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プロローグ:最強賢者は呼び出される

 魔法学院が臨時休校になってから二日。五日後には通常通りの授業が始まる。

 学院生は各々が自由にして良いのだが、俺はどういうわけか学長室に呼び出された。


「失礼します」


「うむ、よく来てくれたな」


 五日後には授業が再開するのだから、その時に呼び出してもよかっただろうに。急ぎの要件かと思えば学長は落ち着いていた。


「もしかして半月同盟に関してなにかわかったのでしょうか?」


「……いや、そっちの方はまだ調査中だ」


 ますますわからない。


「ユーヤ・ドレイク。君を呼び出したのは少し頼みたいことがあったからなんだ。休暇中に呼び出したのは悪かったが……できるだけ早く伝えておこうと思ってな」


「はあ」


「とりあえず掛けてくれたまえ」


 応接用のテーブルセットがある。高級そうな黒い椅子に腰かけると、学院長がコーヒーを運んできた。


「どうも」


 コーヒーを受け取り、砂糖を溶かす。ゆっくりと啜っていると、俺はなんのためにここに来たのかわからなくなっていた。

 ……いや、元よりわかっていなかったのだが。


「さて、君を呼んだ理由なんだが、まず先に話しておかなければならないな。……ユーヤ君、実は王都アリシアには魔法学院がもう一つできることになる」


「……新設されると?」


「そうだ。もう校舎はほとんどできているんだが、残すは教員と生徒の確保になっている」


 確かに俺が入学試験を受けた時も倍率は凄まじいものだった。いくら魔法学院がエリート教育を目的としていると言っても、さすがに選り好みしすぎている。

 ここで学校を増やすという選択は大胆だが合理的だ。


「それは結構なことですが……それでなぜ俺に?」


 俺は既に魔法学院の生徒なのだから、新たに学校を作ることとは何の関係もないはずだ。

 まさか転校しろとは言わないだろう。


「君には教員をやってほしいのだ」


 このおっさん正気か? 俺は生徒だぞ?


「もちろんこの学院を辞めろとは言わん。授業に関しては特別講座という形でそれほど負担にならないようにしよう」


 確かにそれなら生徒と教員を両立できるのかもしれない。しかし不安になってしまうな。


「そんなに教員が足りてないんですか?」


「いや、確保には苦労しているが足りないということはない。頭数が足りないという理由ではなく、ユーヤ君にやってほしいと思っているのだ」


「お言葉ですが、俺は個人の能力としては歳の割に高いと理解していますが、教えるとなると自信がありません」


 勉強ができる人が教えるのも上手いとは限らないのだ。知らないことは教えられないが、俺がプロの教員と同等のレベルに達しているとは到底思えない。


「実際に技術的な指導というのは毎日の積み重ねが大事なのはユーヤ君もわかっているだろう?」


「はい」


「私がユーヤ君に求めているのは、皆の目標になってほしいのだ。はっきり言って教員を含め、この学院で一番の能力を持つのはユーヤ君だろう。そんなユーヤ君を育てた魔法学院の指導なら……と生徒をやる気にさせるための起爆剤になると思っているのだ」


 色々と難しく言っているが、つまるところ学院としてのプライド的に譲れないといったところだろう。

 教員より生徒の方が強いのでは示しがつかない。なら生徒を教員にしてしまえというのは少々乱暴ではあるが、理解はできる。

 しかし、俺が学院の面子のために頑張る理由はない。条件次第では断ったほうが良さそうだ。


「それで……条件なのだが……こんなものでどうだろうか?」


 学院長は一枚の紙を取り出し、俺に見せる。

 そこには俺を教員として買収するためのたくさんのエサが一覧になっていた。


 俺は唾を飲んだ。

 お金、権利、その他もろもろの好条件。

 俺ならゴネるだろうと思ったのか、最初から惜しむようなことはしていなかった。潔いというのもポイントが高い。


「わかりました。その話、受けさせてください」


 俺は即決した。

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