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きさらぎ駅  作者: 明樂
6/8

蔭山洸と車掌

「洸くんそれ本当!?」


「はい。この体になったと言っても、自分に合わなきゃこの先辛いわけじゃないですか。」


「う、うん。」


「それで、まず最初の1週間お試し期間というものがあるんです。」


「うん。」


「1週間後入れ替わった時間にもう1度"きさらぎ駅"に行くんです。そこで車掌さんとお話をして、どうするか決めるんです。」


「決める、って?」


「ボクこう見えて何度か色んな人の体に乗り込んでいて……加藤くんで3人目なんですよ。いつもお試しの1週間で嫌になってしまうんです…。」


「そ、なんだ。」


「他に聞きたいことありますか?」


「その、洸くんが借りて、やっぱ無理だなって思って辞めた後の体はどうなるの、?」


「基本的にまた別の方に受け渡しになるんですけど、持ち主がやっぱり戻りたいって思えば戻ることができます。」


「!」


「加藤くんに戻りたいっていう気持ちがあれば、戻ってこれますよ。」


「でも……そうしたら……洸くんが……」


「ボクの事はいいんですよ。乗り移って分かったことは生まれながら使っていた自分の体が一番だな、って。他の人じゃなかなか出来ないんですよ。」


「……そうなんだ。」


「瑞希くん。時間まであと10分。こっち来てください!」

洸くんに腕を引っ張られベッドに来た。


「……え?」


「加藤くんに会いに行きましょう!」


「で、でもなんでベッド……?」


「あの時間に寝なきゃ"きさらぎ駅"には行けないんですよ!」


「……あ、はい……」


「いいですか?ボクの手を離さないで下さいね。」


「うん。」


「じゃあ、瑞希くん向こうで会いましょう。

短い間ありがとうございました。おやすみなさい…」


「おやすみ……洸くん……」

僕は洸くんの手を握り、眠りについた。




****



「にゅっ。」

ハッと目が覚めた。周りは真っ暗だ。

来てしまったんだ。この場所に。


「あれ、洸くん?」

周りを見渡すと洸くんが居なかった。


「洸くん?!え、ちょ、洸くん!!」

僕は駅を走り回った。


「洸くん……もしかして、騙したの……?」


『洸がどうかなさいましたか?』

あの時聞いた嫌な声。車掌の蔭山さんだ。


「和泉はここにいるの!?」


『はい、居ますよ。』


「洸くんは、どうしてここにいないの?!」


『洸……?失礼ですが名字ご存知ですか?』


「え…?蔭山洸って言ってたよ……?」


『失礼致しました。蔭山洸とは私の事です。』


「……え!?」

パチンッと指を鳴らす音がした。


「にゅっ。」

目の前に1人の男の子が現れた。


『洸、お前そっちで何をしようとしてたんだ。』


「ボクはただ普通に暮らすつもりだったよ。」


『上野様だけこちらに連れてきて自分はのうのうと生きようとしているのか。』


「キミなら分かるだろ?ボクらは16歳で生涯を終えたんだ。他の人の体を借りて生きるのくらいいいじゃないか。」

車掌がもう1度指を鳴らすと、目の前の男の子は姿を消した。


「……え……」


『見苦しいものをお見せしてすみません。

あれは私の分身なのです。』


「分身……?」


『私は16で生涯を終え、ずっとここにいます。

私自身ももう少し生きていたくて、分身を出してやったもののダメでした。』


「じゃあ、その姿が洸くん……なの?」


『そうですね。これが蔭山洸の本当の姿です。』


「……そっ、か。」


『すみません。では、加藤様をお呼びいたします。』

車掌はゆっくりと姿を消した。

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