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リンと一緒に

とりあえず、2日おきに投稿することにします。余裕ができれば、また毎日更新に戻すかもしれません。

蛇の背中を滑り降り、符を回収してから騎士団長たちの後を追う。魔力はまだまだあるけど余裕はない、蛇を使うのは控えよう。さすがに、これ以上出したり引っ込めたりはしたくないしな。


要塞内には多くの建物が建っている。どうやら、中はちょっとした町になっているようだ。兵士の家族もこの要塞内に住んでいるらしく、南側には住宅街になっているな。俺たちは、南東の端から侵入し、誘導部隊が攻めている南側の門へと向かっている。


付近には人の気配はない。魔獣が攻めてきた時に逃げ出したのだろう。だが、家には生活の後がのこっているぞ。魔獣たちがそこで寝泊りしてるのかもな。


「ほとんど魔獣がいないですね・・・南門に集まってるんでしょうか?」

「だろうな。援軍が来ているかどうか分からねぇが、多分来てないんだろうな」

「根拠は?」

「勘だ。まあ、俺たちもすぐに追ったし、来ていなくても不思議じゃねぇだろ」

「援軍が来る前に、奪取したいところっすね...。どのくらいで来るっすか?」

「そんなん知らねぇよ。そのうち来るだろうがな」


家に身を隠しながら、南門へと急ぐ。しばらく進んだところで、大きなざわめきが聞こえてきた。何を言っているか分からない、魔獣たちだな。


「おっし、全員止まれ。誰か、偵察に向かってくれ」

「それでは、私の部下に行かせましょう。魔術で隠蔽すれば見つからないでしょうし、森の狩人は気配を絶つのも上手いです」

「うっし、んじゃ任せた。それ以外の奴らは、装備を確認しておけ。すぐに戦闘に移るかもしれん」


エルフの騎士たちが隠蔽魔術を使うと、気配が一気に薄くなりどこにいるのかも分からなくなってしまった。俺のとは大違いだな・・・やっぱ本職は違う。


俺にはわからないが、エルフたちはすでに斥候に向かったのだろう。さて、俺は援護をするよう頼まれたのだが...。支援魔術は黒髪女勇者がかけるだろうし、遠くから符を投げてようかね。


「皆にも戦闘に参加してもらう。この後のことも考えて、魔力運用してくれよ」

「了解、ミカドは?」

「そうだな・・・リンに乗って援護してるよ。ルウとライムは前に出て、門の前を開けてくれ。開けるのは、ドワーフたちがやってくれるから」

「露払いだね」

「こく」

「ん、任せたぞ」


そのままリンにまたがり、魔力を共有。いつも通り、俺が細かい制御を担当する。


「いつも悪いな、リン」

「ブル?」

「いや、だってリンも前で戦いだろう?俺が乗ってるせいで、肉弾戦が出来ないんだし...」


いつもは魔術の援護を担当しているリンだが、本当は近接戦闘もちゃんと出来る万能っ娘なのだ。電気を帯びた蹴りは敵の体を砕くし、突進の貫徹力は目を見張るものがある。俺の役目は、従魔の能力を最大限に活かすことなのに...。


「・・・ブルルル」


弱っちいんだから、黙って後ろで守られてなさいか...。ルウやライムと違って、リンは駄目な所を駄目とハッキリ言ってくれる。俺ばっかりが、後ろで引っ込んじゃいられんな。


「・・・よっし、俺も腹を括るか。リン、突撃するぞ」

「ブル!?」

「大丈夫だ、リンに近づかせなければいいだけ。それに、もし近づかれてもリンの脚なら逃げられるだろ?」

「・・・ブル、ブルルラァ!ブルルルゥ!」

「おいおい、別に焼けっぱちになったわけじゃねぇぞ。・・・まあ、ぶっつけ本番になるけど」


イメージはちゃんと出来ているから、何とかなるだろう。見たこともある、アニメでだけど。


「ただいま戻りました」

「早かったですね。どうなっていましたか?」

「壁の上で多数の魔獣が、弓や魔術などで迎え撃っています。門前にも多くの魔獣が集まりつつあるので、早急に倒すべきです」

「そんじゃ、さっさと倒すとするか。そろそろ陽動を楽にしてやんないとな!おい勇者、ちゃんと勇者らしく戦えよ!」

「分かってます!これ以上、死人を出すわけにはいきません!」


魔獣も生き物なんだけどな・・・まあ、そうなるよう仕向けたのは俺達なんだが...。それに、こいつらはちょっと特殊みたいだしな。色々、確かめないといけないことがあるし、他人に任せられるものでもない。自分でやんないとなー。


「俺たち帝国・洞窟国・王国騎士と勇者たちは正面から。妖精領近衛は、建物屋上から魔術攻撃を中心に攻めてくれ。ミカドたちは...」

「壁上の敵を潰します。こいつらは飛べるんで、上がるのはそこまで手間じゃないですから」

「よし、頼んだぞ。下の奴らを倒して門を開けたら、すぐに増援に向かう」

「その前に、全員倒してしまいますよ。よっし、行くか」

「俺達も行くぞ!」






ライムはルウの背中に乗り、一気に壁を上る。突然下から飛び出してきた俺たちに、そこで陽動部隊を迎え撃っていた魔獣たちが、一斉にこちらを見る。俺達が着地するころには、すでに武器を構えている。対応が早い、やっぱり普通の魔獣とは思えないな...。いるのはどいつも人型、獣型の魔獣はいない。帰ったか、まだ南門に来てないか...。前者であることを祈ろう。


俺たちが降りたのは、ちょうど南門の真上辺り。なので、前後の魔獣に囲まれる形となる。狙ってやったんだ、本当だぞ。

比較的近くにいたゴブリンが、すぐさまそばにいるルウへと襲い掛かる。腹へと剣を振るうが、ルウの腕に弾かれもう片腕で逆に腹を殴り飛ばされる。


「・・・かかってこい」


その一言がきっかけとなった。囲いの最前列にいた魔獣たちが、同時に俺たちを襲う。ルウたちは前の敵、俺とリンで後ろの敵を倒さねば。


「ブルル!?」

「任せてろって!」


リンが雷の矢を乱射するのと同時に、俺も魔術を発動する。リンの魔力を使うが、制御は全て俺担当だ。


バチバチ弾ける正八面体が空中に4個現れ、リンの周りに回りながら浮かぶ。スフィアビット、雷の矢を放つ牽制用の魔術だ。接近された時は、敵に衝突させて自爆させる。数は少ないので、リンの魔力と同時に制御することが出来る。


そのまま、リンは振り返り、魔術を撒き散らしながら敵の中へと突っ込む。角には魔力が集中し青白く輝き、体にまで広がった稲妻模様が光を残しながら、一気に囲いを突破する俺とリン。リンの進路にいた魔獣たちは貫かれながら吹き飛び、掠った奴らでも体が抉れている。範囲が狭くなった代わりに、貫徹力に磨きがかかったな。直撃した奴なんか、上下が泣き分かれているぞ。

そこへさらに追撃、火蜂を繰り出し追い打ちをかける。それでも、魔獣たちを倒すことは出来ない。数は減るどころか、他所から援軍に来た魔獣のせいで増えている。一旦は囲いが崩れたものの、すぐに再構築されてしまいそうだ。


「リン、囲まれたら厄介だ。動き回って、撹乱するぞ!」

「ブル!」


息つくまもなく、再び魔獣の中に突っ込むリン。さっきぶち抜いて、まだ囲みが甘い所を突破。通りがかりざまに切りかかってくる猛者もいるが、ビットを盾にして防ぐ。どうやら脚力と簡単な強化魔術、それと俺の魔手だけでここまでの突進を繰り出しているようだ。テイムしたての頃とは、大違いだな。


下のほうでは、ようやくドワーフたちが門の開閉装置へとたどり着いたみたいだ。勇者たちの戦いは中々のものだが、レギットさんはもっとすごい。獣人特有の高い身体能力を活かし、巨斧をぶん回しながら縦横無尽に駆け回っている。まさに叩き斬るというのが相応しい。よくあんな武器をもって、あそこまで速く動けるな...。

ジャミールさんたちは魔術で攻撃している。壁上の敵は俺達が引き受けているので、彼らは攻撃に集中出来るのだろう。火球が放たれると大きな火柱が上がり、何本もの太い岩槍がものすごい速度で放たれていく。うーん、やっぱり魔術じゃエルフの右に出るものはいないな。人間じゃ、あそこまで速く魔術を放てない。


ゆっくりと上がりだす南門、ドワーフたちの膂力によって、かなり重そうな門が着実に開いていく。ここを開けられるのはマズイと魔獣たちも分かってるのか、開閉装置へと殺到する魔獣たち。だが、それを許す騎士団長たちではなく。ついに、要塞の門が開いた。


一気になだれ込んでくる陽動部隊、そのままの勢いで魔獣たちへと襲い掛かる。壁上にいる魔獣たちに間にも動揺が広がり、動きが悪くなる。そこをリンがつき、怪我を負ったり数が減ったりして、さらに追い詰められるという悪循環に陥っているな。今のうちに、押し切ってしまおう!


「リン、こいつら全員吹っ飛ばせる技。この後も戦闘を継続できるくらいの魔力消費で、何かないか?」

「ブル」

「お、あんのか。俺が制御したほうがいいか」

「ブルルゥ」

「オーケー、任されたよ。リンは準備に集中しろ」


リンに言われたとおり、魔力を体の前面に集中させる。多くの魔力が狭い範囲に集まり、陽炎のように立ち上る。

そのままオーラのような魔力をまとったまま、リンは突進の構えを取る。・・・ああ、なるほどね。なんとなく、リンのしたい事が分かった。やっぱり、魔力共有は便利だな。魔力をオーラ状のまま保持しつつ、次の形をイメージ。いつでも変形、解放できるようにしておく。


そして、リンが敵のど真ん中へと突っ込んでいく。速度が最高潮に達した時、魔力は変形し解放される。ルウは大きな雷のオーラみたいな魔力をまとい、白い閃光となって壁上を駆け抜けた。まるで、強化外装だな。

魔力が収まり、強化外装もどきのオーラが霧散する。振り返ると、壁上には一直線の焦げ跡があり、その周りには丸焦げの魔獣だったモノが転がっていた。明らかに数が少ないが、多分吹き飛んじゃったんだろうな。かなりの勢いだったし。


「ツチオにリンー?あういう攻撃をするなら、先に私たちに言わなきゃ駄目!もし気づいてなかったら、私たちも巻き込まれてた!」

「こくこく!」

「あー・・・悪い。気をつける」

「ブル...」

「まったく・・・まあ、これで壁上の魔獣は一掃できた。増援も来たみたいだから、手伝いにいこう」

「そうだな。リン、大丈夫か?この後も戦えるって言ってたけど...」

「ブルルゥ!」

「うん、いい返事だ。ライムも平気か?怪我は?」

「ふるふる。・・・」ぷるぷる

「ライムも気をつけてな、この世は何が起こるか分からないんだから」


うっし、もう一頑張り、いってみようか!


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