GRAET(グレート) タカシ隊 彼女の地にて、潔く戦えりゃいいのに!
ファンタジーではお約束のドラゴン退治です。果たしてFPSスキルで倒せるのか!?
腹立つことに、スペースニンジャコノハと、対魔騎士ユリカゼと3人で、最近ドラゴンが住み着いたと言われるダンジョンに向かうことになった。
突然姿を表せた巨大なドラゴンは複数の町を焼き払い、その大きな紫色の瞳から、パープルアイズドラゴンと呼ばれるようになった。
召還士様であるフララと他二名のお姫様達は、『私達が直接戦う必要は無いし、どんなに離れていても召喚魔法に直ちに影響は無いから』と政治家みたいな事を言って、自分たちはお茶会するから後は宜しくと、冷たく何処かへ行ってしまった。
スペニンのコノハは全くやる気が無く、ユリカゼは鋭い目つきのままで無口だった。二人とも俺の6歩後をついて来る、まるで古いドット絵のRPGゲームのように一列に並び、だらしない足音だけが列をなし前進していた。
コノハは赤白パンツ(国旗)を不思議な雲で隠し、足よりも元気な巨乳は右、左と交互に行進し雲が隠しきれずタイミングがズレて逆に目立っていた。
対するユリカゼはあの大剣を持って行かず、黒く不気味に光る鎧に大きく開いた股間のスリットから黄色と白の縞パンツ(国旗)が丸出しだが、隠そうとしない態度は騎士の鑑だった。潔くそして美しい、のか?・・・・・・。
「タカシ~、ドラゴン退治なんて無理やねんねん、しかもあのパラゴルン洞窟は入るだけでも危険やで、怪我とか病気とか堪忍ニン」
「お前なあ、断ったらフララが何するか分からんだろ。それに本当に俺は死んこの世界に転生したのか?お前たちも死んだのか?」
コノハは俺の質問には答えず、下を向いていた。よほど地球ではろくな死に方をしなかったんだろう。
果てしなく続く茶色の砂利道と、周りは見たことのない緑や青の植物ばかり。どの植物も俺よりも背丈が高く、フレーバーな香りだった。気温も風も春ぐらいで心地よく住むにはいい環境だと思う。
すると空気が変わる。目の前には電話ボックスのような物があり、床には地下への階段があった。
「ダンジョンって言うから、岩とかで出来た入り口を想像してたんだけど、意外とおしゃれなんだな」
「た、確かに!」
いきなりユリカゼが同意するので、ビビッた。コイツはエロゲースキル使うから一体どんな女なんだと、一瞬引いてしまった。
二人とも俺を盾にして後ろから小突いて早く降りろとせかしてくる。なんて奴らだ。綺麗に舗装された階段を降りると、高さと幅が同じ2メートルぐらいの道が続いていた。
中は明るくクリスタルが輝いており、LED電球かってつっこみを入れたくなる。東京駅の地下街のようだった。
二人ともほっとしたのか、いきなり俺の前を歩き出す。
「思ったより綺麗ですね。ここに入った者は帰ってこれないとか、アンデットの巣窟とか言われていたようですが、あの酒場でよく噂されていたのですがね」
「まじかよ」
「そうそう、ダンジョンといったら、緑色の服を着た金髪エルフが鉄板ですよね!」
いきなりコイツはテンションあがってきてるぞ、ユリカゼは本当によく分からんな。
すると右の曲がり角から、うめき声が聞こえてくる・・・・・・。
「まじかよ、どうすんだよこれ」
「進め!タカシ!」
いつの間にか二人とも俺の後ろにいた。こんなんで、ドラゴン退治なんて出来るのか?と思いつつ、進むと緑色のスライムまみれになった、金髪の美少女エルフが倒れているじゃないですか!
「大丈夫か!?今助けてやる!」
緑色のスライムは目があり、しかも人間の目と同じでめっちゃ不気味だった。しかも歯も同じじゃねえか!
とりあえず、ハンドガンを構える。誰でも知っているベレッタだ。エルフには当たらないように、手前の奴の目の間をねらって一発ぶち込むと、ど派手に緑色の血をぶちまけながら散っていった。しかもすげえ悲鳴だ!
「うげええ!口に入った!キタネエ!」
「うっわキモいねんねん、タカシこっちに飛び散らさないでよ!服が汚れるのは堪忍ニン!」
全く二人は戦闘に参加せず、俺に向かってくる、緑色のスライムを片っ端から殺していった。連続キルボーナスがたまっていくるので、これはお買い得だが、いかんせんスライムのくせに血やら歯などが飛び散る。
20体程倒しエルフを助ける事が出来た。服が溶けたようで、布一枚だ。これは事案だ・・・・・・。すると金髪美少女エルフが目を覚ます。
「ありがとうございます。父を探していたら、迷ってダンジョンに入ってしまいました。緑色の人、感謝します」
え?緑色の人?よく見るとスライムの返り血で全身緑色だった。それにタイミングよくエルフのおっさんと家族っぽい人達が押し寄せてきた。
「おお!エルフィーナ!我が娘よ!アナタが救ってくれたのですね!緑の人よ!」
「いやあ。まあ・・・・・・」
それにお母ちゃんらしい人が俺の手をとり、感謝してくる。
「本当にありがとうございます、緑の人、娘の命の恩人です」
「いやあ、それほどでも・・・・・・」
「お礼をさせてください!緑の人」
「すまんが、俺たちはこれからドラゴン退治に行くので、また今度あったらでいいっすよ」
みんな目を丸くして驚いている様子だった。エルフィーナの父が険しい顔をする。
「我々の村はこのダンジョンのパープルアイズドラゴンによって灰にされました。まさかあなた達が退治に!?英雄だ!緑の人よ!」
「まあ、倒してからにしてくれ、先を急ぐので」
とカッコつけて去ろうとすると、バカ忍者と騎士はエルフと一緒にダンジョンを出ようとしていた。
「おまえ等!こっちだ!」
「うえええーーん、やだよ!死にたくないねんねん」
「大丈夫だ、スライム倒しまくってキルストリークが溜まったから、空爆で一撃だよ、もし日本にドラゴンが現れたら、自衛隊だってそうするよ」
しかし対魔騎士ユリカゼは俺を疑いの目で見てくる。
「本当に空爆で倒せるのか?そのスキル、ダンジョンでも使えるのか?」
「え?・・・・・・」
「やっぱり嫌だ!私は帰るニンニン!」
おいおい、やばいぞこれ。攻撃ヘリも使えねえじゃねえか!
お通夜状態でとりあえず進む。戦果無しで帰ったらフララが許す訳がない。それに他のスキルなら大丈夫だろ。バカ忍者には話が通じなさそうなので、今の唯一の話し相手である、ユリカゼにドラゴン退治について話す。
「ドラゴン退治だが、俺のスキルを説明しよう」
するとユリカゼは俺を一瞬ちら見して、めんどくさそうな顔をしていた。するといきなり俺のほっぺたを指で突っつく。ドキッとした。
「スキル発動、CTRL、未読もスキップ」
へ?なんだこれ、俺が喋ろうとした言葉が字幕となるが、高速で文字が流れていく。しかも声が出ない!!!
「このスキルは女性ボイスだけが聞こえ、男の声はすべてスキップされる、オートモードにも出来るんです」
おいおい、ふざけんな。と思っているとあっという間に俺の説明文が終わった。
「すみません、ぜんぜん分かりませんでした。途中の選択肢も飛ばしてしまいました」
「何だよ選択肢って、俺が2択のイベントを発生させていたのかよ!!」
するとコノハがガクブルし始める。
「あ!あれは!?ドラゴンの巣じゃない!?もう本当に堪忍ニン!」
って無視か!するとまじだった。ドラゴンのいびきが聞こえてきた。火炎竜なのか息づかいに合わせて熱風がここまで伝わってくる。その赤く巨大な体は全長100メートル以上はあった。巣は東京ドーム2個分はあり、バトルでは向こう有利だな・・・・・・。
「さあ、気合いを入れろよ、危なくなったらおまえ等下がれよ」
フララから新しい銃を貰っておけばよかったと今になって後悔した。