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作者: S.シエロ

涙ってなんだろう。

涙ってなんなんだろう。



僕は学校が嫌いだ。

僕は家が嫌いだ。

僕は家族が嫌いだ。


『僕はこの世界が嫌いだ』



僕の家は貧乏だった。

母親は僕が小さい頃に亡くなった。

父親は働きもせず、ずっと家でお酒を飲んでいる。


僕の服はボロボロでもう二年ぐらい同じ服を着ている。

お風呂には入れないし、ごはんもまともに食べたのがいつだか覚えていないほどだ。



学校ではもちろんいじめられた。

毎日ばかにされ殴られ罵倒され避けられた。


最初は泣いていた。


でも、最近泣かなくなった。


泣かなくなっただけではない。


嬉しいこと。

悲しいこと。

くやしいこと。


もう何も感じなくなってしまった。

きっと感情を失ってしまったのだろう。



僕はなぜ生きているのかさえも分からなくなってしまった。



------------------


ある日のことだ。


僕のクラスに転校生がやってきた。


まぁ僕には関係のない話だった。

クラスメイトが一人増えようが二人増えようが別に良かった。


“勝手にやっとけ”とそう思う程度だった。



いつも通りいじめっこが僕の方に寄ってきた。


「せっかく、新しいクラスメイトが出来たんだ自己紹介ぐらいしたらどうだぁー。おい!!!」


そんなことして何になるんだ。

めんどくさい。


僕はこのいじめっこの言葉を無視した。


するといじめっこは、

「何、無視してんの。調子に乗ってんじゃねぇよ!!!」

と僕を殴ってきた。


まぁそうなるよな。

と思いながらも何も抵抗せずただただ殴られていた。


ここまではいつもの光景だった。


しかし、今日は一つだけいつもと違っていたことがあった。


「やめろよ。お前。そんな人ボコボコ殴って楽しいのか?」




そう、転校生がいたのだ。



----------------


あれからクラスは大騒ぎだった。

いじめっこと転校生が言い争い、最後には先生が来るほどの事件になっていた。

それからホームルームが行われ、いじめについて話された。


僕はクラスのみんなに謝られた。



ただいじめがなくなるとは思えなかった。





帰り道、僕は転校生と出会った。


「おぉ、大丈夫だったか?」

転校生が話しかけてきてくれた。





「じゃあ、俺と友達になろうぜ。」

転校生は僕にそういってきた。


とも…だち………


友達。僕には一生縁のない言葉だとおもっていた。


友達なんて…


友達…



気づいたら涙がこぼれていた。


別に悲しい訳ではないのに、涙はどんどんどんどん(あふ)れて出した。


なぜ。なぜ涙が溢れてくる。

どうして。どうして涙は止まらない。


別に悲しい訳ではない。


別にくやしい訳ではない。



なのにどうして…



そう考えていると一つの思い出がバァーと思い浮かんできた。


いつの思い出だろう。

母親がいる。ということは、かなり前のものだろう。

母親は手に折り紙の花をもって泣いていた。


“なんで泣いているのだろう。”


たぶん、そのときの僕もそういう気持ちだったと思う。

すると母親が頭を撫でてこういったくれた。


「嬉しいからだよ。」



この言葉を聞いたとたん、なにかが吹っ切れたそういった感じがした。


あのとき、なぜ嬉しいのに泣いているのかよく分からなかったけど……今なら分かる。



こういうことだったんだ。




そうして僕は転校生に向かって大きくうなずいた。





僕は学校が嫌いだ。

僕は家が嫌いだ。

僕は家族が嫌いだ。


『でもこの世界でもう少し生きていたい、そう思った』

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