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契約内容はしっかり確認しよう

 マズルジアナ大洞穴。その最深部に眠る精霊王ハルティナはかつて世界が混迷を極めた頃、一人の青年に力を与え勇者としたという。世界は勇者によって平定され、それと共にハルティナは深い眠りについたという。

 勇者に憧れる青年、キリク=ダレンシュは力を求めてマズルジアナ大洞穴を訪れていた。キリクは先日、ブロルスバーン国の色情狂国王に幼馴染のプレシアをさらわれてしまった。プレシアを取り返すためにも力が必要なので、ハルティナに会いにきたのだが……。



「あなたがハルティナか!」

 大洞穴の最深部。そこに置かれていた石碑からは荘厳なる息吹を感じる。俺はそこにハルティナがいるに違いないと思い、呼びかけてみた。

 数秒後、微かに音が聞こえてきた。これは……声だ。

「――うるさいなあ。せっかく気持ちよく寝ていたのに、私を誰だと思っているの」

 姿は見えないがこの感じ、やはり人ならざるものがそこにいる。

「もう一度聞く。あなたがハルティナか」

「そうだけど……あんたはだ……れ……!?」

 おそらくハルティナは俺の顔を見ている。姿が見えないので本当にそうしているかはわからないが。

 何かに驚いている……? 一体何が――。

「あなた……キリク!? どうしてキリクがここに? あなたは死んだはずじゃ……」

「よくわからないが……あなたは俺を知っているのか? それと見ての通り、俺は死んじゃあいないが」

 俺がそう言うと石碑の前に光が集まり、何かを形成し始めた。しばらくすると、そこにいたのは……巫女服を着た女性だった。

「キリクゥー!!」

 目の前の女は叫びながら俺に抱きついてきた。すごい勢いで。

「おわっ!」

 反射的に女を受け止めた俺はよろけつつも転ばないようギリギリで踏みとどまった。

「なんで、どうしてキリクが――」

「ま、待った! 取り敢えず落ち着いて!」

 俺がそう言うと女は深呼吸してから俺から離れ、ようやく落ち着いた。

「うん、わかってる。彼がここにいるはずはない。彼は確かに私が看取ったから。……あなたの名前を教えてくれる?」

「キリク。キリク=ダレンシュ」

「……驚いた。名前まで一緒だなんて。これは運命ね」

「それで、あなたがハルティナか?」

「そう、私は精霊王ハルティナ。あなたは何をしにこんなところまでやって来たの?」

「力を貸してもらいに。実は俺の幼馴染が拐われてしまったんだ。助けようにも、俺には力がない」

「それで、かつての勇者と同じようにここを訪れたと。いいわ、あげる」

「……こう言っちゃあなんだが、結構あっさりくれるんだな」

「それが私の役目だし、それに……」

「それに……?」

「あなたには運命を感じる。勇者と顔も声も名前も同じだなんて、これを運命と呼ばずになんと言うの」

 そんな偶然が……。

「それじゃあ、頼む。俺に力をくれ」

「ええ。じゃあ目を瞑って」

 目を? 何をするんだろうと思いながら俺は目を瞑った。

「いくよ……」

 フワリと花の香りが漂う。直後、俺の唇が塞がれた。

 ハルティナが、俺にキスをした。

「んぅ……っはぁ」

 ハルティナが唇を離し、俺に向き直った。

「これでよし。あなたはこの地上で最も強い人間になったわ。ただ一つの枷を除いて」

「これは……一体……。それに枷ってなんのことだ?」

「まあ人によっては枷でもなんでもないかもしれないけども、簡単に言うとね――あなたは今後、日に一度キスをしないと死んでしまう体になったの」

「……え〝」

「大丈夫。私もあなたの旅について行くから。もしもの時は私とキスをすれば解決よ! ぐふふ……」

「え!? なにその笑み! ていうか、こんなの聞いてな――」

「ハイハイ細かいこと気にしない。さっさとここ出て、あなたの幼馴染を救う旅に出なきゃ! さあ行くよ!」

 そんな……。

「メチャクチャだ! あんまりだ! 俺はプレシアのことが――」

「黙って歩く! 大丈夫、キスくらい許してくれるわよ!」

 こうして俺のゴミのような旅が始まった。プレシア……ごめんよ……。

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