ガールズトーク2
ご要望にお答えして、書いてみした。今回は2つ立てです。
<ガールズトーク>
「それじゃ、第二回従魔会議を始めるよー。とりあえず、ニクロムの自己紹介からね」
学院へ帰ってきた数日後、従魔たちは個人寮へと集まっていた。リンは入れなかったが、窓から頭を突っ込んで話し合いに参加している。今は昼前、ツチオは魔術の授業に励んでいる頃。影さんも、校舎から寮まで来ている。結構離れているが、問題なかったようだ。
「自己紹介とは、どのようなことを話せばいいのでしょうか?必要なことは、既にお話していますが」
「そうだな・・・得意なこととか苦手なこと、好きな物や嫌いな物。あと、こういう魔術が使えるーとか、どんな戦い方をするとか?」
「そうですね、多少は見ましたけどまだまだあるでしょうし。ニクロムの場合、魔術や戦い方ではなくて、どういったことが出来るかの方がいいかもしれません」
少し考え込むニクロム。考えながら話さないのがニクロムらしい。
「どのようなことが出来るか...。武装は近・遠距離両方揃っているので、どちらにも対応出来ます。種類は遠距離の方が豊富ですので、得意なのは遠距離戦闘ということになるのでしょう。得意なことは、戦闘と演算です。未来予測とまではいきませんが、データが揃えばある程度相手の動きを読めるようになるでしょう。苦手なことや好きな物はありません、汎用兵器なので。ああでも、マスターは少し苦手です。兵器ではなく、人と同じように接してくるので。魔術は使えません」
「あ、魔術は使えないんだ。魔力があるから、使えるんだと思ってたんだけど・・・だから、あの魔術具で戦ってるんだね」
「お父様が苦手ですか...。まあ、まだ従魔になったばかりですし、それが普通ですか。私も、最初は主としか認識してませんでしたし。ふふ、でもそのうち変わっていきますよ。お父様の愛情を受けて、次第に絆されていきます」
「そんなことはありません、私は兵器ですから」
『兵器か・・・変ってるわね』
リンが面白そうにニクロムを見ている。今まで、従魔にはいなかったタイプのニクロムが珍しいのだろう。もしくは、ライバルにはなりそうにない、やったね!とでも考えているのか。
「私たちも自己紹介しようか。今後一緒に戦っていく上でも、長所と短所が分かっていたほうがいいでしょ?」
「そうですね、お願いします」
「じゃあ、私から。名前はルウ、ツチオの嫁だよ!見て分かる通り竜の魔人、どんな種類なのかは分からないな。強化魔術しか使えないけど、炎なら操ることが出来るの。あまり燃費が良くないから、そこまで使わないけどね。ブレスはすごく強いんだけど、使った後は全然動けなくなっちゃうから、本当に使わなきゃいけない時しか使わないよ。もし私がブレスを放ったら、相当な強敵と戦っているって思って。
好きなのは、ツチオと魚!嫌いなのは、ツチオの敵と屍人!私、鼻が良いから強い臭い全般が苦手だよ」
「ブレスを放ったら要注意ということですね。強化魔術というのは、あの腕が赤く発熱する魔術ですか」
「うん、それ。前はツチオが背中に乗って、魔力を操作してさらに強化してもらえたんだけど...。今はこの姿がほとんどだし、最近はご無沙汰だねー」
「マスターが魔力を・・・後で聞かせてください」
「いいよ、それじゃ次は...」
「私ですね。名前はライム、お父様につけてもらった私の宝物です。スライムの魔人ですが、蜜毒様の御加護をお受けしているので少々特殊な個体です。魔術は少し使えますけど、近接戦闘のほうが得意ですね。体を変形させれば様々な形を取れますが、爪状態が最も切れ味がいいです。昔、駆竜というドラゴンの腕を食べたので、爪だと魔力が乗りやすいのですよ。後、溶解液が出せますし毒も作れます。多少は薬にできますので、必要ならば言ってください。
好きなのは、お父様とお父様が好きなもの。嫌いなのは、お父様が嫌いなものと虫ですね、広い意味で。お父様を幸せにするため、一緒に頑張っていきましょう」
「蜜毒様とは?」
「私とライムとリンは、ドラゴンから加護をもらってるんだ。ツチオが、ドラゴンの子を助けたお礼にね。ライムに加護をあげたのが、その蜜毒ってドラゴン。詳しい話は後でね。それじゃ、次はリンだよ」
『今更話す必要もないと思うけど...。名前はリン、見ての通りユニコーンよ。処女しか乗せないとか言われてるけど、私は特に拘らないわね。魔術は得意だけど、雷の攻撃魔術しか使えないわ。加護をもらった時、そうなるようにしてもらったの。肉弾戦も出来るけど、ルウさんとライムがいるから大体魔術で攻撃してるわね。
好きなのは早駆け、涼しい時間帯に走るのが気持ちいいわ。嫌いなのは雄の馬、変な目で私のことを見てくるのよ...』
「ルウとライムが前衛、リンと影さんが後衛だったわけですね。私は中衛や遊撃に回ったほうがいいでしょうか」
「まあ、そこらへんはツチオとも相談しないと。ツチオも後衛っぽいし、とりあえず前衛でいいんじゃない?あの銃ってやつなら、前衛でも使えるだろうし」
「そうですね、まずはマスターの意見を伺いましょうか。影さんは・・・そうですか、分かりました」
『話さないでも分かるっていうのは楽ね、ちょっと味気ないけど』
「何にせよ、自己紹介はこれで終わりかな。それじゃ、次はツチオに関することを...」
彼女たちがツチオのことを話し始めると、その場は一気に盛り上がる。ニクロムは聞き役に回り、ツチオのデータを集めているようだ。その話し合いは、ツチオが昼食を持ってくるまで続いた。
<ガールズ(?)トーク>
「あ、学院長先生。お先に頂いてました」
「遅かったですね、王都から客が来ていたそうですけど」
「色々と話し合いが長引いてね...。麦酒と適当に料理を持ってきてくれ」
「私、蜂蜜酒追加でー」
「私も麦で」
学院近くの町のとある酒場、3人の女性が同じ卓につき酒を飲みつつ話していた。学院長とサシャ先生、それとハロリーン先生だ。
学院長は、店員が持ってきた酒を一飲み大きく息を吐く。普段、学院では滅多に見せないような光景だ。この場にツチオがいたら、「先生!もう若くないんですから、そんなに一気に飲んだら危ないですよ!一気飲み、駄目絶対です!」とでも言いそうだ。
「はぁー...」
「お疲れですねー。やっぱり、お上を相手にするのは疲れますよね」
「学院だとなおさらです、優秀な生徒を引き抜こうとする輩も多いですから」
元々、学院長とサシャ先生は知り合い。たまにこうして、一緒に飲むことがあった。そこにハロリーン先生が加わったことになる。サシャ先生とは歳が近く、学院長とは同じ魔術士同士。さらに宮廷に関わった者同士、色々共通している部分があるからか、いつの間にかこうやって3人で飲むようになっていた。
「それにしても・・・またツチオはやらかしてくれましたね」
「遺跡での行方不明、さらにスライムの魔人化・・・行方不明は無事だったからいいとして、スライムについてはもう報告したんですか?」
「一応、それとなく報告しておいたよ。まあ、元々雑魚扱いのスライムだ。そこまで関心は持たれないと思うよ」
「だといいですけどね。スライムの魔人って、あれが初めてなんですよね?」
「公式には、ですけど」
「どういうことですか?」
「報告されていない場合が、あるかもしれないということです。遭遇したけど殺されたとか。役人はそこまで興味を持たないでしょうけど、ギルドは別ですね。そっちまで話が伝われば、話を聞きに来ると思いますよ」
「そういう時は、丁重にお断りしとくかな。学院は王国の管轄化だ、お上はともかくギルドはそこまで強くは出れない。報告は、ツチオ自身に任せよう」
「それがいいでしょう。ハロリーンは学院に慣れましたか?私が学院に来た時は、慣れるまで結構時間がかかりましたけど」
「大丈夫ですよ、元々人に教えるのは好きですし。サシャさんは、ただ人見知りなだけだったんじゃないですか」
「そうだねー。学院に来たばかりの頃のサシャは、無口の上に仏頂面で怖がられてたよ」
「昔の話です。研究はどうなんですか、まだ一応宮廷魔術士ではなんでしょう」
「呪符の統一規格化は、そこそこ進んでます。生徒たちに使ってもらって、個人差が出来るだけ出ないように少しずつ改良を加えているところですよ。次の課題は、どれだけ種類を増やせるかですね」
「様々な符を作って、あらゆる状況に対応出来るようにするだったか。中々騎士団向きな研究じゃないか。魔力が少なくても、一定の効果は出せるんだろう?」
「そうですね、それが売りですし。それとは別にして、ツチオの符は独創的です」
「生き物を模しているんでしたね。傍目には魔獣に見えるとか」
「ええ、何にも知らないで見たら魔獣にしか見えません。どうやったら、あんな符を作ろうと思うのか・・・気が知れませんね」
「彼がテイマーだからでしょうか...。それ以外にも、符はあるんですよね?」
「他のは、私でも作れそうなやつですよ。やっぱり、あの蜂やら蛇が気になります」
「従魔も、何か変わった奴が多いな。特にあの新しい奴、パッと見た感じじゃラミアみたいだったが...」
「少し雰囲気が違いますね、ただのラミアではないでしょう。変異種・・・とは、また違った感じなんですよね...」
「ツチオって、何なのかしらね。どっか遠くの国出身なんでしょ。そんな奴が、わざわざ王国にまで来るの?自分の国にいりゃいいじゃない」
「何か事情があるんだろうね。さすがに聞くのは不躾すぎるし...」
「顔立ちも、ここら辺の人間とは違った感じですし」
「気になりますねー・・・どこの国出身なんでしょう」
「まあ、そんなことを話してもしょうがない。今は、もっと身近なことを話そうじゃないか」
「というと?」
「そりゃ、女が集まって話すことと言ったら、男の話だろ」
「「ああー...」」
2人が顔を顰めながら酒を口に運ぶ。学院長は早くも1杯目を飲み干し、お代わりを頼んでいた。
「何だい、2人とも揃って渋い顔して。まだ若い女だろ、1人や2人気になってる奴はいないのか?」
「いませんね、特に同僚はそんな目で見れません」
「私はずっと魔術が恋人みたいなもんだったし・・・特に興味がないんですよね」
「枯れてるねー、そんなんじゃあっという間に行き遅れになっちまうよ!」
「学院長には言われたくありません」
「あ、そうそう気になってたんです。学院長って独身なんですか?」
「独身ですよ。若い頃は引く手数多だったそうですが・・・今はご覧の通り」
「私に聞いたのに、何でサシャが答えるんだ。いいんだよ私は、1人が好きなんだから」
「言い訳にしか聞こえませんね、行き遅れの人は皆そう言います」
「子どもも欲しくないし、別に結婚しなくても生きていけますよ。それに、そういうのは巡り合わせが重要ですから。無理に作る必要はないと思います」
「そう思ってた時期が、私にもあったねぇー。運命の相手とか、そういうのだろう?そんな奴と出会うのなんて、物語の中だけだよ。現実ってのは非情なもんだ」
「そういうんじゃないんですけど・・・しっくりくる人が見つからなくて。今までも、何回か付き合ったことはあるんですけどね」
「学院長みたいにはなりたくありませんし、気が向いたら探しましょうか」
「くっくっく、急げよ若人。人生は短い、1分1秒も無駄に出来ないよ」
「実感が篭ってますね」
「経験者は語るって感じです」
「余裕ぶっこいていられるのも今のうちだけ・・・女なんて、30を過ぎたら劣化するだけだよ」
「いやいや、学院長はお綺麗じゃないですか!肌だって全然皺がないですし、魔女って感じですよ!」
「それは褒め言葉になってません」
そうして、彼女たちの夜は更けていった。
従魔と教師同士のお話、いかがでしたでしょうか?ツチオのことやライムのことを指摘されていたので、いい機会だと思って書いちゃいました。問題はあるけど悪い生徒ではない・・・教師から扱い辛そうです。




