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第8話:最強賢者は提案される

「グオオオオォォォォ……」


 オークキングの見た目の特徴は、通常のオークの二倍くらいの大きさであること、王冠を被っていること、老けていることが挙げられる。


 オークキングは背中に括り付けていた大きな棍棒を両手で握って構える。

 俺も剣の柄を強く握る。

 いくら大きかろうが、棍棒はパワーが乗るだけ。剣で斬ってしまえば何も怖くない!


 俺とオークキングの睨み合っていると、七匹のオークリーダーが一斉に襲い掛かってくる。

 雑魚がいくら集まっても雑魚でしかない。こいつらも自分が死ぬことくらいは分かるだろう。これが忠誠心というやつか。


 いいだろう、受けてやろうじゃないか。

 オークキングもリーダーたちを盾に使って攻撃するような恥知らずではないようだ。


 一匹目のオークリーダーが襲い掛かると同時に、背後から回り込んでくる者がいる。

 右からも、左からも俺を囲んでくる。


 オークリーダーたちは松明を手に取り、自身の身体に火をつけていく。


「アウッチチチチチチチッッッ」


「キュエエエエエエエキュエッ」


 炎上した身体は皮膚がただれている。

 この後確実に死ぬということにさえ目を瞑れば、確かにこの一手は脅威だ。

 俺は少しオークというものを甘く見ていたのかもしれない。

 人間よりも同族に忠誠心の強い存在。命を捨てて襲いかかってきたら……よほどの実力者でないと格下に後れをとってしまう。


 燃え上がるオークリーダーたちが特攻してくる。

 俺は宙を飛び、その特攻をかわす。

 獣の燃える臭いが鼻を刺激する。リーナたちに注意を向けると、何事かとこちらを覗いている。こっちのことは気にするなと目でメッセージを送る。

 俺のメッセージに気づいたかはわからないが、三人は目の前の敵に集中してくれた。


 オークリーダーの背後に着地する。同時に、背中を思い切り斬る。

 火だるまになって弱っていたオークリーダーは一瞬で絶命した。

 これで後六匹。


 挟み込むように突撃してくるオークリーダー。

 俺は片一方の首を剣で跳ね飛ばす。その死体を剣で持ち上げ、もう一方に投げる。

 仲良くオークリーダーは燃え上がり、絶命。


 これであと四匹。

 効率のためとはいえ、死体を使うというのは気分が良いものではないな……魔物とはいえ。

 オークリーダーとの戦いでは、ほとんど剣しか使っていない。

 オークキングの戦力がわからない状態では、魔力を無駄に使うのは控えないといけない。俺の魔力は桁外れに多いことが魔法学院入学試験でわかっているが、それでも念には念を入れたほうが良い。

 実戦では慢心した者から死ぬ。LLOでもそうだった。レベルカンストしたプレイヤーであっても、あえて弱い装備で低レベルダンジョンに潜ったら思わぬアクシデントで死んでしまったという話はよくある。


 ゲームでは死んでもデスペナルティで経験値が減るくらいだから笑い話で済んだが、これは現実なんだ。いつでも本気で戦うべきだ。


「グ…グオォ……」


 燃焼を始めてから、既に二十秒は経っている。

 オークリーダーは体力が多いとはいえ、一度俺の【火球】を受けている。ジリジリと体力が底を尽き始めている。


 俺はバックスステップで背後に移動し、オークリーダーとの距離を取る。

 絶望しきった表情は、人間の俺にも確認できた。


 襲い掛かってくるオークリーダーの動きは遅い。

 当たり前だ。本物の魔物は体力が少なくなれば弱る。弱れば同じ速度・攻撃力は出せなくなる。現実とはこういうものだ。


 俺は弱ったオークリーダーの攻撃を避け、今度は前にジャンプする。

 もう、俺からの攻撃は必要ない。

 オークリーダーたちは呻き声が上げ、恨めしそうに俺を睨む。

 二分が経過した頃、残りの四匹は立ち上がれなくなった。辛うじて息は残っているようだが、もう時間の問題だろう。


 せめてもの情けだ。


「お前たちは頑張ったよ。敵とはいえ、その忠誠心は見事なものだった。生まれ変わりがあるのだとしたら……今度は人間に転生できるといいな」


 グサッ。


 順番にトドメの一撃を刺していく。

 リスク回避のために一体残らず処理するのは常識だが、早く楽にしてやりたいという思いもあった。


 全てのオークリーダーの処理が終わる。

 オークキングを見る。

 奴は笑っていた。


「ク……クハハハハッ! 貴様人間のくせに強いではないか!」


「お前……喋れるのか」


 驚いた。LLOではたとえレイドボスでも言葉を話すことはできなかったのだ。……ゲームと現実は違う。それを知ってもなお、姿を知ってると違和感を覚えてしまう。


「貴様のその力、上手く使えばいくらでも金を稼げるだろう。名声さえ諦めれば富、女、あらゆる欲望を叶えることができる」


「……何が言いたい?」


「ふっ……つまり我が言いたいのはだな、貴様、我の部下にならんか?」


「部下だと?」


「そうだ。人間どものためにその力を振るったところで何になる? 多少の金と名声にしかならないではないか。我と組み、人間を襲えば……その方が貴様のためになると言っているのだ」


 オークは多少人間より知能が高い。オークたちの王、オークキングともなれば人間を理解し、人間をたぶらかす程度のこともできるということか。


 俺は嗤った。


「その提案、本気か?」


「ああ、本気だ」

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