いつか空に掲げるは
こんなときが来るとは思っていなかった。
それでも諦めずに進んできた道は、間違いではなかったんだ。
『ピッピッ、ピー』
笛が3回鳴り響き、選手たちは天を仰いだ。
今まさにこの瞬間、90分前にみたトロフィーを掲げる者が決まった瞬間である。
俺たちは芝生の上で天を見上げた。
(本当に成し遂げたんだ!)
あるものは目に大粒の涙を、そしてあるものは言葉にならない叫び声をあげている。
俺も気持ちが高ぶっているのか手を振り上げながら、観客を煽って歓声をあげさせていた。
ここまでの道のりは長かった。
自分たちの事ではない。この国の代表が歩んできた道がという意味でだ。
直前まで調子が悪く、期待されなかった時。その落胆から歓喜に変えた南アフリカ大会。その次のブラジル大会は期待から失望に変えてしまった。
その前だって一喜一憂を繰り返す事しか出来なかった。でも一番になることなんて夢のような事だった。
それが今日、この時、この場所で、夢見たあのトロフィーを掲げる事が出来るのだ。
先人たちはどう思うだろうか。
『よくやった』というよりも『悔しい』という思いが大きいかもしれない。
トロフィーは優勝したメンバーと国の主賓しか触ることが出来ないのだ。この場所にいる俺たちしか、今の俺たちの国には選手でトロフィーを触れるのがいないという事だ。
でもこの瞬間で終わりではなく、この先も続いていくのだ。
どんな国もいつまでも良いときばかりではない。
優勝した国が次の大会では一勝も出来ず敗退した事だってある。強豪国が本大会に出られなかった事もあった。
そんなことにならないように、俺たちは次に繋いでいかなければいけないのだ。
ただ、今はこの時を楽しむとしよう。
先人たちの無念も晴らすかのように、スタジアムを所狭しと駆け回る俺たち。
スタジアムに埋め尽くす観客たちの歓声は未だ止まない。
あらすじの***の伏せ字が無くなるのをいつか夢見て。
今日から日本代表が戦い始めます。
応援をお願いします。