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第20話:最強賢者は迷宮に舞い戻る

 急いで階段を駆け上がると、ちょうど第二陣がダンジョンに入ろうとしているところだった。


「あれ? ユーヤさんたちは先に行っていたんじゃ……」


「状況が変わった。今のダンジョンには絶対に入るな。……まずは先生に報告してくる」


「……え?」


 詳細を聞きたそうにしていた彼らだったが、そんな余裕はない。


「先生、報告があります」


 ☆


「ゴブリンが……それは確かに異常事態ですね……」


 レジーナ先生に状況を報告すると、先生の表情が険しくなる。

 さすがは経験数が違うのか狼狽するようなことはなかった。


「あのダンジョンには教員がいて俺たちを見ているんじゃなかったんですか?」


「確かにその通りですが……入り口で助けられなかったのだとすると、教員たちの身に何かがあったのかもしれません」


 ゴブリンは群れを作る。群れを作ると(テリトリー)が出来上がる。もしかするとそこに運び込まれたのかもしれない。……そうだとすると、Sクラスとはいえ学生にどうこうできるようなものではなくなってくる。

 教員はおそらく不意を突かれたのだろう。いくらなんでも魔法学院の教員がゴブリンを相手にまともに戦って負けるわけがないからな。


「……もしゴブリンに拉致されたのだとしたら、一刻も早い救助が必要です」


「そうですね……今から中央衛兵駐屯地に連絡を取り救援要請を……」


「それで間に合うと本気でお思いですか?」


「……仕方ないじゃないですか。トラブル時のガイドラインにはそう書いてあるんですから」


 レジーナ先生は伏し目がちになって説明する。


「レジーナ先生、あんたはNPCじゃないんだろ? 心を持った人間なんだろ? じゃあなんで助けようと思わないんだ?」


「ゴブリンが群れを形成していた場合、救助する側にもかなりの危険を伴います。最悪、さらに被害者が増えるだけというケースも……だから万全の準備が必要なんです」


「万全の準備をしている間に拉致された連中は死ぬ。……もういい、救助には頼らない」


「ユ、ユーヤ君、何をするつもりなのですか!?」


 今度はかなり狼狽したような口調だった。

 まあ、大体俺が何をしようとしているのかバレちまっているんだろうな。


「あんたには説明しねえよ。説明したらそのガイドラインとかいう紙クズを理由に止めるだろうからな。……訓練は続行だ。ただ、俺以外は入らないようにしておいてくれ。それだけでいい」


「……わかりました」


「ああ、感謝する」


 俺は立ち入り禁止区域の扉を開け、再度ダンジョンへ向かう。

 階段を下りようとした時、背後から話しかけられたことに気づいた。


「なに一人でかっこつけてるのよ。私もついていくわ」


 リーナだった。


「私も、じゃなくて私たちも、だろう?」


 エリスもついてきている。


「お前らなあ……」


「訓練は続行なんでしょう? 班行動くらい守りなさいよね、班長さん」


 まあ確かに、そうなるか。


「……わかった。ついてこい」


 ☆


 【光源創造(クリエイト・ライト)】でダンジョン内を照らし、観察する。

 さっきは余裕がなくてよく見ていなかったので、まずは状況確認だ。

 ダンジョンに入ってすぐの通路は狭い。道幅3メートルと言ったところだ。戦闘をする上では窮屈に感じるだろう。


「壁は第一層なんだよな……」


 俺はダンジョン内の壁を手で触りながら呟く。


「壁でそんなことがわかるの?」


 リーナからの質問だ。


「壁というか魔力の質かな。ダンジョンの壁には魔力が籠っているんだが、第一層の壁は魔力の質が悪くて、量も少ないんだ。……だから脆い。こんな風にな」


 トンと叩くと砂埃が舞う。


「ゴブリンが出てきたからダンジョンの階層が入れ替わった可能性を考えてみたんだが、変化はないみたいだな」


「……やけに詳しそうだけど、ダンジョン経験があるのかしら?」


 エリスの鋭い視線が刺さる。

 LLO時代は何日も徹夜でダンジョンに籠ってレベリングをしたりレアドロップを狙って戦っていたから、ダンジョンに関しては誰よりも詳しい自信がある。……だがまあ、そう説明するわけにもいかないしな。

 俺がこの世界で生きた15年間の経験に即して説明するべきであろう。


「確か去年だったかな。……俺の故郷の町の近くで小さな迷宮(ダンジョン)が出来たんだよ。出来立てのダンジョンはここみたいに安定していないから、魔物が異常発生してダンジョン外に出てしまうという可能性もあった。……まあそんな流れで衛兵と父さんと俺で一つ潰したことがあったんだ」


 俺が説明してやると、二人ともドン引きしていた。


「ダンジョンを潰す……?」


「いくら新しいダンジョンと言っても……人間の発想力を越えているわね」


 リーナ、エリスの感想である。

 あれ……? そんなに変なことなのか?


 そもそもダンジョンを潰そうと発案したのは俺ではなく父さんなのだが……。

 いや、まあ確かに当時も衛兵の人たちが驚いていたが、なにせ田舎だからそういう経験がないだけだと思っていた。

 まさかレアケースだったのか。


「まあこの迷宮は巨大すぎるから潰すまでは出来ないが、教員がもしゴブリンに拉致されているのだとしても奪還くらいはできる……多分。……そんなわけだから、先を急ぐぞ」

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、確かにマニュアル通りなのかもだけど、 担当の教師6人が逃げられもしない状況で なんの準備もしないで助けに行くとかただの 自殺行為なだけだし、二次被害に繋がるだろ。
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