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ペストマスクの男
引き返すなら今です。
「掃除でもしようかな」
何となく部屋が汚れている気がしたので、掃除箱から道具を取り出そうとした。
しかし、掃除箱を開けた瞬間、俺は見てしまった。
漆黒の衣を纏い、ペストマスクを被った長身の男が、中で微動だにせず立っていたのだ。
沈黙が場を支配した。
不意に男は背中を見せ、何やらガサゴソとし始める。次の瞬間、男の手に握られていたのは最新式の小型掃除機だった。
「あ、どうも」
そう言って掃除機を受け取り、俺はそっと掃除箱を閉めた。
次からが本番です。