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夏休みの予定

投稿が出来ていませんでした、すみません。

『・・・もしもし』

『声だけで失礼しますわね。私、ユクリシスと申す者です。あなたは?』

『ツチオの友人よ。私が先にツチオを誘ったの、あんたは引っ込んでて』

『出来ればそうしたいのですが、こちらにも都合というものがあります。あなたは、毎年夏にツチオに会えるんですのよね?私は今のところ、次の夏にしか会えません。予定がいっぱいいっぱいで、何とか予定を開けられたのですよ。今回は、そちらが引いてもらえませんか?』

『こっちだって暇じゃないのよ。仕事柄土地から動けないし、ツチオが来るのを待つしかないの。そっちの予定なんて知ったこっちゃないわ』

『それは私も同じです。第一、ツチオはずっとこっちに来たいと言っていましたのよ。あなたがツチオの友人なら、彼の事を1番に考えては?』

『それはこっちの台詞よ。私は、ツチオの従魔にあげた物の確認をする必要があるの。一度休みが取れて、二度目が取れないってことはないでしょ』

『取れないから言っているんですのよ。少し特殊な仕事についてましてね、休みなんて滅多に取れないのです。あなた、休みはないですけどツチオと会う時間は取れるのでしょう?私は、休みもないしツチオと会う時間も滅多に取れません。引いてはくれませんか?』

『嫌よ、こっちが先に誘ったんだもの。引く理由がないわ、今回は間が悪かったと思って諦めなさい』

『・・・』

『・・・』


何故か聞こえる精霊さんとユクリシスさんの会話に、俺の顔からダラダラと冷や汗が滴り落ちる。怖い・・・静かに言い争う2人が怖い。何で急に黙ったんですかー!


「あれ、何してるのツチオ君。変な座り方してるね、両脚を折りたたんで痛くないの?」

「それどころじゃないからな...」

「それどころじゃないって・・・どんな状況?」

「・・・修羅場」

「あー・・・ツチオ君、ルウちゃんたち以外までたらし込んでたんだ」

「違うって、夏季休暇の予定が被っちゃったんだよ。どっちに行くか、話し合ってるの」

「そうなんだ。それじゃ、僕はちょっと退散しとくよ。喧嘩にならないようにねー」

「悪いな」


そう言って、リュカは部屋から出て行った。早く終わらせないとな。


『ですから、あなたのいる所にはいつでも行けるのですから、今回は私に譲って欲しいのですって!あなたの方が早く誘ったのも承知の上で頼んでいるんです!』

『そんなん知ったこっちゃないわよ!あんまり五月蝿いと、あんたの国を荒らすわよ!未来永劫、人が住めないような土壌にしてやるわ!』

『そんなことをしてみなさい。我が国が持ちうる限りの力を行使し、あなたの一族郎党皆殺しにしてやりますわ。絶対に逃がしませんわよ』

『やってみなさい、返り討ちにしてあげるわ。何十万人でも連れて来なさい、国ごと滅ぼしてやる』


俺がリュカと話しているうちに、ユクリシスさんと精霊さんは一瞬即発の雰囲気。いつの間にこんなことに・・・帝国と精霊さんの全面戦争とか、やばすぎんだろ!


『ちょ、ちょっと!止めてくださいよ、国を巻き込んで大喧嘩なんて!』

『・・・分かってますわよ。さすがに、そこまで軽率には動きませんわ』

『私も、基本島から出れないしね。無理をすればいけるけど、ツチオのためにそこまで体は張れないわ』

『そっすか、それなら良かったです...』


これでひとまずは安心か・・・マジでびびったぞ。


『私たちが言い争っても仕方ないですわね、ここはツチオに決めてもらいましょう』

『そうね、結局はツチオがどっちに行きたいのかが重要なんだし。さあ、ツチオ!この女と私、どっちを取るの!?』

『その言い方は止めてくださいよ・・・違う意味に捉えちゃいますって』

『ツチオ、あなたが決めなさい』


うーん、どうしようか。先に連絡を入れたのは精霊さんなんだけど・・・今回の機会を逃したら、次はいつ休みを取れるか分からないんだよなー。・・・よし、決めた。


『今回は、ユクリシスさんの方に行くことにします。次、いつ休みが取れるか分かりませんから』

『・・・そう。ツチオはそっちを取るのね』

『すいません!確かに、精霊さんの方が先に誘ってくれましたけど、ユクリシスさんの国に行く機会はあまりないんです。お土産、いっぱい持って行きますから!』

『まあ、ツチオがそう言うなら仕方ないか。期待してるからね、お土産』

『申し訳ないですわ。後から掠め取っちゃったみたいで』

『いいのよ、ツチオが決めたことなんだし。それより、そこまで行ける機会が少ない国ってどこなのよ』

『別の大陸にある国ですのよ。私、そこで国の要職についていますの。前こっちに来た時、ツチオに国を案内すると約束したんです』

『・・・それは、確かに行ける機会がないわね。というか、どうやって行くのよ』

『私の転移魔術で送迎しますわ。こっちの大陸に来ても、主な移動手段は転移魔術ですわよ』


相変わらず、便利な転移魔術だな。普通なら何十日もかかる海陸路も、転移魔術なら一瞬だもの。


『それじゃ、夏になったら連絡を入れますわね。詳しいことはその時に』

『分かりました、それでは』

『ええ、おやすみなさい』


まずユクリシスさんとの通信が切れる。さて、本番は次だな。さっきは特に何も言わなかった精霊さんだけど、それはユクリシスさんの前だったからだろう。本音が出るとしたら、ここらへんだと思う。


『・・・それじゃ、私もそろそろ切るね』

『はい、再来年の夏は必ずダンゼ島に向かいます。最優先確定です』

『そう、まあのんびりと待ってるわ。・・・私、ツチオが来るの結構楽しみにしてたの。それだけは、覚えておいてね』

『・・・了解です』


そうして、精霊さんとの通信も切れた。精霊さんには悪いことをしちゃったな、向こうのほう先に連絡してきたのに。この埋め合わせは大変そうだ。とりあえず、最高のお土産を用意しないとね。






「なあ、ニクロム。この前は色々とあって聞きそびれちゃったけどゴーレムと戦ってた時機関銃じゃない銃を装備してたよな?見た感じかなり大きかったけど、どんな銃なんだ?よければ見せてほしいんだけど...」

「了解しました、お見せしながら説明します」


ユクリシスさんと精霊さんの修羅場の翌日、組を変えて3対3の模擬戦を行った後、俺はニクロムがゴーレムと戦っている時の装備について尋ねてみた。チラッとしか見てないけど、大きさが魔力機関銃とは大違いだったのを覚えている。前に分けておいた設計図、あの中に武器のもあったしな。影さんから受け取って、ニクロムが自分で作ったのだろう。材料は、遺跡から持ってきたやつがいっぱいあるしね。


蛇の体の中に手を突っ込んで、中から銃を引っ張り出すニクロム。彼女が取り出したそれは、長く太い銃身を持ったライフル銃だった。


「・・・うっわー、これまた極端なものを作ったもんだ。これ、何て種類の銃なの?」

「対大型魔物用狙撃銃です。あのゴーレムのように硬い魔物には、魔力機関銃では有効打を与えられませんから。元々は大型魔物用ですけど」

「へー・・・いいな、これ。普通の魔物なら、ほぼ一撃だろ?上半身と下半身が泣き別れだ」

「そうなるでしょうね。ですが、小型の魔物を攻撃するには、これだと効率が悪すぎます。使うとしたら、最低でも中型の魔物相手からということになるでしょう」

「そうか・・・まあ、作っといて損はないだろ。実際、今回のゴーレム相手には、この銃しか効かなかったんだしね」


俺たち、割と大型の魔物と戦う機会があるもんな。そん時に、思う存分その力を振るってほしい。まあ、しばらくはその機会もないだろうけどね。


「折角出したんだし、ちょっと撃ってみてよ。どんくらいの威力なのか、1回くらいは見ておきたいし」

「・・・それでは、あの木をここから撃ち抜いてご覧に入れましょう」


そう言ってニクロムが指差したのは、何百mも離れている1本の木だった。ここからあれを撃つのか・・・周囲に人影はなし。さすがに実弾を撃たせたら危険すぎるし、ここはペイント弾にしてもらおうか。いや、ペイント弾でも十分危ないけどね。


「それでは」


バイザーが出てきて、ニクロムが銃を構える。片腕は人のもので、銃に添えている。しばらく銃口を微調整してから発砲、辺り一帯に轟音が響き渡った。予想通り、かなりの音だったな。耳を塞いどいてよかった。


「命中しました、いかがでしたでしょうか?」


目を凝らして見ると、木の幹がピンクの塗料でべったりと染まっている。しっかりと幹の真ん中に命中しているな・・・ニクロムの腕もいいんだな。


「あんな遠くまで届くんだね、狙撃銃というだけあるな。ペイント弾だから威力は分からないけど、あのゴーレムの体にめり込んだんでしょ。それなりの威力はあるね」

「そうですね。マスターは私が言わなくても耳を塞いでいましたけど、この狙撃銃について知っていたのですか?」

「・・・いや、知らないけど機関銃もうるさかったじゃん。だから、これもうるさいだろうなって思ったんだ」


俺の知ってるやつとは、似ているけど違う物だろうし。しっかし、こんだけうるさいとルウは大変だろうな。ライムとリンはまあ耐えられるだろうけど、ルウの耳は良いからな。こんだけうるさいと、結構辛いだろう。機関銃の銃声にも、慣れるのに時間がかかってたし。


「最初は辛そうでしたが、マスターが危ないと言ったら気にならなくなったようです」

「そうだったのか。まあ、出来るだけルウの側では使わないようにな。感度がいいんだから、鼓膜を痛めちゃうかもしれないし」

「了解です」

「それにしても、でっかい銃だよな。よく腕が壊れないね、片手を添えただけなのに全然ブレてないし」

「私の体とコードで直接接続しており、センサーと連動して自動で照準しています。このくらいの衝撃で壊れるような腕ではありませんし、この蛇の脚のおかげでしっかりと地面に衝撃を逃がせるのです」

「へー、思わぬ方向に良い影響が出たな。そんなら、もっと反動が大きい兵器でも装備出来そうだな」

「というと?」

「こういう銃だけじゃなくて、砲みたいなやつとか。高火力・広範囲・大魔力みたいな」

「なるほど・・・そういった類の武器の設計図も、いくつかあったはずです。早速取り掛かりましょう」

「材料は大丈夫なのか?いくら大量に持ってきたとはいえ、数には限りがあるんだしな。まず、有用そうな設計図を抽出して、その中で優先順位をつけてったらどうだ」

「・・・そうですね、計画的に使ったほうがいいですし。それでは、どれを作るか選んでいただきたいのですが」

「その前に、ニクロムが自分でどれを作ったほうがいいと思うか、選んでくれないか?それを参考にして、2人で決めてけばいいだろ」

「それならば、マスターが選んできたものを参考にして、私たちが決めれば良いのでは」

「そんじゃ、こういうのはどうだ。俺とニクロム、1人ずつどれを作ればいいか選んできて、その案を擦り合わせて決める。俺は、ニクロムにどの装備を作ればいいのか、考えてきてほしいんだ」

「私に?」

「そう、ニクロムに。自分で物事を判断する練習とでも思ってくれ」

「・・・私を、人間らしくする一環ということですね」

「それだけじゃないぞ。一々誰かに意見を求めないで、自分で考えて行動する。ニクロムの汎用性を高めるためでもあるのさ」

「まあ、そういうことにしておきましょう。それでは、それぞれでどの武器を作るべきか、優先順位を決めてきましょう」

「おう。色んな状況に対応できるようにってのを、念頭に置いてな」

「了解しました」


ニクロムの新しい武器か・・・高火力の武器は捨てがたいけど、使い勝手は良くないんだよなー。両方作っちゃうか?材料が足りるといいけど...。






<side ユクリシス>


「お嬢様、色々揉めていたようですけど、ツチオさんの予定に都合はつきましたか?」

「ええ、つきましたわ。ツチオが私を選んでくれましたのよ!向こうの女性は誰だか知りませんが、今回は私の勝ちですわ!」

「何の勝負をしているのかはともかく、ツチオさんが来年帝国に来ることに決まったのですね。それでは、夏に休みを作る分今を頑張りましょうか」


王城の私室で、ツチオの友人を名乗る女性と話をつけていた私。ツチオが帝国に来ることを選んでくれて浮かれていた私の前に、ドサドサと山のように積まれた書類が置かれる。・・・あれ、私、今日の分は終わらせましたわよね?


「ツチオさんの休みは、大体1月ほどです。移動はお嬢様の魔術で瞬時に移動できるので、1月かけて国をグルッと1周する感じで行きましょう」

「それとこの書類が、どうやったら繋がりますの!?」

「そりゃ、1月なんて長期間玉座を開けるのです。この前以上に前倒しで進めないと、途中で帝都に呼び戻される、なんてことになるかもですよ。そうならないためにも、ガンガン仕事をしちゃいましょう!」

「そ、そうですの・・・それなら、仕方ありませんわね。観光計画を、何とか1月に収まるよう、調整したんですものね」


いくら転移で移動しても、さすがに1月で帝国全てを案内することは不可能。なので、帝国の目玉となる町などを案内する形となった。帝国は多種族国家なので、様々な形の町や文化が混在している。それらを見せるのは本当に楽しみなのだが、そのためには後顧の憂いを絶っておく必要がある。


「前帝王、兄上派で取り逃がした貴族の行方は掴めました?」

「暗部を動かしていますが、未だに足取りは掴めていませんね。ですが、何やら動きがあることは察知しています。向こうも手練を雇っているようで、中々尻尾を出しませんね」

「未だに国内は混乱していますわ、それに乗じて何を起すか分かりません。出来るだけ早く処理しませんと、いつまでも放っておけませんわ」

「分かっています、増員してさらに捜索範囲を広げましょう」


ツチオが来る前には、せめて動きが分かるようにしときたいですわね...。一番は内々に処理してしまうことなのですが、さすがにそこまで簡単な相手ではありませんわ。私が帝王でなくなることだけは、絶対に避けないと...。そっちはウォーに任せて、私は目の前の山を崩しにかかりましょうか。


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