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模擬戦再開、比翼連理、仕事が増えた...

10分ほど休憩して、少しは心の整理も出来たみたいだ。勇者たちが、俺との模擬戦を再開したいと言ってきた。どういうふうになったのだろうかね。


「すいません、お待たせして」

「気にする必要はありませんよ。それで、どうですか?敵に敵意を持つことは出来そうですか?」

「・・・いきなり殺意を持てなんて言われても、さすがにそう簡単にはいきませんよ」

「それは分かっています。それならば、せめて敵を倒そうとする気合だけはしっかりと持つようにしてください」

「それは、さっきも持ってたっすよ。何か変えなきゃいけないことはあるんすか?」

「そうですね・・・意識的に、気合を表面に押し出して行くようにしてください。今ままでみたいに、内で思ってるようじゃ駄目ですよ」 


そう簡単に考え方を変えることは出来ないから、今出来る範囲で気合を入れてもらう。勇者たちの姿が、突然妙に大きくなりブワッと噴出した大量の魔力で圧倒される。


「いけそうですね。それでは、今度は本気で、殺す気で襲い掛かるのでちゃんと捌いてくださいよ」

「分かりました!」

「了解っす!」


一旦目を瞑り勇者たちを視界から除き、頭のギアを戦闘用へとシフトさせる。同調した魔力により感覚が広がる感じ、ライムも本気モードのようで手を駆竜と同じ爪の形に変化させていた。3本の鉤爪が左右に1対、勇者たちの魔力に気後れすることなく、殺気を漲らせている。


「しっかり受けてくださいね!」


俺はそう言いつつ、いくつもの呪符を懐から取り出し指と指で挟んで投げる。金髪と黒髪男に迫るが、どちらも切り捨てられたり避けられたりしてしまう。どうしても、牽制用の攻撃になっちゃうんだよな・・・別にそれが悪いわけじゃないけれどね。

その隙に金髪へと迫り、腕や脇を狙って剣を振るう。どちらも防がれてしまうので、脚の甲を思いっきり踏み抜いてから後退した。ふう、やっぱり剣での戦闘は苦手だな・・・魔術での支援のほうが性に合ってるよ。

黒髪男の動きは、さっきより遠慮がなくなってきている。ライム相手に左右にふりつつ、隙を見て拳と突き入れる。だがまあ、相手が悪い。本気になったライムを相手取るには、いくら気合を入れなおした勇者であっても厳しいものがある。

腕を変形させて作った爪、そいつが黒髪男の体を掠めて過ぎ去る。安心するのも束の間、今度は2方向から時間差で挟むように爪が襲い掛かる。

篭手で受ける黒髪男だったが、それを待っていたかのように、一気に攻撃の速度を引き上げるライム。いきなり激しくなった攻撃を前に、黒髪男は耐え続けるしかない。


「来牙!」


金髪が黒髪男を援護しようとライムに迫るが、俺が間に割って入る。邪魔だと言わんばかりに、敵意満載の剣を振るう金髪。お、今の剣はいいな。中々適応するのが速いじゃないか。やっぱり直線的な攻撃ってのは変わらないから、小盾でしっかりと受け衝撃はきっちりと受け流す。正面から受けたものなら、こんな盾すぐに壊されてしまうしね。

いつまでも俺の相手をしている場合ではないと思ったのか、金髪は金色に光る剣で俺に突きを見舞う。金色の光が軌跡を描き、急激に体が加速。一気に俺を突破しようとする。はあ、さっきも言ったんだがな...。


金髪が狙うのは俺の胸、盾で受けさせて吹き飛ばすつもりなのだろう、。だがまあ、そこまでやられてやる義務はない。

金髪の剣先から目をそらさず、しっかりと見据えて右脚を引き突きをかわす。いくら速くても、直線的な動きなら何とか避けられる。そう言ったのに、金髪は懲りもしないで同じことを繰り返す。ったく、人の話を聞いているんだか聞いていないんだか...。

俺に突きをかわされた金髪が、そのままの勢いで突っ込んでくる。俺は引いた右脚を振り上げて、金髪の胴に膝を叩き込む。そのまま追加で腹を殴って吹っ飛ばした。ライムは茶髪が放った魔術をかわすために後退していて、黒髪男を黒髪女が魔術で回復している。おっと、そうはさせないよ。


俺の意図を汲んで、ライムが黒髪男に迫る。そいつを止めようと茶髪は火球を乱射するが、俺が呪符を数枚使って壁を発生させ、ライムに当たりそうなものを全て防ぐ。辺りに真っ黒な爆煙が立ちこめ、勇者たちの姿が見えなくなった。少しは作戦を練ってきたみたいだな。だがまあ、こんくらいなら対処可能だ。


「精霊よ、煙を払い我が敵の姿を晒せ、霧払い」


ライムの頭上に風の塊が現れ、破裂すると強風が巻き起こる。煙が一気に周囲へ散り、ライムに接近していた金髪と黒髪男を晒す。魔術は相手が見えていないと狙いがつけられないため、茶髪たちの援護は今のところなし。イメージ?もちろんポケモ○ですよ。もしかしたらこういう場面もあるかなーと、訓練しといてよかった。文字通り、霧を払うための魔術なんだけどな。


煙を払われたにも関わらず、そのまま突撃していくる勇者たち。だけど、すぐに攻撃に移れるよう力を溜めていたライムのほうが速い。

黒髪男へと一気に接近、拳で迎撃してくるがその下に潜り込み、軽くしゃがんだ体勢からアッパーカットで顎を打ち抜く。地面に倒れてグッタリと気絶している。ますは1人目、黒髪男。

ライムが黒髪男に向かったので、金髪は俺を襲ってくる。大上段に構えた剣には、目も眩むような光でさらに大きな剣が形成されている。うっわ・・・あれ、確実に必殺技とか超必技じゃん...。直線的な動きを、広範囲攻撃と火力で補填するつもりか。そりゃ、あれなら全然問題ないだろうけど、俺に使うような技じゃねぇ!殺す気か!ああ、殺す気か。


とりあえず防がなければ死にそうなので、懐に入っていた呪符を全て辺りに頭上に放る。20枚1組になって、四縦五横の格子を描く。縦横線の交差点の数が20なんだな。


「大壁!」


無詠唱では出来そうにないので、術名だけ唱える。1枚の呪符で作った壁の、数倍の大きさの壁が何枚も発生する。さて、どこまで持ちこたえられるか...。


巨大な光の剣が振り下ろされ、大壁と衝突する。一瞬持ちこたえるものの、すぐに1枚目の壁が破られた。光剣の勢いが少し弱まり、2枚目と衝突。辺りに切られた呪符の紙片が舞散る。

そのままどんどん壁は破られていき、あっという間に最後の1枚になってしまった。壁に皹が入り金髪が一層剣に力を込めた時、真後ろからライムが襲来。茶髪と黒髪女を、俺が持ちこたえている間に無力化していたのだ。体の1部分を切り離して、2人を縛り上げている。

金髪の足を払いつつ、そのまま駆け抜け俺の前に立ちはだかる。置いてきた体の分少し小さくなっている。まさに、身を削りながら急いで2人を抑えたんだな...。


「ありがと、ライム。無理させて悪いな」

「ふるふる」


ジャキン!と両手を爪へと変形させる、金髪と切り結ぶ。よし、俺も加勢しよう!


ライムが後ろに下がるのと同時に、俺が出て金髪に斬りかかる。ライムを追撃しようとしていた金髪は、受けに回らざるをえない。

数回斬ったところで、金髪が俺の剣を弾き反撃してくる。そこで俺がしゃがむと、示しを合わせたようにライムが俺を飛び越え、金髪へと斬りかかる。

すぐに後ろに下がり、立ち上がって再び攻撃の機会を伺う。またもや追撃を邪魔され受けに回っている金髪。一気に畳み掛けるか!

ライムは左から、俺は右から金髪に斬りかかる。金髪が斬り返そうとすれば、ライムがタイミングをずらして追撃。金髪に攻撃する暇を与えない。


声をかけず、サインすら送らず息ピッタリの連携をこなす俺とライム。魔力を共有していると、感覚・思考まで同調する。お互いに何を考えているか分かり、次にどういう風に動くのか、相手がどのように動いてほしいのか、それらが丸分かりなのだ。行為におよんでいる時に使ったら便利かな・・・いや、それじゃあ情緒がない。そういうのは、分からないからこと燃えるんだ。経験はないけど。


俺が袈裟懸けに斬り、ライムが爪で左上へと斬り上げ、そこへ突きを見舞い、ライムは両爪で挟み斬る。何とか剣で受けたり避けたりしていた金髪だが、ついにライムに剣を吹き飛ばされた。俺とライム、同時にそれぞれの武器を突きつけて、模擬戦は終了だ。


「ふう・・・さすがに疲れました...。もうちょっと時間がかかってたら、こっちが危なかったですよ。ライム、あの2人を離してあげて」

「こく」


2人を拘束していたライムの体が、1つにまとまってスライムのようにこちらに近づいてくる。ライムの体に戻ると、大きさが元通りへと戻る。特に損耗はないみたいだ、よかった。


「とりあえず、彼を起こしてきてください。少し休んでから、色々話しましょう」


かなり的確に顎に入ったみたいで、勇者たちが揺らしても全く起きる気配がない。仕方ないので、茶髪が水をぶっかけて起こしていた。顎を擦りながら、ふらふらと歩いていく。


「・・・はあ。疲れました...」

「お疲れ様です。最後の連携はすごかったですね」

「呼吸がピッタリだったね。いや、それ以上か?」

「まあ、何を考えてるか分かりますから。お互いに動きを合わせてるんですよ。まあ、俺が動きについていける範囲ですけど。ライムも、全力で動けばもっと速いですし」


相手が1体なら、2人のほうが1人より有利に戦えるからな。その相手の技量が俺より数段も上なら、さすがにライムに任せて援護に回るけど。


「それより、呪符を全部使っちゃいましたから補給したいんですけど...」

「まあ、昼飯の後ちょっと時間を取るから、そん時に書けばいいんじゃないか?」

「というか、いつの間に呪符なんて使うようになったんですか?」

「まだ使い始めて間もないですけど...。壁と符を飛ばすことくらいしか出来ませんし」


もっと活用できる方法もあるんだろうけど、中々難しくてな...。要勉強だよ。


「テイマーの弱点はテイマー自身ですから。サシャ先生は、どんな対策をしてるんですか?」

「いくら従魔が強くても、使役主が弱くてはAランクまでいけませんよ。私自身も、そこそこ戦えます」


言われてみれば、先生の腰には4本の短剣が下げられている。あれで戦うのか、サシャ先生自身が戦う姿・・・うーん、想像つかない。


「・・・ってことは、先生が戦ったら勝っちゃいます?」

「勝っちゃいますね。勇者と言う位だから相当強いと思ってたんですけど・・・正直、興ざめです」

「それを言うのは可哀想ですよ。戦いのない青年たちが、突然訳の分からない世界に連れてこられて戦わせられてるんですから。むしろ、あそこまで戦えるのはすごいですよ。殺気も乗り越えたんですし」

「妙に彼らを庇いますね。何かあるんですか?」

「い、いえ。そういうわけじゃないっすけど...」


俺は、何故か平気だったけど、彼らはそういうわけにもいかないしな。次のステップは、生き物を殺すことかな。


「到底私には勝てないせしょうし、明日もあなたにお任せすることになりそうですね」

「うーん、そうなんですけど...。彼ら、敵意を持つことは出来ても、殺意までは持つことが出来ないみたいなんですよ。今回はライムだけでしたけど、ルウとリンがいたら一気に飲まれちゃいますよ。先生のガルムは、さらにヤバイでしょうし」

「そうさね...。殺意には殺意をもって対応するのが1番だし、まずはそれをどうにかしないと...」


やっぱり、生き物を殺してもらうしかないよなー...。やりすぎはマズイけど、後回しに出来る問題じゃない。


「実際に外で、魔獣と戦わせる必要がありそうですね」

「それに、人を殺すことも経験しなければいけません。魔物は人型も多いですから」

「だね。ということは、適当な魔獣と賊を戦わせようか。あの実力なら、そうそう敵う奴はいないだろうし」

「いざとなったら、騎士たちもいますしね。それじゃ、明日は朝から外で実戦形式の訓練ですね」

「よし、その方針でいくと相手方にも伝えとくよ。賊に関しては、日々情報を集めてるからね。すぐにまとめておくよ」

「お願いします。先生、この付近の魔獣で勇者たちに見合う奴らがいる場所を見繕いましょう」

「分かりました。午後の訓練は中止ですね」

「まったく、手のかかる勇者様だこと。ツチオ坊、勇者たちの実力は分かるね。サシャと一緒に見繕っておけ」

「了解です」


訓練をする以前の問題とか・・・ラノベの奴らは、どうやって生き物を殺せるようになったんだろうね。教えてほしいよ...。


「ここが変だよ、勇者召喚」その2 ガンガンに殺意をぶつけてくる奴らと普通に戦ってる。


気に飲まれたりしますよね...?

そして、ツチオは皆のだーりんです。

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