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第34話:最強賢者はつかの間の平穏に退屈する

 月曜日になり、通常通りの授業が始まる。

 俺は朝食を魔法学院の食堂で済ませると、教室に向かう。朝の朝礼を済ませると、授業が始まった。今日の午前の授業は魔法理論に関するものである。


「さすがユーヤ君ですね!」


 レジーナ先生はどういうわけか俺を指名し、教科書に書かれた応用問題を解かせたのだった。

 俺としては何が難しいのかよくわからないが、とりあえず先生としては満足らしい。

 異常なくらいの褒めちぎり方で、目立ちたくない俺としては朝からテンションが下がってしまう事態となっていた。


 学校の授業で大活躍という事態を羨ましく思う者もいるかもしれないが、実際に自分がそうなってしまうと別段愉快なものでもない。

 大学生が小学生に混じって算数の授業を受けて、解けて当たり前の問題を解いただけで褒められるという状況なのだ。


 なにも嬉しくない。それよりも目立ってしまうことの方が迷惑この上ない。

 黒板にビッシリと書いた理論を背に、俺は座席へと戻る。


 リーナは真剣にノートを取り、エリスはぽかーんと黒板を眺めていた。

 他の生徒も大抵この二種類に分けられる。


「次はリーナさん、先ほど配布した問題の解答について、欠点を答えてください」


 先生の発言にどよめきが起こる。


「これで正解じゃないの!?」


「どこが間違ってるのかわからねえ……」


 というような感じだ。


 リーナはスラスラとまではいかないが、正解を導き出した。

 難問以外は基本的に座席順に指名されて、指名された生徒が問題に答えるという形式だ。

 基本的に順番は守るが、眠そうにしている生徒がいれば順番を飛ばして指名することもある。


 一般的な日本の学校と同様の形式である。まあそもそも、LLOは日本人の開発チームが作ったゲームなのだからその世界観が日本と似ていても何ら不思議はない。


 不思議はないが……退屈だな。

 平和であることに不満はない。だが、全て理解できている授業を受けるというのは無意味なことに感じられた。

 学校という集団に入ったこと自体は良かったと思っている。そのおかげでリーナやエリスという友人に出会うことも出来た。土日は前世と今世で一番充実していたように思う。


 そんな俺の憂鬱は、突然幕を下すことになる。


 いつもの校内放送はピンポンパンポンというメロディが流れてから話が始まる。

 教員や生徒の呼び出しが多くを占める。だが、今日のは違った。

 メロディはなく、焦ったように早口で教員が話し始める。


《校庭に侵入者を確認。全校生徒は避難を開始してください。繰り返します。校庭に侵入者を確認。全校生徒は避難を開始してください。教員は生徒を安全に避難できるよう誘導した後、校庭にお集まりください。ただいま戦闘可能な教員は直ちに校庭にお集まりください。……これは訓練ではありません。……繰り返します……》


 侵入者……だと?

 俺は窓際の席である。ちょうど校庭が見える位置なので、窓の外を覗いてみる。

 武装した数人の男たちが魔法を放ちながら学院中央に向かって進撃していたのだった。


 侵入者は男たちだけではない。数多の魔物までもが侵入していた。

 ダンジョンから魔物が溢れることはない。

 それに、ダンジョンから出てきたというより、ダンジョンに向かっている。

 ……どういうことだ? わからない。

 わからない……が、放っておけることのようには思えなかった。実際に避難指示も出ている。


「み、みなさん! お、落ち着いてくださいっ! し、指示に従って避難すれば……きっと……多分……おそらく大丈夫のはずです! 避難を開始するので二列に並んでくださいっ!」


 レジーナ先生は震え声で指示を出した。

 いやいや、落ち着いてくださいって言われても先生が一番落ち着いていない気がするのだが……。


「ユーヤ君も早く並んでください!」


 レジーナ先生が早口でまくし立てる。


「悪いが、他の生徒を連れてさっさと避難してくれ。俺は校庭に向かう」


「ユーヤ君!」


 俺は窓を全開にして、窓枠に乗る。


「避難場所が安全だという保障はありませんからね」


 ここは校舎の二階に位置するので、飛び降りてもきちんと着地すれば怪我の心配はない。

 俺はレジーナ先生の指示を無視して、窓から飛び降りた。

 着地には成功した。このくらいは鍛えていれば誰にでもできる。


「ユーヤだけに行かせられないわ!」


「……決闘する前に死なれても困る」


 背後からの声は紛れもなくリーナとエリスだった。

 俺はやれやれと後ろを振り向いた。


「お前ら……危ないから避難してくれよ」


 ……と言っても聞く耳をもたないんだろうな。

 俺だってレジーナ先生の指示を無視したのだからよくわかる。


「仕方ないな。……じゃあ、魔物を倒しつつ侵入者を相手にする。侵入者の力量が分からない間は俺が相手をする。それでいいな?」


「ええ、それでいいわ」


「異論はないわ」


 俺は【トグル】オンに設定。

 背中から剣を二本抜き、完全に戦闘態勢に入る。


 ここから校庭までは200メートルほどだ。

 俺たちは全力ダッシュで侵入者と、魔物に向かっていった。

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