摘するほどのことではないのだが、謎は深まった。


「じゃあ、そろそろ召集の時間だから、行ってくるわ」


 第一試合が長時間に及んだため、リーナはゆっくりとしていられない。


「ああ、気をつけてな」


「わかってるわ。でも、多少は無理させてよね」


 リーナは冗談交じりにそう言い残して、次の試合に向かった。


「ティアナ、休んでいてもいいが……リーナの試合、一緒に見るか?」


「もちろんです!」


「そうか」


 リーナとティアナを入れ替えて、また俺たちは三人になった。

 さっき観戦していた場所まで戻って、次の試合を静かに待った。


 ◇


 十二時ちょうど――本来なら第三試合が始まる時刻から、リーナとレイトの試合が始まった。


 リーナは、ティアナの助言通り開幕から出し惜しみすることなく、オリジナル魔法を起動していた。


 魔法の内容は、いわゆる身体強化。

 この世界の人間は、自分の身体的限界を超えた力を発揮するとき、無意識的に身体強化を使う。魔法により肉体を一時的に強化するのだ。


 だが、リーナは俺の本を読んだことで、既存の身体強化に疑問を覚えた。


 無駄が多すぎるということに。


 無意識的に使う身体強化は、全身を強化する魔法だ。

 例えば殴るときに必要なのは、腕の筋力と、それに耐えられる肉体の強度。自身の殴りに耐えられる脚力。


 逆に言えば、その部分だけを強化できれば、他の部分は強化されていなくても何の問題もないのだ。全体のリソースを一点に割り振り、持てる力の限界をさらに引き上げる――それがリーナの考えたオリジナル魔法だ。


 これには、俺も驚かされた。

 技術的には難しくないし、俺も自然に使っていたことだ。だが、意識的に会得することでさらに洗練され、使いやすいものになる。


 目の付け所が良い。考え方としてはとてもシンプルなので、魔法自体は一日で使えるようになった。それを数日かけて研鑽し、さらに使いやすくしてきた。


 こんな単純なことだけで、リーナは二倍から三倍ほど強くなったと見ている。

 リーナが脚力に魔力を集中させ、ロケットのような軌道でレイトに迫っていく。聖騎士の武器は近接武器ならなんでも使いこなせるが、今回は素手で臨んだようだ。


 相手を殺してはいけないという制約があるため、素手を選んだようだが……この速度だと最悪殺しかねない気がする。


「リ、リーナさん凄いですね……私でもあれは絶対無理です……」


「まあ、これが技術革新(イノベーション)ってやつだよ。地道な筋トレも大事だが、こうして頭を使うことでポテンシャルの何倍もの力が出せる。――良い例だよ」


「勉強になります」


「それにしてもこの前見た時よりもスムーズっていうか、起動が早くなってるわね……」

 ジッと試合を見ていたエリスが呟く。


「地道な練習の成果だよ。でも、普通じゃここまでは無理だ。リーナには魔力配分技術の才能があったのかもな」


「……なんか、負けた気分だわ」


「エリスのオリジナル魔法だって、武器を剣に限定すれば、何倍もの火力を叩きだせる」


 まあ、どっちかだけを使うんじゃなく、リーナとエリス、両方の魔法を組み合わせればさらに高みを目指せるんだけどな。

 今の段階では各々が技を極めるだけで限界だが、ゆくゆくはそっちの方向で進めていきたい。

お待たせしました!

十日ほど空いてしまいましたが、なんとかペースを取り戻せそうです。

予告なく期間が空いてしまい申し訳ありません。

リアルが忙しかったり短編を書いていたりと、色々ありまして……。


書いていた短編は↓のリンクにあります、『報酬ゼロの新米冒険者』というタイトルです。

短編なので空き時間にサクッと読めるかと思いますので、ぜひ読んでみてください。

評判が良ければ連載化も……と思っています。

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★2020年7月よりこちらも連載中です
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