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82……zwei und achtzig(ツヴァイウントアハツィヒ)……それから〜イベントと報告

 その後、英語版ゲームの発売の日。


 発売イベント会場の舞台にディーデリヒ役の丹生雅臣にゅうまさおみとテオドール役の一条那岐いちじょうなぎは、瓜二つ……だが、那岐のパートナーの方が身長が高い……の女性とそれぞれ手を繋いでいた。

 カシミール役のウェインは瑠可ルカを、ヴィヴィアンは一人の青年にエスコートして貰っていた。

 英語版ゲームは留学経験があり、英語が流暢な二人以外は、別の俳優が声を当てている。


 今回は日本での発売イベントである。


「皆、こんばんは〜! 今日はお喋りが上手く、ヨイショ役のみっちゃんが育休でいないので、一番芸歴のない俺に押し付けられました〜! この分、給料に上乗せして下さいね! 一条那岐でっす!」

「おい、那岐? 普段突っ込まれるまで、黙ったままじゃなかったか?」

「みっちゃんが俺に司会やれって……俺、すっごく緊張してるのに、絶対嫌がらせだよ。な〜にが子育てだ。ミルクの作り方が分からない〜! おむつはどうすれば良い? 娘が泣くんだ〜って、毎日電話がかかってくるんだぞ? 育休無駄に取るなら、俺にくれっての。俺の方が幼なじみの世話してるから、育児得意だっての。それに役に立たない父親はいらないし、仕事行ってこいっつ〜の。絶対、臣さんやガヴェインさんが産休取る方がましだし、ガヴェインさんの方が、品のある腹黒感のないカシミールだぞ」

「だ〜れ〜が、腹黒だ!」


 うさぎの着ぐるみロンパースを着せた子供を抱いて現れたのは、高凪光流たかなぎみつるである。


「どわ〜! 何で来てるの? 子守じゃなかったっけ?」

「子守だよ! 可愛いうちの子連れて、出勤だとも! 可愛いだろう〜? うちの子」

「あぁ、可愛い。みっちゃんに全然似てないから、とっても可愛い」

「何だと〜」

「こら、やめろ」


 雅臣はため息をつく。


 いつまでたっても、弟分達は変わらないものだ。

 一応台本はあるのだが、そこに戻すのも億劫になりつつある。

 それに、通訳もしなければならないのだ。


「ねぇねぇ、おみ。そっちはお任せするから、こっちのメンバーの紹介するね〜?」

「わぁぁ! すみません、すみません! 私がします!」


 雅臣は慌てると、手を繋いでいた瞬がくいくいっと手を引く。

 そして、


「初めまして。私は一条瞬いちじょうまどかと申します。今回のゲームには声を当てていませんが、司会進行の一条那岐さんのサポートとして、初めての仕事をさせて頂きます。とても緊張していますので、失敗や噛んだり、詰まったりするかと思いますが、どうぞ笑って流して頂けたらと思います。では、紹介させて頂きます。まずは司会兼テオドール役の一条那岐さんです。その隣が、今回の英語版ゲーム内容の特別イベントなどを付け加えた、作家の結城睛ゆうきせいさんです。英訳は、一条那岐さんと睛さんが話し合いながら作り上げました。那岐さん、睛さん、自己紹介をお願いします」

「はい! 一条那岐です。前作、日本語版と同じでテオドール役を担当しています。そして、翻訳しました。どうぞよろしくお願いします」

「結城睛と申します。本日、同時に出版される小説版を書かせて頂き、今回のゲームの新しいイベントを、原作者の糺日向ただすひなた先生と話をさせて頂き、幾つか製作致しました。ゲーム自体も英語が苦手な方でも、分かりやすいようになっていますので、どうぞ楽しんで下さいませ」


 二人は頭を下げる。

 そして、瞬が顔を上げると雅臣が微笑み、


「前回と同じ、ディーデリヒ役の丹生雅臣です。今回は特別ルートができ、この世界に入り込むだけでなく、ディーデリヒやカシミール、テオドールなど主要な何人かのキャラと旅に出るイベントもあります。その案内役として、前回は声のなかったカシミールの妹であるアストリット、そして初登場のエルフ族の青年がいます。カシミール役のガヴェイン、アストリット役の瑠可、カサンドラ役のヴィヴィアン、エルフの青年、アロイシャス役のイタル、どうぞ」

「こんにちは、腹黒見た目だけ妖精王子役のガヴェインです。本当に……どれだけ役作りしてもダメ出しされ、一番吹き込みに時間がかかりました。光流みつるって凄いって本気で思いました。普段の役作りの五倍は、精神的にガリガリ削られた作品ですので、どうか心優しく見守って下さい」

「何で凄いんですかぁぁ!」

「だって、幾ら役になりきって声を入れても『ダメ! まだ好青年すぎる! もっと悪どい。見た目は王子、中身全部が腹黒だよ。もう一回!』だもん。尊敬するよ。光流」


ウェインはニコニコ笑う。


「『このカシミールは、ニコニコ笑っているけど、その笑顔の裏でテオドールやディーデリヒを、どうやって利用しちゃおっかな〜。あぁ、母上やアストリットにはバレないようにしなきゃ』って考えてるから。『うちのテオとアスティは可愛いからなぁ……僕以外が虐めたら、そいつは抹殺』とか考えてる危ない人だよ』って。じゃぁ、昔やってた悪役のキャライメージを、あれこれいじって演じたら一発OKだったよ。やりにくい役だった……」

「まぁ、ウェインさんは普通のイケメン温厚王子系似合うもんね。でも、優しいからアストリットやテオドールのお父さんのエルンスト様とか、ヒュルヒテゴット様とか似合うんじゃないのかな?」

「父親役かぁ……そうだよね。光流も子供いるし。あ、そうでした。紹介しますね。この子は、僕の幼なじみのヴィヴィの末っ子のシェリル・マーキュリー。日本名が安部瑠可あべるかです。今回、カシミールの最愛の妹、アストリットの役を演じています。ルカ」


 ウェインが手を引いていた少女は、頭を下げる。


「はい。初めまして。私は安部瑠可です。ルカと呼んで下さい。父が日本人です。俳優としてイギリスを中心に活動しています。今回は初めて声だけのお仕事をさせて戴きました。日本のアニメは父や親戚が見せてくれますが、とてもイラストや映像が美しく、そして声優さんと言う仕事に驚きました。初めて演じさせて頂きましたが、前回はキャラクター設定だけでしたが、今回アストリットは特別イベントがあり、とても楽しかったです。どうぞ、アストリットもよろしくお願いします」


 ニコッと笑う瑠可に、会場中から、


「可愛い〜!」

「ヴィヴィアン・マーキュリーさんの娘さんでしょう? そっくり〜!」


と声が上がる。


「では、カサンドラ役のヴィヴィ」

「初めまして、皆さん。ヴィヴィアン・マーキュリーです。カサンドラ役を演じさせて貰って、本当にとてもとても嬉しかったです。私達はイギリス、ユーロ圏に住んでいますが、今のユーロ圏は、このゲームの時代と違い、変化をしています。色々な国に行っていますが、このゲームの時代は、本来のユーロ圏……深い森の中小さな町に住む人々、移動するのは馬車か馬、徒歩。その時代を再現されています。この素晴らしい作品に関われることを嬉しく思います」


 微笑む。

 そして、横を向く。


「初めまして、僕は安部昶あべいたるです。ヴィヴィ母さんの次男です」


 エェェェ!


優しげで温厚な青年の告白に驚く。


「僕は緑のエルフのアロイシャスを演じています。僕は元々、イギリスの大学で飛び級をして、現在大学院で世界史や言語学を勉強しています。妹のルカに日本語、中国語、台湾語、ハングル、フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語を教えています。今回、こんな素晴らしい作品に、イベントだけですが、参加させて頂けてとても嬉しいです」

「年は幾つですか〜?」


 ファンからの声に、昶は、


「あ、僕の演じるアロイシャスは、エルフ年齢で40歳前ですが、人間年齢は5歳前後です」


真面目な返答に、舞台上でも笑いが起こり、那岐が、


「違う違う、イタルの年だよ」

「あ、そうだったんですか。すみません。僕はもうすぐ20歳です」


顔を赤らめるイタルに、ファンはキャァァと声を上げる。


「可愛い〜!」

「あ、ありがとうございます」


 丁寧に頭を下げるイタルに、キャーキャーと声が上がる。


「うん、みっちゃんファンがイタルのファンになったな」

「まぁ、腹黒で偽物妖精王子より、上品で可愛い本物の妖精王子の方がいいと思う」


 那岐とガヴェインが話し合う。


「な〜ぎ〜! ウェインさん!」


 その声に、光流の腕の中で動いた赤ん坊がぐずりはじめ、


「ふえ、ふえっ……ふにゃぁ、ふにゃぁ、ふぎゃぁぁぁ……」


泣き始める。


「わぁぁ! ごめんなさい! 藤花とうかちゃん!」

「光流。もう裏に下がれ、お腹が空いたか、おむつだろう」

「はーい。ごめんなさい。藤花ちゃん、泣かないで!」


 光流はあやしながら下がる。




 その後は、瞬が台本をめくりながら必死に、色々な今回のイベントの司会をこなしていく。

 いつのまにか準司会になった那岐だけでなく、雅臣や睛がサポートする。


「では最後になりました。本当に、私のつたない司会に着いて来て下さった会場の皆様、本当に感謝致しております、ありがとうございました。キャラクターに声を当てて下さった皆様、ありがとうございます」


 丁寧に頭を下げる。


「そして、えっと……那岐さんと雅臣さんから皆様にご報告があるそうです。では、那岐さん……」


 那岐は睛の手を引き、前に出ると、


「えっと、報告です。俺、一条那岐は、今年6月にこの結城睛さんと結婚します!」

「エェェェ!」


声が響く。


「まだ俺も彼女も若く、まだ自立したと言い難い人間ですが、俺の両親は喜んでくれ、先日、両家の家族の前で結納をし、婚約しました。俺は元々飽きっぽく、努力家である兄や幼なじみたちと違い、何かを集中して学ぶことが苦手な人間でした。でも、父の弟……叔父である雅臣さんや尊敬する先輩方の仕事の様子を見て、近づきたいと思いました。そして、彼女はコツコツと一つ一つをこなして夢を叶えていく、頑張り屋なところと、普段はおっとりしているのに、焦ると失敗するところが可愛いなぁと……」

「惚気なくて良いよ〜。那岐。そう言うところ、お父さん似だね〜」

「ウェイン兄さん! 俺は父さんに似てません!」

「似てる、似てる」


 笑い声が上がる。


「でも、おめでとう!」

「はい、睛ちゃん!」


 ヴィヴィアンが大きな花束を渡す。


「あ、ありがとうございます! あの、またお会いできますか?」

「うふふ……私と、私の夫は那岐の両親と親友だもの。那岐は息子みたいなものよ。家族みたいなものね。これからもよろしくね?」

「ぎゃぁぁぁ! ヴィヴィ姉さん〜! 言っちゃダメ〜!」

「あら? バラしてないの? 貴方のママが日向糺ひなたただす、パパが糺日向だって」

「……じ、実力……幾ら自力で頑張っても、親の七光と言われます……それに、臣兄も叔父……」


 涙目の那岐に、


「あら、主題歌とか劇中歌を、歌ってるじゃない。ヒナタもスゥも音痴だって歌わないわよ」

「一応、歌えないんですよね……うん」

「ふふふ、一つ勝ったわね」

「はい、頑張ります」


ウェインは頭を撫でる。


「で、臣は?」


 雅臣は瞬と手を繋ぎ、那岐の横に並ぶと、


「えと本日4月1日に、私、丹生雅臣は一条瞬さんと入籍致しました。式は落ち着いてからする予定です。これからは二人で頑張ろうと思っています。どうぞよろしくお願いします」

「えっ、エェェェ! もう、入籍したの?」

「えぇ。ここに来る前に。婚約はすでにしていましたので。ちなみに、瞬さんが妊娠したとかと言う事実はありません。そして、瞬さんと、那岐の婚約者の睛さんとは姉妹になります。これからも私達は努力していきますので、どうぞよろしくお願いします」

「どうぞよろしくお願いします」


二人で頭を下げる。

 すると、拍手が広がっていく。


「臣様、那岐くん、おめでとう!」

「瞬ちゃんも睛ちゃんもおめでとう!」


 その言葉に、二組の恋人達は幸せそうに笑ったのだった。

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