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Prolog(ポローグ)……Prologue(プロローグ)

GeschichteゲシヒテSpielシュピール

 ドイツ語で、『歴史ゲーム』である。


 ************


「よっしゃ!」


 まどかは、新しく購入したゲームを手にワクワクと帰っていた。


 瞬は高校生。

 一応まだ15歳である。

 制服は極端にミニと言うのは、自分自身が嫌なので、膝が隠れる程度にしている。

 それに、然程胸もなく、足もある事情で綺麗ではなく、ありがたいのは大食いでも痩せている新陳代謝のいい体である。

 身長は平均身長よりも低い。

 ミニマム……最小値という言葉と、ミニチュアアニマルから、『ミニマル』と呼ばれている。


 ゲーム機本体は持っているが、家に帰ってからしようか、今からしようかと悩んでいた。


「……うーん……待てないもんね。あっちにベンチがあるから、そのベンチでしようかな」


 くふくふ……


 長袖で口元を隠しながらベンチに近づくと座り、真新しい箱を取り出すとゲームの箱の表を見る。

 豪奢な装丁に、数人の少年少女、大人に子供のイラストがありドラゴンなどもいる。

 一応年齢制限があるのだが【R15】、自分は15歳だと何度も店員に言い、学生証まで提示して手に入れたのである。

 嬉しさもひとしおだった。


 そして、箱を開け中身をチェックし、説明書と一冊の本とゲーム本体を確認し、本体を取り出す。

 説明書を軽く流し読みし、箱を丁寧にしまうと初回特典のCDや小説などとともに袋に戻した。

 ゲーム機に装着し、電源を入れると、画面に文字が現れた。


『このゲームは、恋愛にも、そのまま戦い平和に導くこともできる、複雑な選択肢を選びつつ、幾通りものエンディングが選べるゲームです。【Tabletopテーブルトップ roleロール-playingプレイング gameゲーム(TRPG)】の要素を利用しています。箱の中に【Buchブーフ】、4面、6面、8面、10面、12面の【Würfelヴュルフェル】と【Zeichenblattセイヒェンブラッド】があります。この世界の中に地図があり、貴方はそのBuchとゲーム内の指示に従いつつ、貴方の道を切り開いて下さい。』


「ふむふむ……Buch……あぁ、ドイツ語で本か。じゃぁ、一応ドイツ語は簡単な言葉しか知らないけど、日本語であることを祈る!それに、4、6、8、10、12……って、ちょっと待って。見直し、見直し……」


 箱を開けると、ブルーの5種類合計10個のサイコロがあり、


「このWürfelっていうのはサイコロね。大事にしとかないといけないんだ。じゃぁ」


 膝の上に置いていた昔のレリーフのような立派に見える外観に見える、印刷本を持った。

 そして、荷物をまとめ、肩掛けバッグに収めると、ゲーム機を握り、本を開けた。


 ……この時、瞬は忘れていた。

【Zeichenblattセイヒェンブラッド】の存在を。

 そして後に、とても後悔することになるのだった。




『問う。そなたの名前は』

「えっと……シュンでいいよね」


 実は父が、息子が生まれたらしゅんとつけたかったらしいが、生まれたのが女の子で、残念がった父が同じ漢字で呼び方を変えた。

 時々と言うか、ほぼ『まどか』と呼ばれることはないが、父に貰った名前であり気に入っている。


『ではシュン。そなたは戦いを望むか、平穏を望むか?』

「平穏」

『平穏への道は、戦いよりも困難。それでも望むか?』

「望む……と言うか、戦って何になるの」


 瞬は平和主義者である……まぁ一応。

 それに、好きな声優さんが出ているのと、恋愛だけでなく、学校や寄宿舎で勉強したりできると言うネット上での情報で、やってみたいと思ったのである。


『……では、シュン。行くがいい。我が世界へ……』

「えっ……眩しい……!」


 目を閉じた。

 フワッと浮かんだ気がしたが、それはすぐに下に下に落ちて行く。

 怖くてゲームと本を抱きしめ、


「えーと、えーと、ドイツ語で止まれは『Stoppシュトープ』!……って、止まる訳ないかぁ……」


ただいつかは止まるだろうと瞬は呑気なことを考え、怪我しないことだけを祈るのだった。




「姫さま……姫さま」


 声が聞こえ、肩を揺すられる。


「姫さま。起きて下さいまし」


 瞬はゆっくり目を開ける。


「ん?……誰?」

「姫さま? アストリット姫さま?」


 じっと自分を見つめるのは、茶色の瞳の女性。


「誰……?」

「まぁ! 私の名前も忘れたのですか? ベアタでございますよ?」

「ベアタ……?」

「左様でございます。それよりも、どうなさいましたの? そのようなお姿でこのようなところに倒れておられて……! それに、このような短い服などいけませんわ」


 瞬は瞬きをする。


 ベアタという女性は、西洋人の顔立ちで、ウエストはそれほど絞っていないが膨らんだジュップと当時は呼ばれるペチコートに、ガウンを着ている。

 その前に、エプロンのようなタブリエをつけている。

 上級階級の女性らしい。


「このようなものは、処分してしまいましょう」


 瞬の荷物や服装を穢らわしいもののように見つめる姿に、一気に意識を戻す。

 今の状況は分からない。

 でも……。


「待って! 捨てないで!」

「姫さま!」

「着替えはするわ! でも、一つでも捨てたら、許さない!」


瞬は告げる。


「着替えをさせて頂戴。ベアタ」

「解りましたわ。姫さま。では、お部屋に参りましょう」


 起き上がり、ベアタに案内されついて行くのだった。

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