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第29話:最強賢者は会員を集める

 昼休みは屋上で弁当を食べていたので気にならなかったのだが、放課後になってまたストレス要因がやってきた。


「水泳部に入りませんか!?」


「魔法射的部にぜひ!」


「美術部にきてください!」


 ……昨日、一昨日より完全に増えている。

 これはあれだ。昨日の陸上競技部で暴れたのが原因なんだろうな。


「すみません! 今はちょっと先生からの呼び出しで立て込んでまして……また後で!」


 俺は勧誘を振り切り、魔法演習室へと向かった。

 先生から呼び出しを受けていたというのは嘘ではない。アイン先生に魔法式の基礎を教えるために来てくれないかと頼まれていたのだ。

 俺はそれを快諾していたのだった。人に教えるというのは、自分の中での理解を深めることにも役立つ。


「アイン先生、入ります」


 扉を開け、魔法演習室に入る。


「よく来てくれた……って、何か今日は疲れてないかね?」


「はあ……まあ色々とあるんですよ」


「わしで良ければ相談に乗るんじゃが……」


 アイン先生に相談したところで解決できるのかどうかわからないが、愚痴くらいは聞いてもらってもいいかもしれない。


「実は最近部活動の勧誘が凄くて……日を追うごとに加熱している気がします」


「今の時期はどこも必死じゃからのう。一人でも多く優秀な部員が欲しいんじゃろうな。……ユーヤ君はどこにも入る気がないのかの?」


「入る気がないから困ってるんですよ……」


 もし部活に入ることが決まっているのならなんの憂いもなしに即決でお断りできるのだがな。

 俺は中高大と万年帰宅部で、大学ではサークルにも入らなかった。類は友を呼ぶのか、俺の数少ない友人たちは皆同じような感じだったので、俺のような者はそう少なくないと思っているのだが。


「わしから一つ提案があるのじゃが、聞くかの?」


「え? ……ぜひお願いします」


 思いもよらないことだった。他人に相談することで相手が真剣に聞いてくれて、一緒に解決策を考えてくれるなんて。その答えがまったく無意味な案の可能性もある。けれど、俺は嬉しかった。


「君が部を作れば良い。好きな活動内容を書いて学院に申請すればわしが無理にでも押し通す」


「……なるほど」


 確かに、どこかの部に所属していればそれを理由に断ることができる。


「しかし俺はまともに活動する気なんてないですよ?」


「なに、ユーヤ君がこれからも続けることが一つだけあるじゃろう」


 俺が続けること? スポーツはおろか文科系の部活もする気はないのだが……いや、確かに一つだけあるかもしれない。


「魔法式研究……ですか?」


「そうじゃ。活動内容は今まで通り魔法演習室に来てくれれば良い。顧問にはわしがなろう」


「確かに……それなら今までと変わりなく活動できます。……俺では思いつきませんでした」


「うむ……しかし申請さえできればわしが押し通すのじゃが……部を作るには最低5人……研究会でも3人は会員を集める必要があるのじゃ。兼部でも構わんから集められると良いのじゃが」


 三人と聞いて、俺の脳裏に二人の顔が浮かぶ。


「アイン先生、人数は大丈夫です」


 ☆


 翌日の朝。

 朝のショートホームルーム前の時間にリーナとエリスを集めて俺は魔法式研究会の勧誘を始めた。


「……そういうわけで、二人とも俺がこれから作る魔法式研究会に部員に入ってほしいんだ」


「ユーヤがそこまで言うのなら仕方がないかな! 私も困ってたし、仕方なく入るわ」


 リーナは即決だった。


「エリスはどうする?」


「……その、私はちょっと頭がアレなものでね。勉強とか苦手だしそういうのはちょっと……」


 魔法学院の入学試験は実技試験が重要視される。つまりは多少脳みそがあれでも入れてしまうのだ。しかしそれで学年三位なのだから、よっぽど実技ができたのだろう。


「俺がずっと前から考えていたのは、魔法式の戦闘利用なんだ。魔法具として確立できれば、魔物は脅威ではなくなる。そういう平和な世界を目指したい。――勉強が苦手なら、俺が教えてやる。どうだ?」


「ユーヤが……教えてくれるのか?」


「もちろんだ。顧問のアイン先生も魔法式の研究者だから、聞けばきっと教えてくれる。だから安心してくれ」


「ちょ、ちょっと! ユーヤは私にも教えてくれるんでしょうね!?」


 リーナが慌てた様子で割り込んできた。


「リーナは頭が良いから自習で十分だと思ってたんだが、ちゃんと教えたほうが良いのか?」


「当たり前よ! エリスだけズルいわ! ……じゃなくて魔法式なんて勉強したことないんだからちゃんと教えてくれないとダメ! ゼッタイ!」


「そ、そうか……リーナにもちゃんと教えるよ。俺とアイン先生で」


「エリスはアイン先生で良いけど私にはユーヤが付きなさいよ?」


「え? なんで?」


 リーナは顔を真っ赤にして、


「いいから! わかった!?」


「わ、わかったよ。リーナには俺が教える。エリスもこれでいいか? って……なんで悲しそうな顔するんだよ!?」


 エリスはいじけたように暗くなって机に落書きを始めた。

 『鈍感死ねばいいのに鈍感死ねばいいのに鈍感死ねばいいのに鈍感死ねばいいのに……』

 ひえっ……病んでる。……この子病んでる。

 口には出さないけど多分これで良くないって言いたいんだろう。


「わかった……! アイン先生もまだ理解が不十分なところがあるし……二人の勉強は俺が見るよ」


 これでようやく二人の機嫌を取ることができ、晴れて申請条件をクリアしたのだった。

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