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44……vier und vierzig(フィーアウントフィルツィヒ)

 フランス語でキュイーヴルと名付けられたドラゴンの元に向かった、イタルとディーデリヒとカシミール、テオドール、アストリット。

 赤銅色の毛並みの美しい馬の姿である彼は、イタルに気がつくと尻尾を振った。


「キュイーヴル。お疲れ様。今日はいつもの姿で寝ようね」


 イタルは身体を何度もなで、そして小声で囁くと、馬の姿がゆっくりと小さいものの歪な姿のドラゴンに変わっていく。

 リューンのように姿勢を保つことができず、バタッと倒れ込むのを、テオドールが慌てて支える。


「背骨が歪んでいるのと、翼も狭い卵の中で圧迫されている状態で、足の関節も……」

「見せて……」


 テオドールは安定して横たえられず、カシミールが支える形で診察をする。

 しかし、動かす度に痛みに悲鳴を上げるキュイーヴルに、首を振る。


「一応、俺は兄貴が医者の卵で、猟師の免許も持ってて、イノシシとかさばくから、骨格とか勉強するんだけど、ここまで骨が歪む……弱いのは、卵の中でも荒い扱いされていたのかもしれないな」

「卵の中で……?」

「そっ。イタルの兄貴が、このキュイーヴルをいたぶる為にあれこれやった、しか考えられない。例えば、こーやってな」


 卵を握ったようにして、手をブンブンと乱暴に振る。


「……そんな……1日でも早く、この痛みから逃れられるように、どうにか癒して、元気に飛んで欲しいと……思ってたのに……」


 ショックを受け、ボロボロ涙を零すイタルに、テオドールが、


「ラウがいるから、しばらくラウと一緒に過ごさせて癒しと、立って歩くのはきついだろ? だから、俺が作った露天風呂で筋力作って、身体の歪みを治すってことかな。飛べるかは分からないけど」

「露天風呂? テオ兄様?」

「へっへー。俺、結構野生児で、山とか川とかで育ったもんだから、あったかい土地があるって聞いたから、歩き回って掘ったんだ。すぐ出たぞ。結構大きく掘れたから、キュイーヴルも入れるぞ。湯を流してると温度が下がるから温泉の側に小屋も建てた。室内風呂も完備だぜ」


 元々腹黒兄のサポートタイプのテオドールだと言うのに、野生児……ディーデリヒが遠い目をする。


「良いじゃん。だって、母さんだって赤ちゃんの為に身体を清潔にして、身体を温めるんだって喜んでるぞ。キュイーヴルもきっと喜ぶと思うんだ」

「うん、馬鹿弟。よくバカに育った!」

「腹黒よりまし。ついでに、父さんに言いつけんぞ? アホ兄貴」

「誰がアホだ!」


 カシミールが食ってかかる。

 しかし、


「クズじゃないから良いだろ」


といなされ、歯噛みする。


「ムカつく、ムカつく、ムカつく〜!」

「いい加減にしろ! 全く、素に戻るな」


 ディーデリヒの声に、イタルはカシミールとテオドール役の二人は、普段からこんな感じなのかと遠い目になる。

 しかし、大事なキュイーヴルをうまやに置いておくことは難しい……と、一人の落ち着いた少女が姿を見せる。

 カサンドラである。


「あの、ヒュルヒテゴット様がこちらにと。何かありましたか? カゴと布をお持ちしました」

「あ、ありがとう。カサンドラ。あ、紹介するよ。彼はエルフのイタル。そして、ドラゴンのキュイーヴル」


 ディーデリヒの言葉に、


「はじめまして、イタル様。私はカサンドラと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「あ、あの、ぼ、僕はイタルです。初めまして。どうぞよろしくお願いいたします。この子がキュイーヴルです」

「……このドラゴンは優しい子だと思いますが、馬が怯えます。まず、こちらから連れていきましょう」


 毛布で包み、そしてカゴに入れたドラゴンは、テオドールが軽々と抱えて連れて行く。

 そして、カシミールがイタルに、


「ほら行こうよ。連れて行くから。カサンドラも来て」

「畏まりました」


イチャイチャするディーデリヒを見ているのがイタくなったカシミールは、馬やドラゴンに蹴られて本気で死にたくないと、妹にテンションの異常に高いディーデリヒの贄となって貰い、自分たちは安全な場所を確保しようと思ったのだった。

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