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67……sieben und sechzig(ズィーベンウントゼヒツィヒ)……よく似た親子

 那岐なぎの実家である一条家に荷物を置いた結城家の5人は、


「まーちゃん、どうしたのかな? まだ到着してないのかな?」


と心配するあいに、那岐が首を振り、


「さっき、白いワンボックスがこの道のぼっとったやろ? あれ、醍醐だいごおじさんとこのや。あれに乗っとったはずよ。上のじいちゃんとこで休んどるんやと思う」


指で示す。

 周囲の家の中で、一番大きな家である。


「行ってみる? じいちゃんとばあちゃんがおるで」

「そう言えば那岐くん、喋り方いつもと違うね」


 せいの言葉に、苦笑する。


「これが普通なんよ。仕事の時はイントネーションが違うやろ? それに語尾が伸びるんよ。そうやけん、休暇は自由に過ごすんやけどなぁ、帰ってから標準語に戻すんが難儀なんよ。おかしいかな?」

「ううん。優しい言葉だなぁって……」

「ありがとう。じゃぁ、上がろうか」


 坂をゆっくり登りながら案内する。


「ここは静かやろ? ほうやけん、よう、ここで歌を歌ったり、山におる親父とか兄貴達呼んだりしとったんや」

「今は?」

「出来るけど、母屋が静かやろ? 多分、祐也おじさんやまどかちゃんを、祐次兄ちゃんが診察しとるんやないかな? 長時間移動は、見た目は平気そうでもかなり負担になるけん。休ませないかんのや」

「よく知ってるのね」

「うん、穐斗あきと……おじさん、会ったことないけど、原因不明の病気で何度も病院に行ったらしいし、おじさんの姪である愛来あきも同じ病気で……今は医術の進歩で病気が絞れるようになったけど、町の病院に何回も通うんは辛いもんよ。やけん、祐次兄ちゃんが医者になり、祐次兄ちゃんの奥さんのおじいちゃんは名医で、年齢もあるし言うて、愛来の為に自分が理事長の大病院は他の名医に預けて、ここの下に向こうに診療所作ったんよ」


 睛と瞳、そしてその両親は驚く。


「祐次兄ちゃんが、今主にいる施設はその病院の系列の施設。本当は、この町の診療所の副院長。でも、スポーツトレーナー兼医師として全国飛び回ってる。だけど、ここが一番いいって言ってる」

「でも、収入は大丈夫なのかしら?」


 瞳の現実的な指摘に、那岐は、


「院長は高齢だけど名医なんよ。ここの地域のじいちゃんばあちゃん達は、自分の畑の手入れする以外は近所の人に挨拶くらいや。やけん、うちの父さんやおじさん達が、車で迎えに行って、病院で診察の後、話したりして隣にある食堂でご飯食べて帰る。ここには食事のカロリーをちゃんと計算するスタッフがおらんけど、本院から送られるメールでその日の献立を考える。トレーナーとかもおるけんな。足腰が痛いって言うじいちゃんには自分でできるマッサージとか教えてる。診療所言うても、病院の別棟にデイサービスに入院施設もあるし、若いもんの就職先の一つなんよ」

「こんなしっかりした施設があるなんて……」


三姉妹の祖母の由良ゆらが感心する。


「この下に、道の駅があるやろ〜? あれはこの地域の婦人会が作ったんよ。俺が生まれる前。最初はハンドメイド、お菓子に地域の特産品、そして家にある読まれんなった古い絵本とか、うちの両親の本を寄贈して、俺たちの使わなくなったおもちゃをって、喫茶店も元々この地域から出た人が戻ってきて入って、家族、特に子育てに疲れたお母さんたちが、子供を見ながらぼーっと出来る。怪我をしても近くに診療所があるし、軽い怪我なら消毒してって感じ」「はぁぁ……いいわねぇ」

「それに、そんなには時間はかけられないですが、テディベアや羊毛フェルトの人形とか、フェルトでバッジ、プラスチックの板に絵を書いて、色を塗った後形を切って、オーブントースターで焼いて縮めてキーホルダーとか。そう言うのを作ってますよ。テディベア は少し高いですが、羊毛フェルトとかは安価な材料で作れるので、家族で作ってますね」

「すごい!」


 セメントで固めた細い坂道を登り、そして母屋の扉を開ける。


「ただいま〜。瞬ちゃんの家族と来たんよ」

「あぁ、お帰り。那岐ちゃん」


 微笑むのはお人形のように愛らしい年齢未詳の美少女。


風遊ふゆさん、ただいま〜。あ、こちらが、瞬ちゃんのご両親の紀良きらさんと美稚子みちこさん。おばあちゃんの由良さん。そして、こっちが瞳ちゃん、こっちが睛ちゃん。瞬ちゃんの6歳上の双子のお姉ちゃんやって」

「まぁまぁ、ようこられました。うちは清水風遊と言います。どうぞよろしくお願いします」

「初めまして」


 挨拶をすると、


「皆さんどうぞ。両親も夫もおるけん……あ、瞬ちゃんは、疲れて寝とります。祐次くんが見よるんで、安心して下さいや」


と話している後ろで、


ガシャーン!

ザバー!


「きゃぁぁ!」

「うわーん。ママ、ごめんなさい〜!」

「おじいちゃんごめんなさい〜!」


と凄まじい悲鳴が聞こえ、風遊と那岐がガックリと肩を落とした。


「ママぁ……」

「おばあちゃん……」


 障子が開きひょっこり顔を覗かせるのは、瓜二つの緑がかった茶色の瞳と、金に近い茶色の髪の少女。


「あー、なっちゃん! どうしよう〜」

「何が? 蛍姉ちゃんと愛来」

「転んで、畳がぐしょぐしょ……」

「ママが、やかんひっくり返したの〜」

「あぁぁ? またやったんか」


 慌てて中に入ると、すぐ出てきて、三和土たたきに置いてあるバケツと雑巾を掴みながら、玄関を出て大声で叫ぶ。


「くそ〜兄貴! 母屋に来い!」


 すぐに戻ると、駆け上がり何かをしている。


「なっちゃ〜ん。何かしようか?」

「なっちゃ〜ん。怒っとる?」

「……蛍姉ちゃんと愛来を放置したことを、心底後悔しとる」


 風遊が苦笑して頭を下げ、


「本当にすみません。うちの娘と孫はそそっかしい子達で、多分、お菓子を落として、それに足を取られてやかんをひっくり返したみたいですわ……はぁぁ……本当に、誰に似たんやろ……祐也くんはあんなにしっかりしとるのに……こちらにご案内しますわ、どうぞ」


正面の居間では無く、横の障子を開けると、こちらは庭側を全開にし、昔の蚊取り線香に火をつけ燻らせている。

 風はよく入り涼しい。


 風遊は夏用の座布団を並べ、大きな座卓に、


「どうぞ、座って下さいや。本当は娘達が持ってくるはずだったお菓子、持ってきますわ」

「あ、お構いなく」


 風遊は微笑みながら下がると、入れ替わるように、パタパタと4、5歳の男の子が走ってくる。

 すると、紀良を見て目を輝かせる。


「あ、パパ〜! お帰り!」

「えっ? えっ?」


 焦る紀良に、サッシのところを靴を脱いでよじ登る。

 目はくりくりしていて、顔立ちは整い、祐也や祐次にそっくりな美少年である。


「あれ? パパ違う? おじさん、だあれ? えっとね、えっとね、かずとね、かずとはね……あ、パパがちゃんとご挨拶しなさいって言ってた。えっと……初めまして。ぼ、僕は清水一登しみずかずとです。年は4歳です。よろしくお願いします」


 えへへと照れ笑う幼児に、5人はメロメロになる。


「まぁ……お利口だわ。初めまして。おばあちゃんは結城由良です。よろしくね。このおじさんは紀良おじさん。そして、美稚子おばさんです」

「初めまして。お姉ちゃんはあいちゃんです。こちらはせいちゃん。せいちゃんと双子なの」

「えっと、由良おばあちゃんと、きらおじちゃん、みちこおばちゃんと、あいちゃんとせいちゃん!」


 人見知りの時期のはずだが、全くなく、ぽふーんと紀良に抱きつくとキャハハと笑う。


「那岐〜? どうしたんだ?」


 眼鏡をかけた細身の青年が目の前を通る。


「あ、一登?」

「あ、はーちゃん! かずと、きらおじさんとお姉ちゃん達とお話しなの」

「でも、なんで、ここに? 居間の方が涼しいと思うんだけど」


 すると、玄関からバケツを持って出てきた那岐が、


「あーにーきー! だから、愛来を放置すんなよ! 今、祐也おじさん調子悪いって奥で寝てるのに! 蛍姉ちゃんと愛来のせいで居間の中、お菓子が飛び散って、麦茶の海だぞ!兄貴手伝え!」

「え〜と、私苦手なんだけど……」

「やれっての! ほら行くぞ!」


兄を引っ張って奥に入っていく様子を、一家は見守ったのだった。




 すぐに醍醐と風遊がお菓子とお茶を持って来たのだが、会話はとても弾んだのだった。

一登かずとは本当は3歳ですが、今度4歳になるので4歳と言っています。

ヤンチャっ子です。


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