ガールズトーク?
ルウ・ライム・リンの会話を読みたいと感想をいただいたため、ちょっと書いてみました。量が少なくてすいません。
ツチオたちが寝静まった夜遅く、少し離れたところで蠢くいくつかの影。ルウたちツチオの従魔一行だ。夜中の見張りは彼女らとガルムが交代して行っており、今日はガルムたちの番。敵が来たときだけ、影から出て撃退するのだ。まあ、気配をバンバン出しているのでほとんど魔獣は寄ってこないのだが。
『よかったねー、リンちゃん。お父様と一緒に走れて。自分だけずっとお父様に見てもらえたものねー』
「まあ、ずっと騎獣舎にいたからしょうがないとしても...。まさか、夕方まで放っておかれるとは思ってもみなかったな」
『リンちゃん、お父様を置いて1人で逃げ出してたわね。ふふふ、お父様の分も合わせて、今怒っちゃうわよ?』
『しょ、しょうがないでしょ!あんな怖いライム、初めて見たんだから!ルウさんも目が笑ってないし!戦略的撤退よ!』
何故ルウたちがこんな夜中に話しているのか、まあツチオに聞かれたくない話をするためだ。いわゆるガールズトークである。ツチオは魔物の言葉が分かるわけではないが、何が言いたいのかくらいは分かるからだ。『』内の言葉は、ライムとリンの言葉を人語に訳したものである。実際には体が震えたり、ブルルル言っている。
『そ、それに走ったのは別にツチオと2人っきりになりたかったわけじゃなくて、ずっと騎獣舎にいて体が固まってただけだし!』
「そうだねー」
『そうですねー』
生暖かい視線でリンを見るルウたち。素直じゃないリンは今になって始まったことじゃない、というか出会った頃からこんなものだ。むしろ、大分柔らかくなっているだろう。
『な、何よその好きな子をいじめる男の子を見るような目は...』
「的を得た表現じゃない」
『これがお父様の言う、つんでれというものですか...。いつもはつんつんしているけど、たまにでれでれ甘えてくるという』
『私がいつ甘えたって言うのよ!』
『わざわざご飯をお父様に直接食べさせてもらうのは、甘えていることにはならないのかしら?』
『ど、どうしてそれを...。ライム、あの時はいなかったじゃない!』
『これが乙女の必須技能の1つ、かまかけよー。ちゃんととぼけないと』
『だ、騙したの!?』
『いいえ、騙してはいないわよ。私はずっとお父様を見ているのよ』
体の一部を切り離すライム。それを見たリンは、顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
「ライム・・・監視は駄目。ツチオにだって、見られたくないことがあるだろうし」
『お姉様との情事とか?』
ルウとライムの間に緊張が走る。リンは巻き添えを恐れて、2人から少し距離を取る。一瞬触発かと思われたその時、1つの影が2人の間を横切った。影さんだ。
「どうしたの?・・・ツチオが起きるから、戦うのは止めろ?」
『もう夜遅くですものね。またの機会にしましょうか』
「そうね、明日も長い距離進むんだし」
空気が一気に弛緩する。リンは大きくため息を吐き、影さんはスルスルとツチオの影へと戻る。
『まったく・・・喧嘩しないでよ』
「別に喧嘩じゃないよ。ちょっとしたじゃれ合いみたいな感じ」
『喧嘩するほど仲がいいって言うでしょう?私は、お父様が悲しむことはしませんよ』
「そうそう、私の幸せが第一だしねー」
『そりゃそうだけど...。はあ、もう寝るね』
「おやすみ、リン」
『おやすみなさい』
そうして、夜は更けていく。