5 めがみさま が あらわれた!
えーっと…状況を整理しよう。
よくわからないけど豚みたいな顔した二足歩行のバケモノを倒したところまでは覚えている。それで…
どうしてこうなった?
遡ること数時間…
何日も探し続けて、ようやくスライムを見つけた。餌付けしようと、薬草を与えた。そうしたら、すぐにスライムは逃げてしまった。やっと見つけたのに…シュウは惚けてしまった。
気を取り直して、スライムを探しなおそうと思ったその時だった。
「あのぅ…」
人の声が聞こえた。振り返ると…
「ジェリーに薬草をくださったのはあなたですか?」
えっと…誰!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
話を聞くと、ジェリーというのはようやく見つけて薬草をやったスライムのことのようだ。その直前まで、冒険者と戦闘していたジェリーは、瀕死になってよろよろと逃げていた。そこにやってきたのが俺だった。その時俺は疲れ果てており、ようやくスライムを見つけたアンドから崩れ落ちそうになっていた。
ジェリーは、またニンゲン!とくたびれそうな体に鞭打って戦闘態勢に移っていたそうだ。その時のその人間の行動が、「薬草を渡す」というものだった。むしろ薬草が必要なのは、自分だというのに。その時の自分の行動を恥じた。そして、疲れ果てたそのままでは礼もできないと、ひとまず住処に戻った。そして、シュウの目の前にいる彼女――この森の主、森林王――に伝え、今の状況が起こった…というか、ジェリーの親族だというスライムたちを引き連れてきているので、冒険者が見かけたらスライムに囲まれている無力な旅人にしか見えないのだけど…彼ら(?)はシュウに感謝を伝えに来ていたのだ。死にかけの状況から救われた、この恩は一生忘れない、いや一生掛けてでも返し続ける、ついていかせてくれ、というのだ。
えーっと…重い。数少ないスライムの生き残りの一部が、全員ついていきたいというのだから。
あれだけ狩られているスライムだ、引き連れて行ったら誰に狙われるかもわからない。彼らは俺に恩を返すというが、街に出てもしもさらわれそうにでもなったら、俺が助けなければならないのだ。救えるかもわからないし、仮に助けられてもまた「恩が」どうこうと言い出すだろう。
「すまん、無理だわ」