逃走
知ってはならない「真実」。伝えてはいけない「情報」。それらが社会に解き放たれない為に、彼らは逃走者を追いかける。
月の光が降り注ぐ平原を、一つの小さな影が走り抜ける。
「追え! 決して逃すな!!」
そして、それを複数の大きな影を追っていた。
大きな影の内の一人、リーダー格の男が鬼の様な形相で言う。
「どんな手段を使っても良いが、怪我はさせるなよ! 大事な大事な商ブヘェッ!」
小さな影、少女が放った物体が鬼の顔面を捉えた。
「アタシにだって簡単な魔法は使えるんだからね! べぇーっだ!」
「クソガキがぁ……!」
少女は後ろ向きに走りながら器用に男を煽る。平原で障害物が無いからこそできる芸当だ。しかし、少女は油断していた。
突然の突風が急に少女の不意をつき奇襲する!!
「きゃあっ!?」
少女はバランスを崩し、転倒し始める。不幸にも後ろ走りが災いし、このままでは地面に後頭部を打ち付けてしまう。大怪我は免れない。
だが、そうなる事はなかった。高身長の男が少女をフワリと優しく受け止めたからだ。同時にガッシリと少女を拘束した。
「お怪我はありませんか!? ありませんね!! それでは帰りましょう!!」
「はーなーせー!!」
実は先程の疾風、この長身の男が起こしたものだ。正確には高速移動の余波である。小さな少女でも魔法が使えるならば、大人も魔法を使えてもおかしくない。そう、風を置き去りにして走る魔法を使えてもおかしくないのである!
鬼顔だった男が、今度は満面の笑みで少女に近づいてくる。
「よーし、良くやった。後はその脱走者を館に連れ帰って、汚れを落として、温かいメシを食わせて、フカフカの寝床に着かせたら一件落着だな!」
「うわぁん。はなせー!!」
必死に暴れる少女。しかし、抵抗も虚しく少女は男達に連れて行かれる。
こうして、脱走劇は幕を下ろした。
なお、前書きは本編と一切関係ありません。