表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/98

75……fünf und siebzig(フュンフウントズィープツィヒ)……テディベアに想いを

 雅臣まさおみは、テディベアのところに戻っていた。


 ハンドメイドのテディベアの中、まどかが気にしていたのは、例年置かれたことのない、風遊ふゆ達のハンドメイドのベアだけではなく、シュタイフ社やメリーソートと言った有名メーカーのヴィンテージテディベア。


愛来あきちゃん。このベアは何でここにいるの? 風遊さんや蛍さんのベアじゃないよね?」

「うん。さすが、臣お兄ちゃん。これは、はーくんの大学のお友達のおばあちゃんの集めてたベアで、おばあちゃんが亡くなったから捨てるって。だから慌てておばあちゃんがそのお家に行って、全部買い取ったの。今日はこの五体だけど、明日と明後日で欲しい人に譲る予定」

「じゃぁ、ここにいないベアも一緒に全部買い取りたいんだけど」

「えっ? 全部?」

「あぁ。お金は幾らかなぁ? 足りなかったら銀行から引き出してくるから」


 財布を出そうとする雅臣に、近づいてきた風遊が、


「臣くん。本当にええんかね? 結構珍しい、ビンテージもおるんよ?」

「でも、譲るってことは、同じベアとかもう風遊さん達持ってるってことでしょう? 皆バラバラにするより、まとめて引き取りたいです」

「……うーん。臣くんなら大事にしてくれそうやけん、かまんよ。愛来。ここのミニチュアベアやシュタイフ社のベアとチーキーなどを全部下げてや」

「はーい!」


 愛来は一つ一つ丁寧に箱に収めると段ボールに入れ、風遊がそれを後ろの台に置き、売約済みとメモを貼る。

 風遊は、一つの箱を開け、


「向こうの人は価値が分からんかったみたいで、タダでくれようとしたんよ。でも、後で問題になっても嫌やし、最低限のお金をお渡ししたんよ。シュタイフのこのベアは、タグが白で、文字が黒やろ〜? 昔のベアの限定再販なんよ。濃いネイビーの1909年のベアのレプリカ。多分、当時の販売価格は10万弱やね。今はそんな値段はないと思うけれど、それでも、茶色とかベージュが多いのに、このネイビーは綺麗やろ?」

「はい。瞬ちゃんは、特にそのネイビーの子を気にしていました」

「あら、瞬ちゃんは見る目があるねぇ」

「で、すぐに戻したんですけど、うちの母もテディベア好きでしょう? 少しですが教えて貰ってて、気になったので……」

「私達も普段は自分のテディベアを販売するだけなんよ。でも、今回はどうしても家に置いておけなくて……」


 祖母と孫は顔を見合わせ苦笑する。


「臣くん。瞬ちゃんにあげるんかね?」

「全部一度にあげたりすると逆に重荷になると思うので、他のベアは家に飾ろうかと思います。前に愛来ちゃんに貰ったベアからとても気になってたんです。祐也さんみたいに自分で作るのは難しいと思いますけど」

「あら、器用そうやと思うんやけど?」

「あの。お幾らになるんでしょう?」

「えぇと、確か、売って貰ったんが50万円ね。でも、そのうちの半分を私と蛍と愛来が、選んだんよ。だから20万円くらいやねぇ」


 雅臣は財布を出し、札を手渡す。


「じゃぁ、これを。一応領収書を頂けますか?」

「えぇと……臣お兄ちゃん。これ30万円あるよ?」

「包装分込みだよ。素人の俺が包装したら、傷がついたりする可能性もあるから、愛来ちゃんもお願いするね」


 風遊は苦笑する。


 雅臣は、昔から気を使うのがうまい。

 育ての親や、兄姉にちゃんとしつけられたおかげだろう。

 包装道具など、百均やホームセンターにあり、普段からテディベアの包装の為に風遊は準備しているし、包装など慣れたものだ。

 それなのに……。


「臣くんは、変わらんね」

「そうですか?」

「すぅちゃんと日向ひなたくんによう似とる。送料はここから払うけんね」


 孫からお金を受け取ると、金庫に仕舞い込んだ。




 そして、瞬の元に戻ると、


「あ、臣さん、臣さん! お帰りなさい」

「ただいま。はい、瞬ちゃん、せいちゃん。あいちゃんの分も」


雅臣が差し出したのは、柄は違うがお揃いの2way肩掛けバッグ。

 戻る途中で見つけた、ハンドメイドの大きながま口を使った可愛い柄の物である。


「ほら、瞬ちゃんとせいちゃんのテディベアを入れられるよ。そんなに重くないし、瞬ちゃんのは俺が持つから」

「うわぁ! 可愛い! まーちゃん。どの柄がいい?」

「えっと、『不思議の国のアリス』っぽいのと原作の『くまのプーさん』柄と、あぁ! せいちゃんの好きな『Elements』だね」

「うん。私は『Elements』がいいなぁ。まーちゃんは?」

「えへへ……『不思議の国のアリス』可愛い」


 睛の珍しい希望と、可愛い柄を選ぶ瞬に、雅臣は微笑む。


「じゃぁ、はい」

「ありがとうございます!」

「瞬ちゃんは、ベアを入れておく? 那岐。この後、うどんと飲み物飲もうか?」

「そうやね。臣兄。せいちゃんも行こうか」


 睛は瞳のバッグを一緒に肩にかけ、那岐と手を繋いで歩いて行ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ