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要塞奪還作戦、開始

翌日、作戦の概要が各員に伝えられた。少数精鋭による、内部からの切り崩し作戦。ほとんどの人は陽動に回るので、どこでどういった立ちまわりをするのか等、班ごとに細かく区分されている。まあ、俺らは侵入部隊だから関係ないけど。


北の要塞まで、戦場からは早くて1週間くらい。人数も多いので、もう少しかかるかもしれないな。朝食を手早く済まし、すぐにテントなどを畳んで俺達は出発した。魔物たちに、あまり時間を与えてはいけない。


そして、馬を走らせること9日。かなりの速度で進軍し、その日の昼前に要塞のある北方山岳地帯、要塞の一歩手前にまで到着した。

王国の北側の国境沿いには、山々が連なり大きな山脈を形成している。国境を越える方法は主に2つ、大きな谷間に設置されている関所を通るか、あえてそこを通らず山越えをするかだ。

大きな谷間、馬車や大型の魔獣が通れる位の広さの場所、そこには基本的に要塞が建てられており、常に国境を警備しているらしい。関所を通れば当然、金を取られたり犯罪者なら捕まったりするので、山越えをする人は後を絶たないならしいが...。国境沿いの山脈は大変険しく、魔獣も出るためほとんどはそこで死んでしまうそうだ。まさに天然の要害、そこそこ大きな国を築けたのもそれらの影響があるのかもしれない。


そんな要塞なのだが、パッと見では谷にそびえる巨大な壁である。上からみたら楕円形らしく、中央が前へと盛り上がっているな。あそこを落とすとか・・・魔物ってやっぱすごい。


壁には多くの穴や通路が作られていて、そこから矢や魔術を放ったり岩や熱した油をぶっかけるんだろうな。陽動部隊の人たちは大丈夫か?あくまで陽動、本命は門を開けてなんだから、あまりそこで消耗されても後々困るしね。


偵察に向かった人によると、魔獣たちが壁の上で警備しているそうだ。数はそこそこいるらしいが、応援が来た気配はないとのこと。攻めるなら迅速にだな。


騎士団長たちが話し合った結果、明朝まだ暗いうちに攻撃を仕掛けると決定された。完全な暗闇では、夜目が利く魔獣たちに利があるため、夜襲はかけないのだと。完全に日が昇ってしまうと、今度は侵入するのが難しくなるため、日の出の少し後くらいを狙うらしい。まあ、俺らは俺らでやることをやるだけだな。今のうちに、移動の疲れを癒しておこう。


「んんぅー・・・そこ、気持ちいいぃー」

「ルウも飛びっぱなしで、大分凝ってるな。出来るだけ解しとかないとね」


そういうわけで、俺は今、ルウの背中を揉んでいる。翼を動かすのに、背筋やら何やら色々と使うらしく、少し凝り気味だとルウがぼやいていたのだ。魔手と愛撫であら不思議、どんな人でも一流マッサージ師に早変わり!いや、練習も必要だけど。魔力を上手く誘導させるのには、少しの慣れも必要だし。


「はふぅー...」


ルウは俺に身を任せ、すっかりユルユルになっている。テント内で寝っ転び、ぐでーっと四肢を投げ出している。明日は作戦なのに、ずいぶんとリラックスしてるなー。緊張しすぎも良くないけど、弛緩しすぎも駄目なんだよな。適度なバランスが重要なのですよ。


「・・・てい」

「うっひゃあ!?」


魔力が集中している箇所を突っつくと、ルウが飛び上がり頬を染めて俺を睨む。気孔とか、そんな感じのところだ。他のところより敏感、特に強いところはピンポイントで触れられるとゾクゾクするらしい。耳とか首筋、背筋に足裏。まあ、俺はツボとして認識しているな。


「気を緩めすぎだぞー、少しはシャンとしなさい」

「・・・そういうのは帰ってからだって、ツチオが言ったのに」

「それとこれとは話が別、もう十分解れたろ?」

「そうだけど、気持ちいいんだもん」

「帰ったらいくらでもやってやるから。ほら、立った立った」


ルウが人化したその日の夜、生徒たちがいなくなったので、俺はテントを1つ借りて寝ていたのだが...。人型になったんだからと言って、ルウが一緒に寝始めたのだ。いや、それは別に構わないんだ。リュカ相手に鍛えた俺の理性は、例えルウであってもそうそう破ることは出来ない。問題は、そのままルウが夜這いを敢行してきたことだ。


いやー、あれは危なかった。上に重みを感じたから目を開けると、ルウの顔が間近に迫ってたんだもの。そん時の表情とあわせて・・・何というか。非常にそそられた。

まあ、死に掛けた直後で怪我を治してもらったばっかってこともあって、その時俺はとても疲れていて、一刻も早く寝たかった。そそられはしたが、夜戦に突入する力がなかったんだな。それに、今は作戦のことやら魔物のことやらで頭が一杯、そういうことをしている余裕もない。なので、学院に帰るまで控えることを、ルウと約束したんだ。彼女はヤりたがってたけど・・・気が向かない俺とヤるのは不本意らしく、渋々約束してくれた。まあ、帰ったら絶対にするって確約させられたけど・・・まあ、いいよな。俺だって男だし、そういうことには当然興味もある。ライムとリン?特に何もいわれてないよ、うん。ライムには軽く首を絞められて、リンには俺が乗っている時にロデオっただけ。うん、何も言われてない、うん。・・・リンはまだしも、ライムの魔力がヤバかったな。瘴気みたいに体にまとわりついてたよ...。






そして、明朝。俺達侵入部隊20人は陽動兼突入部隊と分かれて、要塞の端辺りに来ていた。俺とルウたち従魔、レギット団長とジャミール団長、勇者たちとその騎士一同、各騎士団から選出された騎士さんたち3人ずつ、これで20人だ。ムシスさんは陽動部隊を率いている、先生たちも皆向こうだ。まだ日は頭を覗かせたくらいで、辺りは薄暗い。さて、大見得切っといてやっぱ無理でしたー、なんて言えない。まあ、問題ないと思うけど...。


「よっし・・・とりあえず、気づかれていないようだな。陽動が攻め始めるまで待とう。上に生き物の反応は?」

「そこそこの数ありますね、正面が仕掛けたら少しは減るでしょうか?」

「どうだかな。全員いなくなるってのは・・・さすがに期待しすぎだな」

「そうですね。ミカドさん、本当にこの壁を登れるんですか?」

「うーん・・・まあ、問題ないでしょう」


いやー、10m級の建物とか久しぶりだなー。地球にはいっぱいあったけど、こっちには精霊さんの大樹くらいしか見たことない。業火さんも、10mはないし。


しばらく息を殺して草藪に隠れて待っていると、突如爆発音が響く。続いて聞こえてくる、大勢の声。予定通り、陽動を始めたみたいだな。出来るだけ派手に、だけどあまり消耗しないように。敵を引き続ければ、より侵入しやすく、早く門を開けることが出来る。


「見張りはどうしてる、動いたか?」

「・・・はい、動き出しました。残っているのは、3体ですね」

「っち、思ったより残ってんな。てっきり、いなくなってくれると思ったんだが...」

「魔獣っつっても、舐めちゃいけませんよ。もしかしたら、ちょっと特殊な奴らかもしれませんし」

「特殊って・・・どういうことですか?」

「後で教えますよ。それで、もう侵入するんですか?」

「・・・よし、行こう。ミカド、任せた」

「了解です。精霊よ、我が生の気を絶て、隠行」


隠蔽魔術をかけて、草薮を出る。魔力とか音など生き物が出す気配を消す支援魔術だが、俺じゃそこまで誤魔化せない。まあ、見張りは10mも上にいるんだ、さすがに気づかないだろ。まあ、気づかれたとしてもすぐに倒せば問題ないかな。ルウやリンなら、すぐに倒せるだろう。


地面に符を投げつけると、岩の蛇が4体立ち上がる。1体の頭に乗ると、蛇たちは静かに体を伸ばしていく。さすが蛇がモデルなだけある、まったく音がしないな。さて、どこまで伸びるかな...。


グングンと高度が上がっていき、あっという間に壁の直下に到達する。えっと、たしかここらへんだったよなー。・・・出来れば取り押さえたいな、色々気になるし。言葉が通じるとは思えないけどね...。


「ライム、ここからなら壁の上まで登れそうか?」

「・・・むすー」


む、まだ拗ねてるのか。移動中や休憩中なら別にいいけど、ここまで引きずられるとさすがに注意しないといけないな。


「ライムが人化したら、同じことをやるかもしれないんだぞ。このまま拗ね続けんなら、絶対にやらないぞ」

「・・・こく」


さすがに、作戦にまで私情を持ち込むライムではない。壁には大きな石のようなレンガが敷き詰められているので、ライムなら液状となってスルスルと登っていける。顔だけ出して、壁の上を覗く。


そこには、弓を構えて警戒している、前に見たのと似たような装備を身に付けているゴブリンたちが、キョロキョロ辺りを見渡して警戒していた。どうやら、遠くからここに敵が攻めてこないか見ているらしく、壁の真下を見ようとはしない。普段ならちゃんと確認するんだろうが、陽動の効果が出ているみたいだな。


「ギャギャギャ?」

「ガッガッガ!」

「ギャガ!」


ゴブリンたちは何か話し合っている。お互いに意見を交換しているのかな?・・・まあ、そんくらいならゴブリンでもするだろう。あまり詳しくないから、断言し辛いけど...。


「よし、リン。一気に飛び出して、奥の1体を倒してくれ。とりあえず、他の奴らに気づかれなきゃいい。殺しても構わないだな。手前の2体は、ライムに任せる」

「ブルゥ」


別の蛇に乗っていたリンが、頭を蹴って一気に飛び上がり、ゴブリンたちにその姿を晒す。突然のリンに固まるゴブリン、その隙にライムは接近。リンが放った電撃が最奥のゴブリンの頭に直撃し、地面からせり上がったライムの爪で、手前の2体の首を落とす。ふう、一瞬で決まったな。


壁に上がり、周りに他の魔獣がいないか確認。どうやら、最低限の警備だけ残して、陽動部隊の迎撃に向かったみたいだな。・・・うん、大丈夫そうだ。


ルウに小さい火で、下の部隊に合図させる。すぐに藪の中から出てきて、蛇を背を駆け上がってくる。


「中々やんじゃねぇか。しっかし、ずいぶんと静かなんだな。そういうこと用の魔術か?」

「違いますよ。それに、これは魔術じゃなくて符術です」


似たようなものだけどな・・・魔術を補助するために呪符だし。


「呪符ですか、物好きですね。普通は、宝石をついていない木の杖を使いますよ」

「短杖でも、やっぱりかさばりますし、そこそこ高いですからね。その点、符は安いですしそこまでかさばりません。まあ、高いものは高いですけど」


素材がなー・・・普通の紙でも全然問題ないんだけど、込められる魔力量がかなり違うんだよ。岩塊やら蛇、墜落は普通の紙じゃ無理。魔力に紙が耐え切れず、焼き切れてしまう。


「そんじゃ、降りたいんだが...。階段があるけど、壁ん中を通るのは危なすぎるな。ミカド、あの蛇をこっちに動かせるか?」

「ちょっと待ってくださいね。ふー・・・来い!」


右手に魔力を集中させ一言唱えると、蛇たちが崩れて下から符が手に飛び込んでくる。ふう、やっぱり遠くから回収するのには、結構な集中力がいるなー...。とてもじゃないが、魔物との戦闘中じゃ出来ないわ。


そのまま地面に符を落とし、再び蛇たちを出現させる。これ、消したら魔力込めなおしだから、あまりやりたくないんだよな...。まあ、そんなことも言ってられないか。バレないかな・・・大丈夫だよね。照らされでもしなければ。


「あまり出してると、誰かに気づかれるかもしれません。さっさと降りてしまいましょう」

「そうだな。おし、降りてからの動きは言った通りだ。あまり陽動に負担をかけるわけにはいかねぇ、さっさと門を開けちまうぞ!」

『応!』


小声で気合を入れて、騎士団長や勇者が率先して蛇で要塞内へと降りていく。さて、俺も後に続きますか。


更新がきつくなってまいりました...!文字数を減らすか、更新速度を落とすか・・・どっちがいいでしょうかね?

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