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69……neun und sechzig(ノインウントゼヒツィヒ)……可愛いあの子

 まどかが目を覚ますと、父が穏やかな顔で自分と横に眠る祐也を見つめていた。


「起きた? 瞬」

「う、うん!」

「祐也……祐也おじさんは、ちょっとめまいがひどいからって、薬飲んで眠ったところだよ。瞬も、もう少し横になってなさい。お前は誰に似たのかちょこまかと動き回って……」


 上の二人も可愛いが、6歳違いの末娘を可愛がっていた紀良きらである。


「お父さん。祐也おじさんとお話しできたの?」

「少しだけね。祐也は調子が悪いから……あのね、やっぱり詳しく話したら、祐也は父さんの5つ違いの弟だったよ。祐也は実のお母さんのお兄さんの家でお兄さんの一平さんと、妹のくれないさんとひめさんと育ったんだって。そして、本当のお母さんの家に祐次くんと葵衣あおいさんって言う妹さんがいるそうだよ。それに今回一緒に来た、一平さんの息子のいたるくんも、実はお父さんと祐也の異母弟に当たるんだって……」


 暗い顔になった父に、


「昶さんはとっても賢いし、優しい人だよ? お父さん」

「それは祐也にも聞いたよ。それに、娘より年下の弟っていうのも驚いたけど、気にしない。それより腹立たしいのは、祐也やそのお母さんををあんな目に遭わせておきながら、よく再婚したものだ。それに、DVがあったらしくて、離婚してすぐお母さんが亡くなって、祖父母に育てられたのだけれど、ご高齢の二人は家を手放して老人福祉施設に、昶くんは留学先で奨学金だけではやっていけないとバイトをしていたそうだ」

「バイト……」

「そう。通訳や、手紙や本を日本語から英語などに訳す。で、ある時に一平さんの末娘のミシェルちゃんの通訳兼、英語を日本語を含めた数カ国語に訳すことになって、昶くんの身の上を聞いた一平さん達家族が、お金がかかる下宿を引き払い家に住むように勧め、昶くんの保護者である祖父母や叔父叔母達に挨拶に行き、養子として引き取りたいと言ったらしいよ」

「昶さんはとっても、今のご両親やご兄妹大好きだって言ってました」


 慰めるように言った娘に、紀良は微笑む。


「うん。そう言っていた。祐也も、一平さんはおおらかだけど、優しい自慢の兄だと」

「お父さんも、一杯家族増えたね。私もおじさんやおばさんやお姉ちゃん達が一杯で嬉しい」


 笑うと、すっと障子が引かれ、顔を覗かせたのは、お目目がくりくりの5歳くらいの男の子。


「パパ?」

「こら〜、一登かずと。パパは寝てるだろ」


 一登を抱き上げ入ってきたのは那岐なぎ


「瞬ちゃん。ばあちゃんや風遊ふゆさん達がご飯どうって。一登はパパのところに来たんだよな」

「うん! えへへ。一登、パパ大好き!」


 大きな瞳はなぜか緑で髪は金に近い茶色。

 しかし顔立ちは祐也にそっくりの一登は、父親が本当に大好きらしく寝ている祐也に抱きつこうとするので、那岐は、


「こら。一登。パパは寝てるから起こしちゃダメ。パパの側にいるおじさんと、お姉ちゃんにこんにちはは?」

「んーと、こんにちは! 安部一登です。4歳です。よろしくお願いします」

「お利口だね! おじさんは結城紀良ゆうききら。紀良が名前だよ? そして、この子がおじさんの末娘の瞬。15歳。よろしくね?」

「紀良おじさんと瞬ちゃんだね。嬉しい。」


那岐の腕からよじよじと紀良の膝に座り、父を見る。


「パパ……大丈夫かなぁ……パパ元気になりますように」

「一登くんは優しいね」


 紀良は一登の頭を撫でる。


「祐也……お父さんはすぐに良くなるよ。元気になったら遊べると良いね」

「うん! あのね。おじいちゃんやえっと、今日はこれからあいちゃんと遊ぶの。夜はね? 夜はね? お出かけなんだよ」

「こらこら〜それ以上言うな。一登。内緒だってにいちゃん達と約束しただろ?」

「あ、そうだった! 内緒なの〜」


 口を両手で押さえる仕草が可愛く、紀良と瞬は微笑む。

 紀良の甥で、瞬にとって年下の可愛い従兄弟である。

 しぐさや笑顔、喋り方も可愛い。

 癒される。


 すると、ふすまが開き、瓜二つの美少女が顔を見せる。


「あ、紀良お兄さん。瞬ちゃん。ご挨拶が遅くなりました。私が、清水蛍と申します。祐也の妻です。そして長女の愛来あきです。愛来は、なっちゃんのお兄ちゃんのはーくんの奥さんです。どうぞよろしくお願いします」

「愛来です。歳は一応、なっちゃんと二日違いの一学年上です」

「姉ちゃんも愛来もなっちゃん言うなよ〜」


 渋い顔をする。


あいちゃんも、なっちゃん呼びするし……」

「あれ? なっちゃん。あの人、せいちゃんじゃないの?」

「愛来〜! 余計なこと言うな!」

「あーだから、せいちゃんと散歩してたんだ」

「あーきー!」


 今度は顔を赤らめ、睨む。


「愛来、今度、お前の嫌いな七味唐辛子送ってやる」

「わーん! なっちゃんやめて〜!」


 幼馴染同士の会話はかなり遠慮がない……その分聞いていると楽しいものだと瞬は思ったのだった。

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