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オスニールさんと相談

ツチオがお兄さんと戦うとか、クーデターに参加するとか、そういう展開じゃないですよ!もう戦争なんてこりごりですよ!

 ユクリシスさんが、俺にしたのと同じようなことをオスニールさんにも説明している。その間、俺は一緒に待っているアラックさんにも、大まかな事情を話しておく。


「はー・・・魔獣にも国があったんですね」

「魔獣じゃなくて、魔物みたいですけどね」

「そうなんですか。しかし、全然魔人なんかには見えませんね、彼女。パッと見るかぎりじゃ、エルフにしか見えませんよ」

「ですよねー。とりあえず他言無用で」

「分かってますよ。王都に魔人が潜入なんて、前代未聞の不祥事ですから」

「あれじゃ分かりませんよ・・・平民街になら、身分証がなくても特に怪しい所がなければ、お金を払えば入れますし」

「そう言っていただけると、気が楽になります...。それにしても、反乱なんて成功するんでしょうか?」

「ユクリシスさんには、勝算があるみたいですけど...。まあ、それはオスニールさんが判断してくれるでしょう。そういうことが、専門ですし」

「そうですね。・・・ツチオさんは、どうするんです?」

「どうするというと?」

「もし彼女の反乱に合わせて攻めるのなら、ツチオさんもその作戦に参加するのかなーと。まあ、学生さんですから参加しないですよね」

「そうですね・・・前回は運良く片腕を折っただけで済みましたけど、次はどうなるか分かったもんじゃないですから。呼ばれない限り、自分から参加する気はないですよ」

「それが良いですよ、学生は学生らしく勉学に励んでください。戦争は、我々騎士団にお任せください」

「第2騎士団は王都の防衛に集中してくださいねー?」

「わ、分かってますよ!」


そんなことを話していると、オスニールさんに呼ばれる。机の上には、どこから取り出したのか地図が置かれていた。


「この地図、どこのですか?」

「この大陸の北方、帝国軍が占領している部分ですわ。ちゃんと測量もしているんですのよ」

「かなり詳しいな、この地図。王国に残ってる北方の資料は、どれも古くて使い物にならないんだよ。これなら地形もしっかり記載されてるから、わざわざ偵察を出す必要もない」

「こちらに、現時点での帝国軍の編成をまとめておきましたわ。こちらの字ですので、読めるはずですけど...」


影の中から、紐で結った書類を出すユクリシスさん。こっちの字って・・・どうやって勉強したんだ?


「何のことはありませんわよ、翻訳魔術で訳しただけですわ」

「え、でも翻訳魔術って読ませる相手を決めておかないと駄目だんじゃ...」

「ギルドに出した紙、あれを出す時に受付嬢を指定したんですの。多分、あれがこの国の文字だと思うんですが...」

「ああ、それなら大丈夫ですよ。俺も読めましたし」

「なら、大丈夫ですわね」


ユクリシスさんから受け取った書類の中を、流し読んでいくオスニールさん。


「これは何時の情報だ?」

「大体、2週間ほど前ですわね。増援とか重要な事項があれば、長距離連絡用の魔術具で伝えてくれると思いますの」

「ふむ・・・こんだけ資料がありゃ、何とか騎士団を動かせるな。まあ、そのためには向こうの帝国と嬢ちゃんの反乱について、多少触れる必要があるんだが...。それは、俺らが何とかすりゃいい話だな」

「お願いしますわ。出来れば、こちらが落ち着くまで黙っていておいていただけると助かりますの」

「まあ、そっちが成功しなけりゃ意味がない。聞いた限りじゃ、計画通りいけば何とかなりそうだが...」

「本当ですか?」

「ああ。根回しもしっかりしてるし、かなりの状況を想定している。まあ、想定外の自体というのは起こるものだけど、連絡手段も用意しているから問題ないだろう。問題は相手のほうだが・・・嬢ちゃんのほうには、失敗する理由は見当たらないな」


問題は相手か。どんだけの戦力を有しているんだか...。


「相手の戦力というのは、把握しているんですか?」

「勿論ですわ。下士官や一兵卒たちは、ほとんどを味方に引きこめましたの。敵は、部隊長や騎士団長、帝王直属の近衛部隊ですわね」

「冒険者とか傭兵は雇ってないんです?」

「金を積まれたら寝返りそうなので、特に雇っていませんわね」

「そっすか・・・一兵卒とかは大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですわよ、私直々に確認しておきましたもの。それに、ほぼ全員が私の味方の中で、裏切ろうとなんて思うことも出来ませんわ」


お互いに監視し合ってるってことか・・・ストレスが溜まりそうだなー。


「いつ頃実行する予定なんだ?」

「帝国に戻ったら、すぐに実行に移しますわ。ですので、そちらも出来るだけ素早く動いてほしいんですけども...」

「分かった、今日中にでも上に通して動かせる騎士団を集めとこう。だけど、どうしても数週間はかかるぞ」

「了解しましたわ。その間に、こちらでも準備を進めておきましょう。ツチオ」


ユクリシスさんが、ペンのようなものを渡してくる。これは・・・長距離連絡用の魔術具?表面には何やら幾何学的な模様が刻まれている。


「よく分かりましたわね、見たことでもあって?」

「え、ええ。機会があって、少し」


見たと言うより、今も持っているんだけどね。精霊さんの枝と似たような感じだし。こういうデザインが流行りなのかな。


「距離によって使用魔力が変わるのですが・・・ここと帝国間だと、半月に1回くらいですわね。そちらからも連絡は取れますが、基本はこちらからしますわ。準備が出来たら連絡するので、大臣に知らせてくださらない?」

「いや、そんならこの魔術具をオスニールさんに渡せばいいじゃないですか」

「私、助力は願いましたけれど、まだまだこの方のことは信用していませんの」

「奇遇だな、俺もだ。地図と敵軍の情報が正しいと分かるまで、その反乱とやらも眉唾だな」

「えっと、俺のことは信用出来るんですか?」

「だって、ツチオは私を騙す理由がないでしょう?」


・・・まあ、こうやって知り合った人をわざわざ嵌める真似はしないけどさ...。この国が落とされるのは困るけど、別にザクリオン帝国に恨みがあるわけじゃないし。ユクリシスさんのことも、個人的に見たら好きだしね。


「それと。もし帝国兵が降伏したなら、ちゃんと捕虜として扱ってほしいのですのよ。降伏しているのに殺すなんて、もってのほかですわよ。戦争の常として、死者が出てしまうのは仕方ないにしても...。生かせる命は生かしてほしいのですわ」

「・・・分かった、徹底させよう。だが、それはそちらも同じだぞ」

「もちろんですわ」

「よし。ツチオ、今は夏季休暇中だったな。色々予定はあるところ悪いが、しばらくは王都に留まってくれ。連絡があった時に、すぐに軍を動かしたい。途中で北の要塞に移るかもしれないがな」

「いいですよ、どうせしばらくは王都に滞在する予定でしたし。あ、王都の周りくらいになら出てもいいですよね」

「すぐに戻ってこれる範囲でなら、構わないぞ。まあ、休暇が終わったら学院に戻らなきゃいけないんだがな...。そん時は、校長に連絡してもらうか」

「いつ連絡するか分からないので、肌身離さず持っていてくださいね」


さて、ユクリシスさんから連絡役を仰せつかったわけだが・・・3日の予定だった滞在が少し長引きそうだな。図書館以外に、他に行く場所ってあるかね。うーん、まあ空いてる時間は影さん育成に精を出すか。北方に行けば、ルウたちも経験を積めるかんな。



とりあえず、これでユクリシスさんが伝えたいことは全て伝えられたようで、今日のうちにザクリオン帝国へと帰るらしい。行きは魔術で色々誤魔化したそうだが、帰りは転移魔術で帰るそうだ。今度来るときからは、こっちに来るのも転移魔術で来るらしい。便利だなー、転移魔術。使用魔力が多すぎて、俺じゃあ使えないよ。リンとか影さんなら、使えるようになるかもな。


「気をつけてくださいね、ユクリシスさん。下手を打って処刑なんてこと、絶対に嫌ですからね」

「分かってますわよ、安心なさい。これでも200年以上、権謀術数渦巻く世界で生きてきたんですのよ。第1王子として安穏と生きてきた兄上なんかに、負けはしませんわ!」

「でも、好戦的なんですよね。強いんですか?」

「まあ、王族ですから魔力も多いですし、武術もある程度修めていて戦い慣れていますもの。そこそこ強いですわ。ですが、それは私も同じ。負けているつもりはありませんわよ」

「なら、いいんですけど...。それじゃ、お気をつけて」

「ええ、ツチオも。追って連絡いたしますわ。短い付き合いでしたけど、色々助かりました。ツチオがいなければ、軍部大臣に会うことなど出来ませんでした。この恩はザクリオン帝国第1王女の名にかけて、必ずお返しいたします」

「そんなら、反乱を成功させて、今度は帝国を案内してください。戦争が終われば、そっちの大陸にも行けるようになるでしょう?」

「そうですわね、その時は私が案内させていただきます。それでは」


そう言って、ユクリシスさんを黒い靄が包み、そのまま空の彼方へと飛んでいった。転移魔術って、傍から見たらあんな感じなんだ...。


「あの人、本当に反乱なんて起こすのかな...?」

「どうだろうな・・・国や人のことを考えての行動みたいだし、死なないでほしいよ」

「・・・?」ぷるぷる?

「そうだな・・・とりあえず、前行けなかった王立図書館に行こっかな。学院にはない本とか、色々あるだろうし」


魔術書とかは、こっちのほうが種類が多いそうだしね。


「・・・ブル」

「・・・図書館行ったら、昼ごはんを食べてからちょっと出かけようか。そうだな、王都の近くに森があったはず。あそこまで行って、影さんを育てよう」


ライムもだけど、それ以上にリンを人化させてやらないと。いつまでも1人ぼっちで、このままじゃ可哀想だし。北方に行ければ、もっと強い魔獣と戦えるからな。






王立図書館は、ギルドとは反対側の南側にある。第2の壁際にあり、住宅街に隣接しているので平民も良く利用するそうだ。入館料がかかるとはいえ、王都一般家庭の収入からしたら払えないものでもない。


リンを馬舎に繋ぎ、受付で入館料を支払い、図書館の中へと入る。中央には長机が並べられており、学院や日本のものと大して変わらないな。まあ、大切なのは本だよ本。どんな本が入っているかが大切なんだよな。


「さてと・・・とりあえず、魔術書を探すかな。ルウ、ライム、自由にしてていいぞ」

「分かった!」

「こく」


散り散りになって本棚の間に入っていくルウたち。あんなに張り切って、何を探すんだろうね。俺も本を探すか。


どうやらある程度分類されているようで、魔術書は魔術書の棚が置いてあった。支援魔術は・・・お、あった。あったけど、これは学院にもあるなー。うーん・・・お、これは見たことないやつだな。読んでみようか。



しばらく本を出しては棚にしまい、出しては棚にしまいを繰り返す。読んだことのない本は結構あったんだけど、あまり興味を引かれるものはなかったな。それ以前に、支援魔術の本って少ないんだよ。攻撃や回復魔術の本ばっかりだ。まったく、ちゃんと支援魔術も研究してほしいもんだね。


昼ごはんも食べたいので、今日の所はこんくらいかな。影さんの育成もしたいし。ルウたちを探して、迎えに行かないと。どこらへんにいるのかな?


やはりルウの赤は目立つ、すぐに棚の中から見つけることが出来た。なんか桃色の表紙の本を、食い入るように凝視しているぞ。顔もほのかに赤いし。あそこは・・・枕絵!?


「こ、こんなこともやるんだ...!うわ!?そ、そこって、別の穴...。それに、こ、こんなに乱れて...」

「る、ルウ...!?」

「え?つ、ツチオ!?」


ババババッっと手元を動かして、何を読んでいたのか誤魔化そうとするルウ。・・・汚れっちまったな、ルウ。


「え、えっと、ここにはさっき来たばかりで...!別にここにある本は読んでなくてね!」

「うん、分かってるよ。分かってるからね」

「そ、それならいいんだけど。・・・ねえ、ツチオ」


まだほんのりと赤い顔のまま、ルウが俺に尋ねてくる。


「その・・・ツチオも別の穴、使ってみたい?」

「・・・ルウ、その本のことは忘れろ、いいな?」

「え?」

「いいな?」

「わ、分かりました」


まったく・・・何て本が置いてあるんだ!こんなところにあったら、まだ成長途中の子どもに悪影響を与えるぞ!まったくもう!ちょっと使ってみたいかもって思ってしまった自分に腹が立つ!


「ったく・・・ライムはどこにいるんだ?」

「あ、さっき向こうにある棚で見たよ。何だっけ・・・その他とか、そういう色んな本がまとまっている所にいたかな」

「ん、そう?じゃ、迎えに行こうか」


ルウの見たとおり、ライムは色んな本が突っ込まれている棚の前で本を読んでいた。ここなら教育に悪そうな本はなさそうだな。


「ライム、そろそろお昼ごはんにしようか」

「こく」


読んでいた本を棚に戻そうとするライム。むう、こっちからじゃ題名は分からないな。


「何を読んでたんだ?」

「・・・」ぷるぷる


本を俺に見せてくるライム。えー何々、「プリシラ流性技入門編」?何これ、四十八手?中身は・・・うん、四十八手だね!


「ら、ライム・・・こんな本を読んでたのか?」

「こくこく」

「そ、そうか。面白い?」

「こく」


タメになるって・・・何のタメになるんですか!ライムは何を学びたいんだよ!


「はあ・・・行こうか」


ライム、人化させちゃって大丈夫なのかな。性技とか、搾り取られちゃうじゃん。俺が全力で頑張らないと、ルウだって満足してくれないし。・・・俺も読もうかな、プリシラ流性技入門。男用のもあればいいけど。


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