涙
涙ってなんだろう。
涙ってなんなんだろう。
僕は学校が嫌いだ。
僕は家が嫌いだ。
僕は家族が嫌いだ。
『僕はこの世界が嫌いだ』
僕の家は貧乏だった。
母親は僕が小さい頃に亡くなった。
父親は働きもせず、ずっと家でお酒を飲んでいる。
僕の服はボロボロでもう二年ぐらい同じ服を着ている。
お風呂には入れないし、ごはんもまともに食べたのがいつだか覚えていないほどだ。
学校ではもちろんいじめられた。
毎日ばかにされ殴られ罵倒され避けられた。
最初は泣いていた。
でも、最近泣かなくなった。
泣かなくなっただけではない。
嬉しいこと。
悲しいこと。
くやしいこと。
もう何も感じなくなってしまった。
きっと感情を失ってしまったのだろう。
僕はなぜ生きているのかさえも分からなくなってしまった。
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ある日のことだ。
僕のクラスに転校生がやってきた。
まぁ僕には関係のない話だった。
クラスメイトが一人増えようが二人増えようが別に良かった。
“勝手にやっとけ”とそう思う程度だった。
いつも通りいじめっこが僕の方に寄ってきた。
「せっかく、新しいクラスメイトが出来たんだ自己紹介ぐらいしたらどうだぁー。おい!!!」
そんなことして何になるんだ。
めんどくさい。
僕はこのいじめっこの言葉を無視した。
するといじめっこは、
「何、無視してんの。調子に乗ってんじゃねぇよ!!!」
と僕を殴ってきた。
まぁそうなるよな。
と思いながらも何も抵抗せずただただ殴られていた。
ここまではいつもの光景だった。
しかし、今日は一つだけいつもと違っていたことがあった。
「やめろよ。お前。そんな人ボコボコ殴って楽しいのか?」
そう、転校生がいたのだ。
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あれからクラスは大騒ぎだった。
いじめっこと転校生が言い争い、最後には先生が来るほどの事件になっていた。
それからホームルームが行われ、いじめについて話された。
僕はクラスのみんなに謝られた。
ただいじめがなくなるとは思えなかった。
帰り道、僕は転校生と出会った。
「おぉ、大丈夫だったか?」
転校生が話しかけてきてくれた。
「じゃあ、俺と友達になろうぜ。」
転校生は僕にそういってきた。
とも…だち………
友達。僕には一生縁のない言葉だとおもっていた。
友達なんて…
友達…
気づいたら涙がこぼれていた。
別に悲しい訳ではないのに、涙はどんどんどんどん溢れて出した。
なぜ。なぜ涙が溢れてくる。
どうして。どうして涙は止まらない。
別に悲しい訳ではない。
別にくやしい訳ではない。
なのにどうして…
そう考えていると一つの思い出がバァーと思い浮かんできた。
いつの思い出だろう。
母親がいる。ということは、かなり前のものだろう。
母親は手に折り紙の花をもって泣いていた。
“なんで泣いているのだろう。”
たぶん、そのときの僕もそういう気持ちだったと思う。
すると母親が頭を撫でてこういったくれた。
「嬉しいからだよ。」
この言葉を聞いたとたん、なにかが吹っ切れたそういった感じがした。
あのとき、なぜ嬉しいのに泣いているのかよく分からなかったけど……今なら分かる。
こういうことだったんだ。
そうして僕は転校生に向かって大きくうなずいた。
僕は学校が嫌いだ。
僕は家が嫌いだ。
僕は家族が嫌いだ。
『でもこの世界でもう少し生きていたい、そう思った』