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修羅場?

 3対3の模擬戦を行うことになった俺と従魔たち。ルウ・リン・ニクロムと戦う中で、リンに痛打を与えることに成功。復帰する前に、ニクロムを無力化出来ないと、俺と影さんの勝ち目は薄いだろう。どうやって攻めるか・・・やっぱり、俺が銃弾を防げないってのが痛いな。影さんが防御に集中するから、攻撃の手が緩まってしまう。符で防ごうにも、貫通しちゃうからどうしようもない。もっと強化すればいけるんだろうが、それだと今度は攻撃に回す魔力がなくなる。影さんも防御しっ放しじゃ、いくら魔力があっても足りないし...。どうしたもんかね。


「マスター、防御しているだけでは勝てませんよ」

「そういうなら、この銃弾の雨を止めてほしんだが!」

「それは出来ません。とりあえず、このままマスターを防御に専念させておき、リンが戻るのを待つのが最良だと判断しました。ずっと撃ち続けます」

「くそ、どうしようか。岩蛇を盾にしても、すぐに削り取られちゃうし・・・そんなら、削られ難い壁を出すしかないね」


地面に五行符を投げ込み、鉄の壁を発生させる。俺1人がしゃがみ込むのが限界だけど、ニクロムの銃弾が当たっても壊れる気配はない。あまり長くは持たないだろうけど、これで少しは時間が稼げる。回り込まれないようにだけ、注意しとこうか。


「金属の壁ですか。そんなもの、すぐさま壊してみせましょう」


背中から、断続的に振動を感じる。うっわ、どんどん削られてる。さっさと考えないと、あっという間に蜂の巣だぞ。


「か、影さん。何か良い案ってある?俺は1つだけ、出来そうなやつがあるんだけど・・・まあ、そう簡単に思いつかないよな。俺の案も中々リスキーなんだよね・・・失敗したら、また2対2になっちゃうし。ん、自信はあるよ、もう下準備は済ませてあるしね。・・・オッケー、やろうか。そんじゃ、まずはリンの様子を確認っと」


壁から少しだけ顔を覗かせて、後ろにいるリンを見てみる。お、ちょうど立ち上がってるところだな。ダメージはあるみたいだけど、戦闘は続行出来ると。よし、こっちに向かって来てる。今がチャンス!


「影さん、自分の魔力を隠せる?よし、さすが影に潜んで獲物を狩るだけのことはある。そのまま隠れといてくれ、俺が2人の注意を引きつける」


そう言って、俺は金属の壁から飛び出した。一気に横へ飛んでから、ニクロム目掛けて走る。すぐさま俺に狙いを合わせるニクロム、銃撃を始める前に符を投げる。俺とニクロムの間で破裂し、辺りに黒煙を撒き散らした。


「煙幕で目くらまし?魔力センサーで、居場所は丸分かりですよ」

「待ってニクロム!この煙は、そういう感覚を狂わせるの!ツチオは魔力を潜めて、この煙の中に隠れてるわ!」

「この煙幕にはそんな効果が・・・センサー類を検査、異常を検出し対応します」


リンの言葉を聞き、ニクロムは銃を構えたまま高速でセンサーを検査する。バイザーに何行か文字や数列が流れ、数秒でセンサーの検査は終わる。


「この中のどこかに隠れてるのよ、感じる魔力は囮の呪符。同じ手は食うもんですか!」

「検査終了、特に異常は見当たりませんが」

「嘘、そんなはずないわよ!だって、さっきもこんな煙幕で騙されたの!見落としは...」


リンが振り向くと、そこには首筋にいくつも黒い刃を当てられているニクロムの姿があった。足元にある影から、気づかれないように潜りこんだ影さんが現れる。


「ふう、何とか上手くいったか。途中でバレやしないか、ヒヤヒヤしたけどな。リンが素直ないい子で助かった」

「なっ、どうしてそこにツチオがいるの!?そこには、囮の符が...」


リンが驚いているのは、さっきは囮の符があったところに俺が普通にいるからだろう。そろそろ気づいてほしいんだけどなー・・・素直すぎるのも考え物だね。


「実は、さっきの煙幕は普通のものなんだ。ただ目くらましを目的とした、感覚を狂わしたりしないものね」

「・・・私、また騙されたの?でも、影さんの魔力は感じなかった」

「影さんは、自分で自分の魔力を隠せるんだよ。影に潜む魔物らしい技だね。ニクロムが他のセンサーを使ったらすぐにバレちゃったんだけど、リンがいい反応をしてくれたよ。センサー全てを狂わす、ジャミング系の術だと思ってくれた」

「魔力だけなのですか」

「うん、魔力だけ。まあ、温度や臭いを誤魔化す術を作ってもいいかもね。全部を合わせたら、ほとんどの感覚を潰す術に出来るかも...」

「これで、私は脱落ですね。強化は施していますが、ここまで近くては首が飛ぶでしょう」

「そうだな、少し離れて観戦しててくれ。よし、後はリンを倒すだけだな」

「・・・ああもう!私、さっきからずっといいとこなしじゃない!ツチオにはいいように使われるし、影さんには爆撃されるし...。こうなったら、あんたたち2人を私が倒して汚名返上よ!」

「2対1ってのは中々に厳しいぞ、数の利ってのは大きいしな。もう絡め手はなしだ、真正面から倒してやんよ!」


魔力は使うけど、最悪重符を使えば障壁は突破出来る。ルウはライムが倒してくれるはず、俺らでリンを倒すぞ!






 その後の戦闘の結果、重符を使って何とかリンを下したものの、俺と影さんの魔力はそこで限界を迎えた。ルウとライムも引き分けたので、結局今回の模擬戦は引き分けという形で落ち着いた。もう1回くらい重符はいけると思ったんだけどなー・・・岩蛇や雀蜂、火蜂で結構消耗してたわ。影さんも、ニクロムとタイマン張ってた時に結構消費していたみたいだ。それに加えリンとの戦闘、さすがに尽きるよね。


「すごいね、あれで模擬戦なんだ...。僕たちじゃ、とてもじゃないけどついていけないよ」

「格の違いを見せ付けられたでありますなー」

「休みの間は、大体戦ってるんですもんね。そのくらいしなければ、あそこまでいけないんですね」

「まあ、伊達に経験は積んでないってことだな。皆は俺より年下なんだし、そこまで焦らなくても大丈夫。別に学院を卒業してからでも、全然遅くはないと思うよ」

「それじゃ、ツチオ君は何でそこまで頑張ってるの?」

「俺は皆より年を食ってるし、ちょっとした目的もあるからな。何をやるにも、早すぎることはないんだ。人生なんて、本当にあっという間だからね」


こっちの世界に来て、それを実感しているよ。毎日が濃密で、気が付いたら3年も経ってたしな。


「年寄り臭いことを言うでありますね、ツチオ殿は」

「こりゃ、手厳しいな」

「それで、この後も模擬戦はやるの?皆と組んでみたいって言ってたけど」

「うーん、皆結構疲れてるしな。俺も魔力がすっからかん、これ以上の模擬戦は困難かな。今日のところは、ひとまずこれで終了だ」

「ふー、いい運動になったね。ライムを倒せなかったのは、少し残念だけど」

「お父様を勝利へ導きたかったのですが・・・私の力不足で、お姉様を下せませんでした。今度模擬戦をするときは、朝食に下剤でも盛りましょうか」

「こらこら、そこまでしたら駄目だぞ。模擬戦なんだし、出来るだけ自然な戦闘を同じようにやらないと」


まあ、事前に毒を盛ってから戦うこともあるかもしれないけどね。そういう特殊な例には、また今度の機会にね。


「・・・はあ」

「ん、どうしたリン。ため息なんかついて、らしくないぞ」

「ため息もつきたくなるわよ。進化して人化もしたのに、ツチオと影さんに負けちゃったのよ。守る相手に負けちゃうなんて、恥ずかしすぎるじゃない。こんなんで、どうやってツチオを守るっていうのよ」

「まあ、今回のは3対3だったからな。リンとニクロムは、まだ連携を取れないだろ。それに、俺たちは小細工を使ってようやく同じ土俵に立てるんだ。1度見せた小細工は、もう2度と通用しない。次戦ったら、俺たちはきっとリンに負けちゃうよ

「・・・ホント?」

「ホントのホントさ。リンは、同じ手を何度も食らうほど馬鹿じゃないだろ」

「もちろんよ!次模擬戦するときはけちょんけちょんにしてやるんだから、覚悟してなさいよ!」

「楽しみに待ってるよ」


うんうん、リンはこうでなくっちゃ。しおらしいリンもいいけど、やっぱりいつものリンが一番だな。次模擬戦するとき、どうやって戦おうか・・・何か考えとかないと、あっさり負けちゃいそうだな。少しは食い下がらないと悔しいしね。


「昼ご飯を食ったら、符を補充しようかな。皆は自由にしてていいよ」


今回も結構使ったしね、少なくとも使用分は書いておかないと。明日に持ち越しちゃうとやる気がなくなるし、今日中にやっとかないと。






『それで、昨日樹の所に来た冒険者たちが乱暴な奴らでねー。樹の皮を剥いで、無理矢理上まで登ってくるのよ。葉っぱを毟ったりするからさ、私頭に来ちゃって...。魔獣を大量をけしかけたやったわよ!』

『その冒険者、大丈夫なんですか?死んでません?』

『大丈夫だと思うわよ。中心にまで来れるんだから、そこそこ強いでしょうし。まあ、別に死のうが生きようがどうでもいいわよ。下手なことしなければ、私だって手は出さないし』

『そうですか、程ほどにしてくださいね。精霊さんがいるって、まだバレてないんでしょう?捕まったら、何をされるか分かりませんよ』

『分かってるわよ、姿を見せるなんてヘマはしないわ』


その日の夜、リュカがいない時を見計らって精霊さんと話す。向こうの探索も進んでいるようで、魔獣のいない巨大樹の周りは冒険者たちの休憩所となっているらしい。こりゃ、精霊さんと会うのも難しくなりそうだな。


『夏にはこっちに来るんでしょ?加護をあげた2人の様子も見たいし』

『そうですね、お土産も考えてありますし。今度の夏季休暇はダンゼ島・・・っと、すいません。ちょっと外しますね』


精霊さんと話している途中、影さんがユクリシスさんからもらった魔術具を渡してくる。こっちからも通信がかかってきたのか?間が悪いな・・・同時に話すなんて、器用な真似は出来ないし。ウォーさんから、ユクリシスさんの愚痴に付き合ってくれって言われてるしな。とりあえず、ちょっと話そうか。


『もしもし、ユクリシスさんですか?』

『久しぶりですわね、ツチオ。その後の調子はいかがです?』

『いいですよ。少し怪我しちゃいましたけどね...』

『怪我!?大丈夫ですの!?』


耳元で大声を出され、思わず耳から離してしまう。結構な声量だったようで、ベッドの上に置いといた枝にも聞こえたみたいだ。


『ちょっと!ツチオ、何やってるの?ルウたちのじゃない、女の声が聞こえたわよ!』

『す、すいません、別の方からも通信が来て...。もうちょっと待ってください』


とりあえず、精霊さんとはもう結構話したし、ユクリシスさんの用事を聞いてから精霊さんとの通信を切ろうか。


『あ、申し訳ないですわ。それで怪我は...』

『大丈夫です、ちゃんと治療して後遺症なく完治しましたよ。それで、今日の愚痴は何ですか?』

『愚痴じゃありませんわよ。いや、愚痴もありますけどそれだけじゃないですわ。ツチオ、今度の夏に帝国に来ません?何とか休みを捻出出来たので、案内しますわ』

『え、夏ですか?』


ちょうど今、精霊さんに行くって言おうとしてたのに...。どうしよう、帝国には行きたいしなー。


『どうしましたの?夏には、休暇があるんですよね。もう予定が決まってるんです?』

『いや、まだ決定はしてないんですけど、ちょうど今それを話してたところで...』


うーん、精霊さんにも聞いてみるかな。向こうがいいなら、俺は帝国に行きたいなー。ユクリシスさんも、あんまり休みも取れないだろうしね。


『・・・ちょっとー、無視しないでよー。何なのよ、さっきからずっと無視しちゃってさー』

『ああ、すみません。ちょっと知り合いから、夏に予定を聞かれて』

『夏の!?どこに誘われたの!?』

『ちょっと遠くの国に、行くことになりますね。その誘ってくれた人も、結構多忙な方で・・・精霊さんには悪いですけど、そっちに行くことになりそうですね』

『私の方が、先に誘ったのに...』

『本っ当にすみません!再来年には、必ずそっちに行きますから!』

『・・・ちょっと、そっちの魔術具と枝をくっつけて。直接話をつけてやるわ』


え、それって・・・精霊さんとユクリシスさんが、直接話すってことだよね。・・・奇跡的な組み合わせだな、精霊と帝王なんて。というか、ちょっと怖い。


『その・・・あまり、荒立てないでくださいね』

『分かってるわよ、少しお灸を据えてあげるだけよ』

『止めてください!精霊さんのお灸って、ちょっと冗談になりませんから!』


海で隔たれてるから、大丈夫だろうけど...。本当に大丈夫だろうな?


『えっと、ユクリシスさん。少し話したいって人がいるんですけど。ユクリシスさんより、前に連絡を入れてきた...。その人と話してたんです』

『そうだったんですの・・・いいですわ、繋いでください』


大丈夫かなー・・・もしかして、これが世に言う修羅場!?


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