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続魔法の授業と、トリスの魔力と、外国の授業

「さて、まだ上手く魔力を流せてない者もいるだろうが...。それは、これから自分で訓練してもらおうか。次は、簡単な魔力操作で出来ることを、紹介しておこう」


ようやくか...。みんながウンウンうなって、魔力を動かそうとするのを見るのも飽きたよ...。


「そうじゃの...。まずは剛体じゃな」


ゴーシュ先生の身体が、うっすらと光り出す。その状態でピョンと飛ぶと、ゴーシュ先生の身体が1mくらい宙に浮く。かなり年を取っているはずなのに、あんなに飛べるのか...。


「このように、身体能力が上昇するのじゃ。魔力の流れを集めて、出来るだけ速く流すことじゃな。これが、魔力の移動と凝縮の練習になる。どのくらい上昇するかは、元の身体能力に比例するから、儂では大して上がらんのじゃよ。身体の中を流すだけだから、魔力はあまり消費せんというわけじゃ」


なるほどな。元々魔力が少なくても使えるのか...。便利だなぁ。


「ただ、実戦で使えるようになるまでは、それなりの研鑽が必要じゃよ。才能は関係なく、何度も反復することでしか、魔力の質は上がらん」


俺には魔手があるから、まだ楽そうだな。暇があったら、魔力を動かすようにしよう。


「次は、これじゃな」


ゴーシュ先生が手をかざすと、透明な丸い盾のようなものが現れる。外に魔力を放出して、それを固めて維持しているのか...。


「これが魔盾まじゅん、魔法使いに取っては出来なくてはならない術じゃ。魔力を放出と凝縮を同時作業じゃから、中々難しい。これをしっかりと使えるようになれば、一人前の魔法使いになったということじゃな」


盾かー。使えたほうが、便利そうだな。俺は戦士にはならないから、自分で防御出来る術がほしい。魔手って、体外の魔力も操作出来るのかな...。今度試してみるか。


「今日はこんなもんじゃな。いくつも詰め込んでは逆効果じゃからな。次の授業までに、ちゃんと魔力の操作を練習しておくこと。全員、動かせるようになっておかねばいかんぞ」


もう終わりか...。三十分くらいしか授業してないのにな...。






「うーんうーん...。全然動かないでありますよ...」


早めに授業がおわったので、昼食も早くおわった。今はルウとライムを外に出しながら、トリスが魔力を動かそうとするのを眺めている。


「ツチオ殿ー、どうやったらいいんでありますかー?」

「どうって言われても...。腹の中の魔力を揺り動していけ、としか言いようがないんだけどな...」


ライムをムニムニしながら、小さめの金属片をライムに与える。ちっちゃいやつなら、今のライムでもなんとか消化出来るようだ。


「こんなの、絶対動かないでありますよー!」

「ったく、しょうがないな...。俺がやってやるから、動くなよ?」

「ありがとうであります!・・・って、ななな何をするんでありますかー!?」


トリスのお腹に手を当てると、顔を真っ赤にして後ろに下がられる。


「ツチオ君、いきなりお腹を触られたら誰でもビックリするよ...」

「ああ、それもそうだな。腹のほうに魔力が溜っているから、直接そこらへんを触ったほうが動かしやすいんだよ」

「あ、ああ、そうなんでありますか...。ビックリしたであります...」

「だから、動くなよ?」


再びトリスのお腹に手を当てる。「ひうっ!」とわずかに声を上げるが、無視して魔力を探っていく。


「この辺りか?」

「ももも、もう少ししたでありますぅぅぅ...。は、恥ずかしいでありますよぉ...」

「我慢してくれ。ここらへん?」

「は、はい!そこらへんであります!」


そのまま魔力を動かそうとしてみるが、まったく動こうとしない。何か起爆剤みたいなのが必要だな・・・よし。


「俺の魔力で、一気に身体の魔力を動かす。異物が入ってくる感じがすると思うが、これも我慢してくれ」

「は、はい!」


んじゃ、量に気をつけてっと。一気に俺の魔力を、トリスの中に流し込む。少し身体が怠くなるが、まあこんくらいなら問題なし!


「ふ、んん...。はあ、ふう...」


トリスが身をくねらせて、もじもじしながら耐えている。早く終らせてやんないとな。

トリスの魔力は、俺の魔力を受けて少し揺らぐ。波みたいな感じだ。その揺らぎに合わせるように、トリスの魔力を動かしていく。ほどなくして、身体の中を循環し始めた。


「ふう、終ったぞ。身体がポカポカしてきただろ?」

「ほ、ほんとうであります!何だか元気が出て来たでありますよ!」

「それが剛体の第一段階なんだよ」


今まで黙って俺たちを見ていたリュカが、話に入ってきた。剛体の第一段階?・・・ああ、なるほどね。


「今まで止まっていた魔力が動き出したってことは、それだけで剛体の効果が出るんだよ。軽いものだけどね」

「そういうことか。魔法の基本中の基本ってことね」

「そうそう、後は練習あるのみ!トリスちゃんは戦士を目指しているんだから、普段の鍛錬の時も使っていったほうが良いね」

「了解であります!毎日使っていくであります!」

「リュカはもう魔法を使えんだから、剛体もある程度は使えるんだよな?もう少し走れたんじゃないのか?」


爺さんであんだけ強化されるんだから、リュカならもっと上昇したんじゃないのか?


「まだ僕は鍛錬不足だよ。あの先生の魔力操作に、全く無駄がないだけだよ...」

「えっと、剛体も使わないで走り切ったトリスは...」

「元々のスタミナが飛び抜けてるんだと思うよ。ドワーフだし、昔から鍛えてたんじゃないかな?」


はあ、種族特性ってやつか。ドワーフは力が強くて髭もじゃで器用、だよな。スタミナも多いのか。


「ツチオ君も、少しは鍛えたほうが良いと思うよ?魔法使いでも、逃げる時は走るんだからね」

「飛んだりしないのか?」

「飛べるのなんて、ほんの一握りの人だけだよー!それこそゴーシュ先生みたいな、一流の魔法使いくらいだけ」

「そうなのか...。毎朝、少しくらいは走っておくか...」

「僕も一緒にやるから、頑張ろうね!」


自分の眠る時間を削って、俺に付き合ってくれるなんて・・・めっちゃ良い子やー!!!


「いや、別にリュカがやらなくてもいいんだぞ?朝は眠いだろ?」

「大丈夫だよ、ツチオ君に起こしてもらえばいいし。それとも、僕と一緒に走るのはヤダ?」


涙目ウルウルの上目遣いで、「そんなことないよね?ね!?」って感じで言われちゃ、断れる人なんているわけないじゃないですかー!!!


「そそそそんなことはないぞ!!!毎日、いや今からでも走るか!!!」

「ホント!?じゃあ、明日から頑張ろうね!」


ふう、俺の鋼鉄の精神でなければ血迷うところだったぜ...。もう手遅れの気もするけど。


「私も一緒にやるでありますよー!」

「まあいいけど...。起きれるのか?リュカは起こせるけど、トリスは自分で起きなきゃいけないんだぞ」

「問題ないであります!早起きは得意なんでありますよ!」

「んじゃ、日が昇る頃になったら寮の前に来てくれ」

「了解であります!」


この世界にも時計はあるらしいんだけど、高級品みたいであまり見ない。だから、時間は「日がてっぺんに来た頃」とか「日が沈むまで」という言い回しが多い。田舎には、時間を知らせる鐘すらないらしいし。日時計とか、作ってないのかな?


「さてと。ライム、ルウ、おいでー」

「グルゥ?」

「・・・」ぷるぷる


ライムを右足、ルウの顎を左足にのせて撫でる。俺も強くならなきゃいけないけど、ルウたちにも強くなってもらわなきゃいけないな。俺が授業の間、ルウとライムは魔獣舎に閉じ込められている。それじゃ、強くなんてなりようがない。だから、


「ルウ、これから俺がいない間は、自由に外に出してやる」

「グル!グルル?」

「いいんだよ、ちゃんと戻ってきてくれれば。・・・戻ってくるよな?」

「グル!」

「そうか、ちゃんと場所を覚えとけよ。あ、それと。外に出てる間は、魔獣を倒して強くなるんだ。魔獣舎にいるだけじゃ、強くなんてなれないからな」

「グルル」

「無理はするなよ?急ぐことはないからな。お前がいなくなったら、俺はどうしようもないんだからな」

「グル!」

「それならいいんだけど...」


第三者から見たら、何を話してるかまったく分からないな。まあ、俺とルウが通じ合ってればいいか。


「テイムの授業がある日はいけないけど...。そこは我慢してくれよ」

「グル」

「いい子だ。明日から、毎朝出してやるからな」


次はライムだな。


「ライムはまだ外には出せない。すぐに死んじゃいそうだからな」

「・・・」ぷるぷる

「そうだな。お、もう金属を食べ終わったのか。ほら、次のだ」

「・・・♪」ぷるぷる♪


おお、喜んで食べてる。金属っておいしいのか。


「こうやって、毒草や金属を食べれば、そのうち特性を取得できると思うんだけどな...。やっぱ、魔獣を倒さなきゃいけないのか?」

「グルル」

「・・・」ぷるぷる


やっぱりそうなのか...。どうすればいいんだろう...。勝手に外に行ってもいいのか。


「お休みの日はいいらしいよ」

「休みの日っていつ?」

「えっと、明後日と明々後日だね。五日授業があって、二日はお休みなんだよ」


週休二日制なのか。いや、週はあるのか?


「一月って何日だっけ?」

「え、七日が五回で一月だけど...。何でそんなことを聞くの?」

「ちょ、ちょっとど忘れしちゃってな!」

「ふーん...。あ、トリスちゃん!慣れないうちは、あまり魔力を回しちゃダメだよ!気持ち悪くなっちゃうから!」

「ううう...。吐き気がするでありますよぉ...」


トリスがやらかしてくれたおかげで、リュカの注意が逸れた。ナイス、トリス!そのまま背中をさすられてて!


「んじゃ、明後日は外出しようか。あの森でいいよな」

「・・・?」ぷるぷるぷる?

「俺が頑張ってやってみるよ。幸いなことに、剣は貸してもらってるからな」






翌日は外国の授業だった。帝国や妖精領、洞窟国について概要が説明されました。ちなみに先生は、田舎で暮らしてそうな物腰の柔らかいお婆さんでした。お婆さん先生によると、帝国は色んな種族がいる多種族国家。力が正義だからな、強けりゃいいんだろう。中でも、獣人族が多いらしい。絶対に行かなければならないな。

妖精領にはエルフが多いみたいだ。リュカもそこから来たんだと。この学院は、国内外にその名声が轟いてるんだな...。

洞窟国にはドワーフが大半を占めらしい。鉱石の採掘と鍛冶細工が盛んで、洞窟国産の武器は王国で高値で取引されている。・・・種族って、どんだけいるんだ?人間ことヒューマンと獣人族ことビースト、エルフにドワーフ・・・これだけかな?リュカに尋ねてみたところ、


「基本的にはそうだね。魔人を種族に含まなければね。けど、ビーストはけっこう色んな人たちがいるんだよね...。犬っぽい人や猫っぽい人、羽を持ってる人だっているよ」


なるほど、ビーストの中に色んな奴が入ってるのか。種族が少ない割に色んな姿の人がいると思ってたんだが、そういうことだったのか...。


朝にルウを外に出してみたら、ちゃんとご飯の時間頃に帰ってきた。口が少し血で汚れていたので、狩りでもしてきたのだろう。このちょうしで、強くなって欲しいもんだ。


そして休みの日になり、俺とライムはテイムの授業で行った森へと出かけたのであった。



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