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第15話:最強賢者は合格する

「それより……君、詠唱はどうしたんだ……?」


 試験官に尋ねられた。

 そういえばリーナも気にしてたよな。


「詠唱は省きましたよ。面倒だったんで」


「はぶ……俺の中で魔法が崩れていく気がする……まあいい、もう下がれ」


 俺が『絶対に壊れない的』を壊してしまってから、試験官は唖然としていたが、すぐに替えの的が設置され、試験は続行という形になった。


 リーナは『聖騎士』である。

 ファイター職はメイジ職に比べて使える魔法の数が少なく、規模も小さいはずなのだが、彼女は俺の次くらいに強力かつ正確な一撃を的に与えた。

 リーナはこの派手な美貌に加え、強力な魔法を撃ったことで注目を集めていた。


 俺の存在感が薄くなるなら結構なことである。


「やっと実技試験終わり! あとは筆記試験だけだけど、最後まで気を抜くんじゃないわよ?」


「筆記試験には自信がある。任せておけ」


 ☆


 筆記試験が始まった。

 実技400点、筆記が100点満点の試験である。全ての問題が選択肢から選ぶ形式になっており、期待値的には全て適当に選んでも20点は稼げる計算だ。


 実技が400点とすると420点。8割強の得点率なら確実に合格できるといえるが、俺は手を抜かなかった。

 ……というより、こんな問題が出たことに驚いている。


 問1 職業には大きく分けて二つある。ファイター職と、もう一つは何か。以下の1~5から一つ選んでマークしなさい。


 1.メイジ職

 2.ゴーレム職

 3.ハード職

 4.ルーン職

 5.スライム職


 答えは言うまでもなく1だ。この世界に小学校はないが、そのくらいの歳の子どもでもわかる問題である。


 問 2X+3Y=4 のグラフを以下から選んでマークしなさい。


 なんだこれ……中学生レベルの問題じゃねえか。

 考えるまでもなく答えを選び、マークする。


 これが数学か?

 こんなのでオリジナル魔法が作れるのか?


 ……


 問20 魔方陣の【?】に当てはまる数字を以下から選んでマークしなさい。


 最終問題だ。

 ふむ、やっと数学らしい問題が出てきたな。魔法陣というのは魔法創作において重要な役割を担う。

 この程度の魔方陣が解けないようではお話にならないのだ。


 俺はすらすらと魔方陣を解き、正解の番号をマークする。

 全て解き終わったのだが、まだ10分も経っていない。


 うーむ、しかしみんなまだ解いているみたいだな。魔法学院が頭の良し悪しで合否を決めないのはリーナから聞いていたが、これでは先が思いやられる。


 やれやれ、暇だな。ちょっと解答用紙にイタズラでもしておくか。


 俺は残り時間を解答用紙の隅に落書きすることで潰した。

 ちょこちょこっと魔法式を書き込んでいくだけの作業である。

 これが少し時間がかかるので、丁度いい退屈凌ぎになるのだ。


 なお、注意書きに『解答用紙の枠外に書き込まれたとしても採点対象外となります』の表記があったので、これで減点されることはない。


「試験終了!」


 試験監督からの合図。

 やっと退屈から解放される……。

 

「ああー難しかった!」


「さすが魔法学院の試験だぜ。俺5問しか解けなかったわーつれーわー」


「なっ! 俺なんて3問だぞ。5問ってすげえなおい!」


 受験者は口々に試験の出来を言い合っている。

 えーと、これはアレだよな? 定期試験の後で「ぜんぜんできなかったわー」とか言いながら満点近く取るやつの典型だよな? そうだよな?


 俺は学院にそこはかとない不安を覚えたのだった。


「ユーヤ、試験の出来はどうだった?」


 少し離れた席からリーナが駆けてくる。

 その顔を見るに、結果は良かったようだ。


「簡単すぎて残り時間暇だったぞ」


「私も最終問題以外はなんとか解けたわ。……今年はちょっと難しかったみたいだけど、これなら間違いなく高得点間違いなし! ……って、簡単すぎた!?」


 ぎょっとしたようにこちらを見る他の受験者。


「リーナ、声は小さく、小さく頼む。俺はあまり目立ちたくないんだよ」


「わ、わかったわよ……。あーでも筆記試験でもユーヤには勝てないのね……」


 落ち込むリーナ。うーん、どう声をかければいいのやら。


「リーナ、よく聞け。リーナはよくやっていると思う。凄いと思う。よくやってるが……俺がもっと凄いだけだ」


 俺が真剣な眼差しをもって伝えると、リーナは突然笑い出した。


「……何がおかしいんだよ」


「アハハ……ハハッ……いいえ、馬鹿にしたわけじゃないの。そうね、だったら責任取ってもらわないとね」


 責任……そういえば、リーナが首席を取れなかったら責任を取るなんて約束したな。

 当然約束は守るつもりだ。


「責任を取ってもらうためにも、試験結果を見に行こっか」


「え? 今試験終わったとこだろ?」


「実技試験は都度得点化されているし、筆記試験は終了と同時に採点が完了しているわ。答案回収から10分も経ったし、そろそろ校庭に掲示されているはずよ」


「そんなに速いのか……。まあどうせ結果は変わらないんだし速い方がありがたいけど」


 校庭に着くと、既に大勢の受験者たちが集まっていた。

 受験者たちの顔を見れば合否は一目瞭然。

 合格した奴は幸せそうに歓喜しているし、落ちたやつは悲壮な顔でトボトボと歩いている。


 さて、結果はどうなった?


 首席:ユーヤ・ドレイク【賢者】……特待生

 次席:リーナ・ブライアース【聖騎士】……特待生

 ※今年度は試験において特に秀でた成績を修めた二名を特待生とする。


「嘘……私、次席なのに特待生!?」


「良かったな、リーナ。まあこれで責任の話は……」


「もちろんなかったことにはならないわ」


「え?」


「だって、首席じゃなかったでしょ?」


「それはまあ、そうだけど」


「責任、取ってよね!」


 リーナから溢れる笑顔は、多分この世界のなによりも美しかった。


「へいへい、わかったわかった」


 史上初となるダブル特待生合格。ユーヤとリーナは注目を浴びることになる。

 そして、これが波乱の幕開けだった――。

 

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