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遺跡調査!

 ユクリシスさんからの連絡がないまま、季節は巡って冬となった。この数ヶ月間に、ザクリオン帝国から使者が来て和平が結ばれたり、魔獣の定義が変わったり...。向こうの大陸にいるのは全部魔物、魔獣はこっちの大陸にしか生息していないって感じ。一般の人たちの間では、魔物との間に和平を結ぶことについて、色々と騒ぎになったりしたが・・・そこらへんは、騎士団が頑張って押さえ込んだみたいだね。


北方でトレントたちを倒したものの、ライムとリンが進化することはなかった。まあ、影さんが進化したから目標は達成したんだけど...。やっぱり、ライムたちには早く人化してもらいたいね。ルウが人化したのは戦争時、一気に大量の魔物を倒したからだろうな。まあ、普通ならここまで進化するのに、かなりの時間がかかるんだ。十分早いのだろう。そういや、影さんには加護がないよな...。しょうがないけどね。


魔物から取り戻した北方の土地だが、やはり国家間でどこがどれだけ領土とするかごたついているらしい。昔の資料を持ってきて領土を主張したり、まあ色々やっているそうだが・・・俺には関係ないことだね。まあ、いつまでも放置しておける問題でもないし、そろそろ決まるとは思うんだけど。他にも色んな場所があるだろうし、もしかしたら新種の魔獣がいるかもしれないから、今度の夏季休暇までには決めてほしいよ。


「えー、それでは歴史の授業を取っている皆さん。遺跡調査について、詳しい説明を始めたいと思います」


サバイバルは2年生で授業がないので、俺は新しく歴史の授業を取った。その中で、遺跡を見に行く実習があるのだ。今はそれの説明を受けている。


「この王国がある大陸には、昔1つの国があったことが確認されています。その国は、今とは比べ物にならないほど、発達した魔導技術を有していたと言われています。今ではその技術は失伝してしまいましたが、古代の建物が遺跡として残っているのです。今回の実習では、王国内にある遺跡に向かい、その中の調査に参加します。既に騎士団が中を探索し、安全を確認しているので特に危険はありません」


へー、古代遺跡ね...。昔のほうが凄い技術を持っているってのは、こういう世界だとまあ良くあることなのだろう。アーティファクトとかあるのかな・・・まあ、期待は出来ないな。そんなものがあっても、騎士団が回収しちゃってるだろうし。


「5日後の休日に出発しますので、準備を終わらせておいてください。1ヶ月近くかかる長い実習なので、忘れ物などにはよく注意してくださいね」


移動に1週間、調査に2週間で1ヶ月か・・・危険はないみたいだし、気楽な実習になりそうだな。



「リュカたちは、歴史の授業を取ってないんだっけ。そんじゃ、今回の実習は俺だけかー」

「頑張ってね!まあ、遺跡の調査で頑張ることなんて、あまりないか」

「遺跡の調査って、何をするんでありますか?」

「まずは中になにがあるのかを調べて、さらに詳しく調査していくんだよ。俺たちは実際に調査する、専門家たちの仕事を見させてもらうんだよ」

「ツチオさんって、そういう専門家になりたいんですか?」

「そういうわけじゃないけど・・・古代の魔導技術ってのには、ちょっと興味があるな」


今は廃れ気味の符術だけど、昔もそうだったのか。もしそうだったとしても、今よりは発達しているだろう。そこんとこ、気になります。


「すごく発達してたみたいだしね・・・稀に魔術具が見つかったりするんだけど、今のより全然効果が高いんだって」

「やっぱりそういうのがあるんだなー・・・そういうのって、見つけた人の物?」

「そうだと思いますよ、誰かの持ち物じゃなければ」

「それなら聞いたことがあるであります!古代の魔術具を見つけて、億万長者になった話!高いお酒をお腹いっぱい飲めるんでありますよ!」

「ドワーフらしいな...」


億万長者になって、高い酒を飲むとか・・・俺だったら、家を建ててルウたちと自堕落な生活を送る。あー、でもそうしたら絶対肉欲に溺れるなー。やっぱり、ここは無難に貯金かな。もしルウたちに何かあったときに、必要になるかもしれないしね。


「まあ、そう簡単に見つからないだろうな。遺跡ってのはどんなものか、見てくるくらいだろう」

「怪我しないよう気をつけてねー」


さて、さっさと準備を終わらせときますか。まあ、影さんがいるから荷物をまとめる必要もない、何を持っていくか決めるだけだね。

しっかし・・・ユクリシスさんから、まったく連絡がない。和平を結んだから、反乱は成功したってことなんだろうけど...。知らせがないのが元気な印とは言うけど、やっぱり心配だ。俺のことなんか忘れてるのかもしれないけど・・・まあ、怪我しているよりは全然マシか。こっちからも連絡は出来るらしいけど・・・もう少し待ってみるか。反乱後で忙しいところを邪魔したくない。そうだな、春になっても連絡がなかったら、こっちから連絡してみるかね。






 俺たちが行く遺跡というのは、王国南西部の森林の中にあった。学院からも割と近い、1週間で行ける所だしな。

その遺跡は新しく見つかったものらしく、まだ騎士団によって中の敵を掃討しただけで、今回の調査隊が始めてだそうだ。


「そういうわけで、今日はこの遺跡の調査を行います。学院生さんたちは、決められた班に入ってください」


この調査隊の隊長が、俺たちにそう伝える。その後ろには、蔦で覆われた大きな建築物が。この世界の建物は平屋が多いのだが、この遺跡は3階建て。どうやら、建築技術も昔のほうが発達していたようだ。


この遺跡を見つけたのは冒険者らしい。この森で狩りをしていた時、今までなかった道らしきものを発見。それに沿って進んだところ、この遺跡へとたどり着いたのだと。中にも入ったみたいだが、強力かつおかしな魔獣に襲われ、命からがら逃げ出したらしい。その知らせを受けた騎士団が、この遺跡を探索。中にいた魔獣を倒しつつ、3階建てであったことを確認した。そのおかしな魔獣ってのがどういうのか気になったが、調査隊の人たちも詳しくは聞いていないらしく、どういった魔獣なのかは分からなかった。まあ、もう全滅しちゃったらしいし、聞いてもしょうがないな。1体くらい、残しといてくれればよかったのに...。命には代えられないけどさ。


俺が入った班は、1階の調査を任されていた。調査員さんたちの後に続いて、俺たち生徒も遺跡へと入っていく。


遺跡の入り口は広く、リンでも入れるほどの大きさ。班長さんに無理を言って、リンも一緒に中に入る。

入り口から見た遺跡は、どことなく病院のようだった。ロビーのようになっており、奥には崩れたカウンターのようなものが。壁はひび割れ、そとから蔦が入り込んでいるところもある。明かりもないので薄暗くほこりっぽい、こりゃ遺跡というより廃墟だな。


他班の人たちと別れて、遺跡の中に入っていく。いくつか廊下がロビーから伸びているので、何組かに分かれて行動することになった。



最初に見つけて入った部屋は、何やら多くの棚がある部屋だった。多分、資料とかをまとめておく部屋だったのだろう。ほとんどの棚は空っぽだったのだが、何枚かよく分からない文字の書かれた紙を見つけた。


「これは古代語です、遺跡に残っている文献のほとんどが、この文字なんですよ。大分研究も進んでいるので、結構読めるようにはなってるんです」

「へー・・・こういうのを探せばいいんですか?」

「はい。初めての調査は、まずこういう古代について直接分かるものを集めます。さらに詳しい建物自体の調査は、次の調査で行われるんです」


なるほど、まずは古代の遺産を探すのか。しっかし、よくこんな紙が古代から残ったよなー。さすがに腐っちゃうと思うんだけど・・・もしかしたら、建物に何かしらの魔術がかかっているのかも...。結界とかがあったのかもしれないしね。


いくつかの部屋を回って、部屋にあった物を回収していく。さすがに机や棚やらは持っていけないけど、小物くらいなら持っていってしまう。

中には何にもない部屋もあり、そんな部屋はほぼスルーされている。まあ、そういう部屋を調べるのは次の調査隊の仕事なんだろうね。


俺たちが今調べている部屋には、大きな棚や事務机があって重役の部屋らしく、何か重要な資料でもありそうだなと期待してたのだけど...。棚には何にもなく机も空っぽ、肩透かしもいいところだね。


「この部屋には何にもないみたいですね...。次に移りましょうか」


調査員さんや生徒たちが部屋を出て行く。扉の執務机を見ていた俺も、壁に手をついて立ち上がった。


「あれ、ツチオどうしたの?立ち上がったまま、壁に手を当てて固まっちゃって」

「・・・この壁、魔力が通ってる」

「・・・?」ぷるぷる?

「多分、何かしらの仕掛けがあるんだと思う。何か形を描いてるな・・・これは、魔法陣か」


両手で壁全体をベタベタ触ってみたところ、何やら陣的なものになっているのが分かる。大きな円の中に小さな円があるな・・・とりあえず、真ん中を触ってみるか。


魔法陣の真ん中に触れてみるが、壁はうんともすんとも言わない。ただ触るだけじゃだめか、調査員の人も触ってたしな。うーん・・・魔力を込めてみっか。


魔力を込めた手で触れると、今までまっさらだった壁に魔法陣が浮かぶ。そして、壁がするっと消えた。おお、やっぱり隠し部屋があったか!その中には、魔法陣の上に鉄の檻が鎮座している。引き扉がついているが、今は開いているな。


「これは・・・何だ?」

「分からないの?」

「あれは鉄の檻だと思うけど、こんな風に隠されてるんだからただの檻じゃないだろう。その下の魔法陣も気になるな...」

「ブルル」

「そうなんだけど・・・中に罠とかないかな?ほら、泥棒とかをはめるための罠だったりして」


俺がそういうと、影さんが1人で部屋へと入り、床や壁や檻を触って調べだす。しばらくして、特に罠等はないことが確認された。いやー、影さん有能だね。実体はないらしいから、罠を気にせず調査できるわ。


「大丈夫みたいだし、あの檻を調べてみるかな」

「・・・?」ぷるぷる?

「ああー、そうだな。調査員さんに伝えなきゃいけないか・・・まあ、確認してからでも遅くないだろ。罠はないんだし」

「それもそうか。それじゃ、入ってみようよ!」


ルウが部屋の中に入っていき、ライムとリンも後に続く。そんじゃ、俺も見に行きましょうかね。


俺が隠し部屋の中に入ると、入り口の壁が元通りになり部屋は暗闇に包まれる。・・・やっちまった!


「え、嘘!?何、罠!?」

「・・・違うだろうな。多分、元からそういう仕組みなんだろう。中から壁を開く魔法陣はないのか」


とりあえず、手探りで部屋の中を調べてみようと思っていたら、部屋の四隅に設置された台座に明かりが灯る。残った壁や床と天井も一通り調べてみるが、魔術的な仕掛けは特に見つからない。


「そんじゃ、最後にこの檻を調べてみっか。これで出られなかったら・・・壁をぶち抜くしかないな。建物が倒壊するかもしれないし、出来ればやりたくないんだけどね...」

「この檻、何なんだろうね?やっぱ、何かを閉じ込めとくためのものかな」

「・・・」ぷるぷる

「入ってみるって・・・危ないよ。閉じ込められるかもしれないし。・・・これ、やっぱり魔術具だな。影さん、罠ではないんだよね?そんなら、俺とルウが入ってみるよ。いざとなったら、ルウに内側から壊してもらう。ライム、リン、もし出れなかったら壁を破って調査員さんを呼んできてくれ」

「それなら、私だけでいいんじゃない?」

「俺がいたほうが、ルウの火力は上がるだろ?1人だけ、危ない目に会わせたくないしな」

「そんなの気にしないでいいのに・・・私が危ない目に会ってツチオが安全なら、喜んで危ない目に会うよ!」

「それは俺が嫌なの。・・・あ、この魔法陣。壁に描いてあったのと同じだ」

「ブル、ブルルル?」

「そうだな...。そうしたら、この檻落ちちゃいそうだけど」


とりあえず、俺とルウだけで中に入ってみる。特に何も起こらない、勝手に扉が閉まるわけでもないし。どうやら、閉じ込めるための魔術具ではないみたいだ。

ライムやリンにも入って来てもらう。リンが入っても尚まだスペースがあるほど、この檻は広い。どうやって使うんだろうな、とりあえず扉を閉めてみるか...。閉めたら二度と開かないなんてこと、ないよね?一応、中からも調べてみるか。


檻の床を調べてみると、床を通り抜けて下に魔力が通じているのを魔手で感じ取る。こりゃ、あれか?エレベーターなのか?何か洋画で、こういう檻みたいなエレベーターを見たことはあるけど...。地下室があるってことだな。エレベーターなら、扉を閉めたら降りるのかね。


「こうしててもしょうがない。とりあえず、扉を閉めてみよう。外に出れるかもしれないものは、これだけなんだしね」

「無理矢理出る以外はね」

「それは最終手段、遺跡を壊すのはあまりよろしくないだろうしね」


長年放置していたはずなのに、そこまで錆びていない鉄の扉を引いて閉める。ガシャンと扉が閉まると、下の魔法陣が光り床に穴が開いた。そして、檻がゆっくりとその穴へと降下を始める。やっぱりエレベーターか・・・地下にはいったい何があるんだか。見た限りでは地下への入り口はなかったし、恐らく隠しておきたい場所なのだろう。魔導技術が発達していた古代文明、いったい何が眠っているんだろう。危険なものじゃないといいけど。


あれですよ、アメリカとかにあるエレベーターです。よく映画とかに出てきますよね。

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