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もう結婚すんねんからさ

作者: 雨風修羅

風邪を引き、発熱した。

最初は鼻水が止まらず、次に腹を下し続けた。寝てばかりで、アニメも映画も音楽も楽しめない。食事は味覚がおかしくなってよくわからない。はっきり言って最悪だ。

しかし、止まない雨はない。腹は下し続けるも熱は下がる。外に出ていないのが耐えられなかったので、コンビニに行く。

何を食っても下しそうなので、何も買わずにコンビニを出る。家に帰る道、向かいから自転車。男女二人乗りだとわかる。女が横向きに座り、足を投げ出していたからだ。

自転車の二人乗りが法律で禁止されていることなど、私には興味はなかったので、そのまますれ違う。

そこで声が聞こえた。


「もう結婚すんねんからさ」


どういう意味かと考えた。自転車はそのまま行ってしまった。漕いでいた男性が、乗せていた女性にかけたものだ。この男女が結婚するということか? いや、恐らく違う。私の妄想だと違う。この男女は華の金曜の飲み会の帰りで、職場の同僚。自転車で送っているところであろう。男性は結婚間近の女性に、深夜に相手の男以外の男に送ってもらうのはよせ、と忠告していたのだ。

なるほど、それなら納得がゆく。と、同時に、私もその自転車を漕ぐ男性と似たような気持ちになる。不思議なものだ。世界のどこかで風邪で苦しむ私がいれば、世界のどこかで結婚して幸せになる誰かもいるのだ。それが現在の世界のあるべき姿なのだ。私は別にそれでも構わないなぁ、とすら思ってしまう。普段はこれっぽっちも思わぬことを。

どうやら、まだ私は熱に浮かされているようだ。幸せにでもなんにでもなるがいい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すれ違い様の知らない人の会話が気になる事ってありますよね~。 妄想の部分までは良くやりますが「世界のどこかで風邪で苦しむ私がいれば、世界のどこかで結婚して幸せになる誰かもいる」ってとこまで…
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