カイト、大地に立つ(切実)
「おらーっ!死ねやァアァッ!」
凄まじい形相の男が斬りかかってきました。
あ、今ここでオシッコをチビりながら震えている矮小な存在は僕、カイト=ハインツ十六才です。
何故僕がこんな目に合っているかと言うと、話は昨日まで戻ります。
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「カイト、いよいよお前も十六才だ‥‥‥解っていると思うがここ、バルムンクの街は強者の集う聖地だ」
目の前でこの世界での父親が言ってきました。
あ、この世界って言いましたが別に僕はチート転生した訳でも転位したわけでもありませんよ?
ただ普通に生まれ変わって、前世の記憶が残ってただけです。
しかし、生まれた場所が悪かった。
「バルムンクでは戦いこそが至高、戦いの神【バトル】様にその姿を見せる事が大切だ」
そう、生まれた場所は謎設定が標準規格として定着している街でした。
「成人を迎えた後は! 男も女もひたすらに戦い続けてこそ信仰を示せるのだ!」
これからの僕の人生は最低月に1回、バトルジャンキー達とコロシアムで戦い続ける事が義務化されていたんです、誰か助けて!
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目の前の世紀末的な格好をした、何か薬でもキメていそうな表情の輩がバトルアクスを降り下ろしました。
僕の 鼻先スレスレをバトルアクスの刃が掠めて、地面にめり込みました、オシッコが蛇口を全開にしました。
「よくかわした、小僧」
歴戦の猛者の様な声色で目の前の輩が言ってきます。
僕は動いてません、貴方が外しただけです。
「ならば見せてやる! 我が輩の必殺技を!」
我が輩が筋肉に力を込めて胸をピクピクと躍動させます。
「オアアアアァッ! 喰らえ小僧! 必殺のおぉおっ!」
大きく仰け反り溜めに入る我が輩。
「【ファイナルブレイカー(頭突き)っ!】」
そのまま僕の目の前で頭突きを外して地面にめり込み、動かなくなりました。
「勝者カイト! 次回の対戦は父親の頼みで1週間後になっております!」
コロシアムが歓声に沸き上がりました。
誰か助けて!