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50……fünfzig(フュンフツィヒ)……宴の幕引きに花火が上がる

 イベントの途中で救急車などが来たが、裏口だったので、ファンはほとんど気がついた人間はいなかった。


 それよりも驚いたのが、最後の挨拶での突然の発表だった。


「キャァァ! 光流みつるくんが結婚? 嘘!」


と言う悲鳴が上がるが、階段から上がってきた着物姿の金髪碧眼の美女に、男性ファンまでも、


「エェェェ? めちゃくちゃ美人じゃん? えっ? モデルかよ?」


と叫び、光流は照れ臭そうに抱き寄せ紹介する。


「一応、おみさんのお兄さんの紹介で知り合った人で、僕の奥さんのあかねちゃんです。どうぞよろしくお願いします」


「だんはんのこと、よろしゅうお頼もうします」


 茜の礼儀正しく優雅な挨拶に、光流ファンの女の子達からも、お祝いの拍手が贈られる。


「それと、あんなぁ? だんはん」


「何? 茜ちゃん」


「あて、この間病院に行ったんどす。ガキ大将の那岐なぎや、身体の弱いあきちゃん程、分からんでっしゃろ? で、未布留みふるおねえはんについて行ってもろたんどす」


「病院? どっか悪いの?」


 青ざめる光流の周りに、未布留の合図を受け集まった声優達が、


「おめでとう! 今年の冬にはお父さんですってよ!」


「光流〜、お前もとうとう親父か〜!」


「臣さんと那岐に、ちゃんと報告しろよ〜!」


と、花束にリボンを投げる。


「えっ……お父さん……って、、エェェェ! 茜ちゃん……」


 瞳を潤ませ、茜に抱きつく。


「ありがとう! 嬉しい! 嬉しいよ! でも……ここで言う? 僕、ボロ泣きなんだけど……」


 泣きながら告げる光流に、茜が、


「臣にいはんが言うたんどす。『結婚式もせずに、いつになったらするのか……茜が、安定期になったらすぐしろ、その前にファンの皆さんに報告しとけ! 光流はそう言うところはルーズだ。茜が報告すればいい』て、言いはって」


「お、臣さん……の方が先に知ってたんだ! ショック!」


「大丈夫どすわ。あてのおとうはん、おかあはんから、イギリスのおばさまのとこまでいきましたえ。ほやさかいに」


『おーい! 光流〜。久しぶり〜!』


バックのスクリーンには、絶世の美貌の紳士が……。


 今度『シャーロック・ホームズ』の相棒ワトスン役をする、親日の俳優ガウェインと、その幼なじみで、こちらはまた別の長編ドラマに主演するヴィヴィアン・マーキュリーが手を振っている。


 振り返って、ドアップを見た光流が、


「二人とも、どこにいるんですか! マイク持ってますけど、イギリスですか?」


と問いかけると、舞台袖から二人と、ヴィヴィの手を握る、瓜二つの小柄な女の子が花束を持って現れる。


「みーくん、あーちゃん、おめでとう」


 青い瞳に真っ直ぐな金髪の美少女は、ニコッと笑う。

 現在注目されている子役、安部シェリル瑠可ルカである。


 シェリルは母にそっくりだが、安部と言う姓だけあり、父が日本人なのだ。

 しかし、ロナウド颯太しょうたとクリスティン梅乃うめのと言う上の二人は、父親似である。


「シェリル、ありがとう! 僕、シェリルみたいな女の子がいいなぁ」


「いや、光流に似たら腹黒、茜に似たらお転婆」


「そうねぇ。でも、茜のお母さんに似ると天然で、お父さんだと穏やかで優しい方よね。そうね、光流にだけは似ないで欲しいわね」


「えぇぇぇ! ウェイン兄さんやヴィヴィさんまで! 酷い!」


「シェリルは、いーちゃんみたいな子がいい〜!」


 はーいはーい!


 流暢な日本語でミシェルは喋る。


「シェリルは、いーちゃんと結婚するの!」


「シェリルはずっとそればっかりだね〜。一平さん、キレてたでしょ? ヴィヴィ」


「それはないわ〜。逆に、『イタルはうちの子。誰にもやらん。親父が跡継ぎがいないから、イタルをこっちに連れてこいって言われたぁぁ! ロナウドとクリスを送る』って言ったら、『お前の分身が増えて、暑苦しい! 私は跡継ぎと言ったんだ。うるさいのを送れと言ったんじゃない。まぁ、お前たち3人はそっちにいろ。ヴィヴィとルカとイタルだけ帰国しろ』だって! って」


 楽しげに笑いながらヴィヴィが言うと、ウェインや周囲の声優陣も笑いが起きる。


「まぁ、私も、試合が重なってる二人を野放しにしておくと家を壊すから、夫を送り返しておいたんだけど……大丈夫かしらね?」


「ヴィヴィのお宝部屋と、ルカとイタルの部屋は死守するよ、絶対」


 きつい気の強いイメージのヴィヴィだが、本当は穏やかで、テディベア収集のオタク。

 自分は手先が器用ではないので作らないが、世界中のテディベアフェスタに出向き、気に入った子を迎えている。


「うふふ。優しい旦那さまなの」

「そうだね〜」


 のろけを受け流す。


「まぁ、今回、僕とヴィヴィ、そしてシェリルが飛び入りしたのは、訳があります。皆さんがこのイベントに来てくださって、こんなに応援とこの舞台で皆さんに楽しんで貰えるように努力されている声優の皆さんにご報告です。このゲームは、実は日本国内だけでなく、世界的にもとても人気があって、英語版で発売されることになりました!」


 その言葉に声優達は唖然とし、そしてファンは顔を見合わせて拍手をする。


「ごめんね! 本当はドイツ語がいいんだろうけど、僕たちそんなにドイツ語が流暢じゃありません。僕の叔母はペラペラなんだけど……それに、アメリカやイギリスにこのゲームのファンが多いんだよ。で、急遽、僕達が、親友の臣やナオ達の世界を学びにきました。ちなみに僕、雅臣まさおみの役できないから、光流の役〜。あははは! 臣やナギは英語ペラペラだからね〜腹黒妖精王子を熱演してみせるよ! 期待しててね!」


「グハァ! ものすごくグサグサきます。ウェインさん……」


「私は、カサンドラの声。未布留の声はとても素敵なのに、私の声でいいのかしら?」


「えぇぇぇ! ヴィヴィアンに私の役をして頂けるなんて! 光栄です!」


 未布留は子役俳優から声優になった存在であり、幼い頃から言うと芸歴がこの中で一番長い。

 下積みが長く、元々幼い頃から芸能界に身をおいていた為ませていて大人びた子だったので、一回子役で売れた後、一気に仕事が減り、又芽が出るまで必死だった。

 その時に、ある映画の吹き替えの仕事を紹介され、もう落ちてもいい、自分らしく頑張ろうと演じたところ、その素直さと強さ、逆に折れそうな脆さを持つ複雑な少女から大人に羽化するヴィヴィアンが演じたグィネヴィアの役にぴったりだと抜擢されたのである。


 それからも、あの頃のことは忘れない。

 あの役を演じられたことで自分の自信につながり、努力をしようと思ったうえに、今の夫である直之に出会った。

 それなのに、今回は逆に自分の役を演じてくれるのだと思うと嬉しい。


「シェリルはアストリットです。アストリットはとても重要な役回りなのです。シェリルはまだ小さいのですが、頑張ってアストリットを演じたいです」


 声優の声がなかった、光流のカシミールや那岐のテオドールの妹に新しく声が吹き込まれることに、ファンは驚く。


 テディベアを抱いたシェリルは、ニコッと笑うと、


「『ねぇ? アナスタージウス。ディーデリヒさまはどこまでいかれたのかしら? 雨が酷くなる前に戻ってきて欲しいわね』」


 と、コロコロと可愛らしい声が響く。


「可愛い妹の声が聞けますので、どうぞよろしくお願いします。臣と那岐は本人役で出ますので、二人のファンは、特に体育会系那岐の想像以上の、男気あふれる声に聞き入っていただけたら幸いです」


「私も、母としてではなく、日々を生きる一人の女性……カサンドラとして、恋を知り、命を大切にして生き抜く強く、でももろくても周囲に支えられながら生きる姿を声で演じたいと思っています。どうぞ、英語版では、声は私たちですが、下に意味を記載して分かってもらえるようになるかと思います。発売日はまだ聞いておりませんが、どうぞよろしくお願いします」


「皆さん、臣お兄ちゃんや那岐ちゃんをどうぞよろしくお願いします」


 可愛らしい少女の言葉に、クスクスと笑い声と、拍手が響いたのだった。

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