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影さん

投稿が遅れて申し訳ありません。パソコンの調子が悪くて、投稿出来ませんでした。これからも、少しペースが乱れるかもしれません。早く直しちゃいます。また、あまり長く使えないので影さんのキャラ紹介も書けません。直ったらすぐに書きます。

 作戦決行前夜、身を潜めている建物の一室に俺はいた。影さんが2人っきりで話したいと言ってきたので、空いていた部屋へやって来たのだ。さてと、一体話とは何なのだろうね。


「よし、ここなら周りに誰もいないよ。何を話したいのかな?」


備え付けの魔術具を起動し、部屋に明かりを灯す。影さんが俺の目の前に立った。今日は髪を上でまとめている。何で留めてるのかと思ったら、適当な紐で括っていた。まあ、入っていても不思議じゃないよな、


「自分の正体?・・・最初は影魔だったんだよな、先生の見立てだし間違いないだろ。それで何回か進化して、人っぽくなってから精霊さんに加護をもらった...。その時点で、進化の行き先はもうほとんど絞られていたんだったね。加護をもらったことで、それが確定した。その、確定した進化先のことか」


頷く影さん。でも、人っぽくなって以来影さんは進化していないよな。進化しても分かりづらかったけど・・・さすがに、魔力量的に分かるはずだし。そこんとこ、どうなってるの?


「え、実は進化してたって!?」


マジかよ、魔力が増えてりゃ絶対に気づいたはずなのに...。


「・・・そういや、影さんは魔力を隠すのが上手だったな。隠すんじゃなくて、誤魔化すことも出来たんだね」


直接触れば気がついたかもしれないけど・・・影さんは影だからなぁ。滅多に触る機会がないんだよね。触れればかなり細かく分かるけど、それ以外は人間レベルだもの。


「それで、どんな風に進化したの?風貌も変わってないし・・・本当の魔力を見せてくれる?」


俺がそう言うと、影さんが俺の手を取り自分に胸の中心へ当てる。むう・・・体全体が水風船というかゴム鞠みたいな感じだから、あまりドキドキしない。影さんの反応が、淡白すぎるってのもあるかな。


影さんに触れると、確かに何かに阻害させられている。この魔術で魔力を抑えているのか・・・こりゃ、本来持っている魔力自体を抑制するものだ。その分、使える魔力も少なくなる。俺が知らないうちに進化していた影さんは、ずっと本来の実力を抑えたまま戦ってたのか...。


影さんが、その魔術を解く。その途端、影さんの魔力量が著しく変化した。比べ物にならないほど、強力な魔力・・・倍以上とか、どんだけ抑えてたんやねん...。


「何でこんなのを隠してたの・・・こんな魔力があれば、キマイラとかと戦った時もかなり楽になってただろ。しかも、まだ隠してるし...。いきなり大きな魔力が現れたら、誰かが入ってくる?そりゃそうだろうけどさ...。まあそれはいいとして、見た目に変化はないの?」


頷く影さん。見た目が変わってないから、魔力にも抑えがかかってたのかもな。影さんは、どんな風に人化するんだろうな。


「それじゃ、本当の影さんの姿を見せてくれる?これで、ようやく影さんにも名前をつけられるかも」


影さんの体が波立ち、紫がかった黒い肌がペラリペラリと剥がれていく。中からは、これまた真っ黒な光が差し出でている。どんどん肌が無くなっていき、部屋中を光が満たす。眩しくはないけど、影さんを見ることは出来ない。

そして、光が収まったその場に立っていたのは...。


『・・・ようやく会えたね。まあ、本心としては出来れば会いたくなかったのだけれど』

「・・・酷いなぁ、俺は人化した影さんと会いたかったぞ?」


立っていたのは、この世界に来てから全く見なかった日本人っぽい女性。身長はそこまで高くなく、俺の胸ほどだ。真っ黒な髪をさっきと同じように上でまとめている。

驚きべきはその顔。何というか・・・俺と双子のように瓜二つなのだ。いや、彼女が男顔ってわけじゃないよ。雰囲気というか、顔立ちっていうのかな。そういうのが、まるで鏡合わせのようにそっくりだ。

はっきりとした二重瞼に大きな瞳、まだあどけないが十分女らしい。紺のブレザーに灰色のスカートって、あれ通ってた高校の制服じゃん!・・・可愛いなー、俺。ナルシスじゃないが、惚れ惚れするよ。


『そういうことじゃないよ。私がこの姿になったってことは、そうせざるを得ない状況だってこと。それこそ、何としても負けられない戦闘の時、とか』

「そういや、前にリンが俺にそっくりな女を見たって言ってたな。それも影さんなの?」

『そうだよ。リンが危なかったら、咄嗟にね...。2人とも気絶してくれたから、もう1回偽装出来たよ』

「さながら、ドッペルゲンガーってところかね?でも女だしなー、そっくりだけど」

『そりゃ、私は影だからね。陰陽的に考えたら、陰が女で陽が男でしょ』

「・・・そういうものなの?」

『案外、そういう簡単なことで変わっちゃうものなんだよ。それに正確に言えばドッペルゲンガーじゃないんだよね・・・まあ、女としてのツチオだと思って』

「ふーん、女の俺か・・・なら、ツチノかな」

『ツチノ?』

「うん、ツチノ。新しい名前だよ、人化したんだしいい加減つけないとね。漢字で書いたら、椎乃ってところかな」

『椎乃・・・ツチノかー。うん、いいね。何か、本当に双子の姉弟みたいだし』

「いや、兄妹だろ?」

『いいや、姉弟だね。女のほうが、男より早く大人になるんだから。これは、いくらツチオといえど譲れないよ!』

「まあいいや、俺はそこまで気にしないし。それじゃ本題に入ろうか・・・影さんがその姿になって、他に何が出来るようになったの?魔力が増えた以外にね」

『ちゃんと1つずつ説明していくよ。まず...』






ルウが1歩を踏み出そうとした瞬間、白い閃光と爆煙、土煙が彼女を包む。ニクロムが放った大量のミサイルと、リンが降らせた雷のシャワー。姿が見えなくなるが、煙が晴れるのを待たずライムが中に突っ込んでいく。


「いくぞ、ツチノ!」

『了解、ツチオ!』


俺の手を取った影さん、もといツチノが影の中へと飛び込む。影さんがツチノになって出来るようになったこと、その1。ツチノと一緒に、影と影の間を転移出来るようになった。体が真っ直ぐ落ちていき、一瞬でルウの影から飛び出す。何回か試してみたけど、やっぱり変な感じだな。


目の前には、見慣れたルウの背中が。肩越しに、ライムが突っ込んでくるのが見える。

俺の両手には新作の符、重符で星を描いてから1つの符にまとめたものだ。後ろでは、ツチノが今にも魔術を放とうとしている。ミサイルと雷で動けないはず、倒せなくても多少はダメージを!


腕を振るって投げようとした瞬間、横っ腹に衝撃が走り俺は吹き飛ばされる。壁に叩きつけられるが、構わずツチノは魔術を放った。極太の真っ黒な光線がギュルッと螺旋状に合わさり、巨大なドリルとなってルウに突っ込む。同時に、腕を変質させたライムが切りかかっていく。


ライムの爪とツチノを魔術を、共に片腕で受け止めるルウ。ツチノのドリルは、強化されたルウの鱗と拮抗しているように見えたが、すぐに砕け散ってしまった。ルウの腕からは、炎が噴出している。さすがに、一瞬で放った魔術じゃ通用しねぇな...。

その間に、ライムがルウの体を狙う。鱗がない胴なら、ライムの爪も通るからな。あまり深くすると致命傷になりかねない、傷をつけるのは軽くでいい。

予定通り、ルウの腹に浅い裂傷が数本走る。追撃しようとしたライムだが、斜め下から蹴りが飛び吹き飛ばされてしまった。ツチノも、無理をしないで既に下がっている。


「お父様、大丈夫ですか!?」

「何とか・・・尻尾で殴られただけだしね」

『真後ろに転移したのに...。どうして、気づかれたの?』

「簡単な話だ。俺たちが転移して攻撃するまでの間に、ルウが反応しただけだろ」

『とんでもないね...』

「爪には毒も塗られているのに・・・竜は、毒にも強いんですね」

「さすがルウってところだな。まあでも、俺らはこれで十分。いけリン!」


階段の入り口から飛び出したリン。体中からバチバチと帯電しており、その手に持つ槍からは魔力が溢れかえっている。槍から飛び出た電流が、地面を走って焦がす。


「これで、目を覚ましてよルウさん!」


槍を前に構えたリンが、一気にルウへと突撃。腰だめに炎をまとわせた拳を構えたルウは、きれいな正拳突きを繰出した。


槍と拳が衝突し、炎と雷が鍔競り合う。風は荒れ狂い床はひび割れ、余波が壁に穴を開ける。援護しようにも、近づいたら巻き込まれるし誤射が怖くて魔術も放てない。


拮抗していた魔力が、弾ける。ルウとリンは吹き飛ばされ、広間の壁へと叩きつけられた。出会い頭に全力攻撃作戦、多少はダメージを与えられたけど成功とはいえないか...。


「リン、大丈夫か!?」

「全然平気よ、こんなの!でも、これが1番勝てる可能性が高い作戦だったんでしょ?次の手はあるの?」

「・・・同時に攻撃するしかないか」

「今のところ、それが最良ですね。新兵器のお披露目の時になりそうです」

「あ、作ってたんだ」

「残りの材料も少ないですが・・・出し惜しみを出来る状況でもないでしょう。超特急で製造したので、外見や耐久性に問題がありますが」

「ないよりは全然マシだ。どんな感じの武器?」

「魔力を射出する、ブラスター系の兵器です。ルウのブレス対策に製造したので、それに似た感じになります」


俺が影さんと話していた間に、そんなもんを作ってたのか...。それなら、一応ブレスが放たれても大丈夫なんかね?


「大丈夫ではないです。ルウのブレスと撃ち合った場合、確実にこちらが競り負けると推測されます。棒立ち状態で直撃すればいいのでしょうが、実際にはそんなのこと起こり得ないでしょうし。時間稼ぎ程度に考えてください」

「了解。ルウも魔力を消耗しただろうし、多少は怪我も負っている。多少はやりやすくなっているはずだ。ライムとリンが前衛、俺とツチノとニクロムが後衛だ。いくぞ!」


壁に激突したルウの体勢が整う前に、ライムが斬りかかっていく。腕で防ぎ殴り返してくるが、後ろからリンが槍を構えて突っ込む。

ライムは激しく動き回り、リンは距離を取って槍を振るう。どうやらライムのことは気にしていないようで、ルウの狙いはリンに集中しているな。細かい傷はついているけど・・・あれじゃ、いくらあってもどうしようもないか。

ルウがリンの腕を掴み、地面へと叩きつける。頭を殴り潰そうと腕を振り上げるが、ライムが首を狙ってきたのを見て飛び退いた。


「いくぞ、2人とも離れろ!」

「連装ミサイル、発射します」


茶・銀・青色の星を順に合成、凝縮された真っ青な水弾が手の中に浮き出す。ニクロムの蛇の体の両側からミサイルポッドが飛び出て、ルウへと狙いをつける。


「マスター、大丈夫ですか?それほどの魔力、使ったことなどないでしょう」

「少しは練習したから、3つ4つくらいなら何とかいけるよ。5つは厳しめだけどね」


影さんがツチノになって出来るようになったこと、その2。俺と影さんの魔力が共有化されて、使える魔力の量が大幅に増えた。影で繋がっているからかね。そうは言っても、全てを自由に使えるというわけではないのだ。ツチノから魔力を引き出すのには時間がかかるので、戦闘時に使える代物ではない。使い道は、符を書いたりする時だな。新しい紙で、星を作るのが簡単になったし。発動するだけなら、俺の少ない魔力でも十分。まあ、俺が制御出来る魔力なんて、高が知れてるけどね。ロスも結構多いし。


『こっちもOK、放つよ!』


ルウの頭上から、黒い光が降り注ぐ。そこへニクロムのミサイルが加わり、黒い光を吹き飛ばし爆発を起こした。さらに俺が水弾を投げ入れると、小さな器から解放された水の奔流が炎を巻き込んで床と天井を削る。


俺たちの視界は、茶色い土煙と黒い爆煙と真っ白な水煙に埋め尽くされる。多少は効いてくれてると有難いんだけど...。


「・・・っ!ツチノ!」

『ツチオ、こっち!』


ツチノが手を引いて、俺を影に引っ張り込む。そんな俺の頭の天辺を、何か熱いものがチリッと焼いた。焦げた臭いが、俺の鼻をつく。


俺らはリンの影から飛び出した。見ると、広間の壁が線上に溶けている。あれって・・・ルウの炎か。そうだ、ニクロムは!?


「マスター、無事ですか!?」

「・・・それはこっちの台詞だ!この馬鹿!」

「馬鹿とは酷い言い様ですね。私が警告してなかったら、今頃胴体泣き別れですよ」

「それでお前が怪我してたら、世話ないだろ!」


ニクロムは遠距離戦用に機関銃を装備していたのだが・・・両手とも銃身がなくなっている。その上、胸の上部にも一筋の焦げ跡が。


「手は換装すれば事足ります。胸の怪我も、戦闘には支障ありません」

「くそ、ライムとリンは!?」

「私は問題ないわ、障壁が切られるとは思ってなかったけどね...」

「少しもらってしまいましたが、少し体が減っただけです。ニクロム、良い判断でした」


ライムのわき腹にも、ニクロムにあるのと同じような傷跡が。固まってしまったのか、再生されていない。ルウの両腕には炎の縄が巻かれており、地面に垂れ下がっていた。あれを見るのも、ずいぶんと久しぶりな気がするな...。殴ったほうが早いって言って、普段はあまり使わないんだけどね。魔術と符術は命中したのか、所々に出血や打撲が見える。・・・くそ、無傷じゃ済まないとは覚悟していたけど...。こうやって見ると、やっぱりクるものがある。そんなこと言ってたら、俺らが死ぬだけってのは分かってるんだけど。


「・・・ツチノ、このままじゃ勝てない。やるぞ」

『いいの?』

「いいも何も、やるっきゃないだろ。例えそれでどんな結果になっても、俺は絶対に後悔しないよ」

『・・・はあ、だから嫌だったのに。ツチオ、こういう状況になったら絶対そうするに決まってるし。・・・本当に、いいんだね?』

「ああ、俺らの本領を発揮するぞ」

『まったく・・・でも、それがツチオだものね。分かってるよ、私はツチノだもん!』

「悪いな。皆、少し時間を稼いでくれ。あれをやるから」

「私はまだ戦えるわよ!ツチオが体を張る必要は...!」

「・・・申し訳ありません、お父様。私は、自分が情けないです。お姉様1人も抑えられないなんて...」

「それは最終手段だと、マスターは言いました。私は、まだ戦えます。それこそ、全員が倒れるまで戦うべきかと」

「それじゃ手遅れなんだよ。今までの手合わせで分かったろ、それにまだ皆にはやって欲しいことがあるんだからな」

「・・・了解しました」


このままじゃ絶対に勝てない、ルウを取り返せない。出来ることを何でも、全てやらないと。それこそ、身を削ってもね。



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