表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/93

第7話:最強賢者はオークと戦う

 【空間転移(ゲート)】でレムに教えてもらった位置に移動する。

 直線で700メートル、地下10メートルの位置だ。

 出口を手探りで確認する。どうやら壁ではないようだ。


「ついてこい」


 俺、リーナ、エリス、レムの順番で洞窟の中に侵入する。

 出てきた場所は広間の中心だった。

 松明のおかげで中はそれなりに明るいので、魔法で照らす必要はない。換気用の穴を開けているのか、酸素も十分にあるようだ。


 周囲には俺たちを囲むように大量のオーク。最奥には黒髪の女の子が縄で貼り付けにされていた。

 知能の高いオークは縄を使うことくらいはできる。使った縄は人間の遺失物を拾ったのだろう。


「オ、オークが!?」


「落ち着け、レム。最奥には大量のオークがいることくらい予想できていただろ」


「で、でもさすがにこの数は……」


「ちなみに、お前はどのくらい戦える?」


「一対一ならオークには負けません……」


「そうか、なら十分だ」


 オークの数はざっと100匹といったところだ。

 大量のオークの戦闘力はさほど問題にならない。問題は奥で偉そうに腰かけている王冠を被ったオーク。LLOではレイドボスとして君臨していたオークの中の王、オークキング。


 そしてこの王がいるということは……明らかに村級ではないということだ。

 オークの巣の規模はそのリーダーの等級による。洞窟から地下空間に巣を広げ、かなりの広範囲を統治しているのは想像できる。


 オークキングは強い。そして、こいつを倒した後の処理も骨が折れそうだ。

 ……ともかく、今は目の前の敵に全力を捧げよう。


「俺は目の前の敵を殲滅する。リーナとエリス、レムは後ろを頼んだ! できるな?」


「数が増えてもオークはオーク、できないはずがないわ」


「リーナがやるのならやらないわけにはいかないわよ」


 リーナとエリスは大丈夫そうだ。

 後ろを任せることができるなら、俺は目の前の敵に集中できる。オークキングが敵でも問題ない。


「オークだからと言って油断はするなよ。……それで、レムは大丈夫か?」


「私はアミを助けたい。そのためにできることがあるならなんだってします」


 大量のオークを目の前にしてレムの声はこわばっていた。

 一抹の不安が残るが、ここで逃げるという選択はありえない。任せるしかない。


「レム、無理はするなよ。危なくなったらとにかく逃げろ。それから助けを呼ぶんだ。いいな?」


「……はい」


 作戦会議は終わりだ。オークどもも攻撃の機会をずっと伺っている。

 どちらかが手を出した瞬間に戦いは始まる。


「よし、始めるぞ」


 俺と三人が一斉に走り始める。俺は前へ、三人は後ろにそれぞれ散っていく。

 一人になった俺がまずやるべきことは、敵の数を減らすことだ。

 俺の火力ならネックになるのはオークキングだけだ。


 大量の【火球(ファイヤーボール)】を前方にばら撒く。

 これだけの数のオークを一匹ずつ狙うのは効率が悪い。100発ほどの【火球】が発射され、次々とオークに被弾していく。避ける者、耐える者もいたが、数は大分減らせた。


 背後がどうなっているのかの確認も怠らない。

 前方のオークが怯んでいる隙に後ろを確認する。


 後方の三人は互いに背を預ける形で襲い掛かってくるオークを処理している。

 俺のもとまでたどり着く前に蹴散らしてくれている。

 これなら大丈夫そうだ。


「キュエエエエエエエエッッッ!」


 前方に残ったオークはキングを合わせてちょうど十匹。

 しかしキング以外の九匹は俺の【火球】を受けて一度耐えた個体だ。俺の【火球】の火力は決して弱くない。ほとんどのオークが一撃で倒れた。


 見た目には区別ができないが、この九匹はオークの上位個体、オークリーダーなのかもしれない。……というか、それ以外に考えられないな。

 オークリーダーは【村級】の長になる。三匹以上のオークリーダーがいれば【都市級】。ここに残っているのは全て上位個体というわけだ。


 背中から剣を抜く。もちろん最初から二刀流だ。ここで慢心して失敗したら洒落にならないからな。

 オークキングはまだ悠長に椅子に座っている。この態度は気に入らないが、チャンスでもある。


「うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 まずは右翼側のオークリーダーに斬りかかる。

 邪魔が入らないよう、【火球】を左翼側に放っておく。


 オークリーダーは俺の剣を避けようとステップで移動する。

 ――だが、そのくらいの動きは読めていた。

 斬りかかる直前で俺は方向転換。別のオークリーダーに斬りかかる。逃げたオークは俺の背後にいる。パンチが飛んでくるのを直感した。


 だから、この至近距離から【火球】を放つ。【火球】は見事にオークリーダーの頭部に着弾して、首から上を吹き飛ばす。


 ――これで二匹の処理が完了。


「おいおい、これで終わりか? 【国級】のオークも大したことが無いな」


 警戒する残ったオークリーダーに剣を向ける。

 すると、オークリーダーが一斉に整列した。三匹と四匹に分かれて真ん中だけ開けている。


 ……もしかしてまとめて特攻すれば俺に勝てると思っているのか?

 それならそれでどうとでもできるのだがな。


 俺が攻めの姿勢をとった瞬間だった。

 オークキングが立ち上がった。オークリーダーの陣形の間を通って、のそのそと歩いてくる。


 やれやれ、ついにお出ましかよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★2020年7月よりこちらも連載中です
神話時代の最強賢者、癒しの勇者に転生する 〜最強の攻撃魔法と最強の回復魔法で世界最強〜』を読む!

小説家になろう 勝手にランキング
ポチッと応援してもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ