瑞希の行動
コツコツと足音が聞こえた。
「和泉……?!」
『お待たせしました。加藤様でございます。』
車掌さんの隣に和泉が立っていた。
「和泉……!」
和泉に抱きつこうとしたら通り抜けてしまった。
『馬鹿だな、瑞希。俺は死んでんだよ。』
「……え?」
『悪かった。俺は戻ることを諦めたんだ。』
「ど、して……………」
『嫌だったんだよ。戻るのが。』
「……え……」
『ずっと死にたかった。』
「ここに来て、満足してるの……?」
『俺はしてる。』
「そんな……和泉……」
『加藤様はもう一度だけチャンスがありますが、どうなさいますか?』
「……和泉、戻ろうよ?」
『……………ごめんな。』
「どうして!?」
『俺はもう生きるつもりないんだ。
俺の体は新しい奴が使ってるんだし、そいつも幸せじゃねーかな?』
「……洸くん……が幸せ……」
『洸くん?』
『私のことです。加藤様。私は16で命を落としずっとここにいます。私の分身を出し、加藤様の体をお借りしました。』
『車掌さんが使ってたのか。どうだった?』
『…不思議な感じでした。久しぶりに生の生きた体に入ったものですから。』
『そっか。』
「和泉戻ろうよ!ね?」
『……逆に瑞希ここに残りなよ。』
「……え?」
『別に俺が戻らなくても瑞希がここにくれば一緒だろ?』
「……。」
『加藤様、上野様そろそろお時間でございます。』
「……だよ。」
『え?』
「……一緒に……………」
周りが光に包まれた。戻る時間らしい。
「……和泉っ……………」
僕は和泉の手を握った。
****
「はっ!!」
僕は飛び起きた。
「和泉!!洸くん!!」
どっちの名前を呼べばいいか分からなくて、どっちの名前も呼んだ。
「……ん…」
和泉?洸くん?の手に1枚の手紙があった。
「上野瑞希くんへ……?僕宛だ。」
『瑞希くんへ
短い間ありがとう。きっと和泉くんは元に戻ってるよ。和泉くんはもう"きさらぎ駅"には行けない。瑞希くんはまだ行けるけどね。入れ替わっていないから。
入れ替わった後、元の体に戻った人はもう2度と行けないんだ。だから安心して。どんなに死にたいって和泉くんが思ってももう行けないから。
ボクは車掌としてこれからも頑張るよ。』
「洸くん……」
もう1枚便箋があった。
『ちなみにボク生きてたら今27です(*^^*)』
「はいいいい!?!」
16に死んで今27ってことは…11年もやってるんだ…
「瑞希……うるせーよ……」
和泉が目を覚ました。
「あっ、和泉!!!!」
僕は和泉に飛びついた。
「え、ちょ、瑞希!?」
すごい勢いで泣いた。
「うわああああん……和泉いいいい……」
和泉は優しく僕の頭を撫でてくれた。
「俺もう"きさらぎ駅"行けねぇからw」
「行かなくていいのぉぉぉ〜…」
「えー…………車掌さんと話してんの楽しかったのに。」
「いーの!もう行かないの!! 」
「┐(´△`)┌ ヘイヘイ」
良かった……和泉……戻ってきてくれて……