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少女に、スキルに、魔力量

とりあえず、今日ラストー

「それじゃあ改めて、私が学院長エヴォリー・マクスウェルだよ。よろしくな、ツチオ坊」


学院長は大きなローブを着て、髪をアップでまとめているおばあさんだ。机に杖が立てかけてあるから、きっと魔法を使うんだと思う。


「あの...。学院って、どういう人が入学するんですか?」

「犯罪歴がなければ、どんな奴でも入れるよ。13歳からって、年齢制限だけはつけさせてもらってるけどね。そういえば、ツチオ坊は幾つだい?」

「数えで16です」

「あら、予想が外れた。てっきり、14くらいだと思ってたんだけどね」


日本人は童顔みたいだからな。外国に行くと、酒を売ってくれないらしいし。


「入学検査は二日後だ。まあ、魔力とスキルの検査だけだし、そんなに緊張する必要はないからね」

「分かりました。そういえば、俺はどこに泊まればいいんですか?全寮制って聞きましたけど」

「入学するまでは、どっかの宿にでも泊まっておき。金はキサト坊にたんまりともらってるだろう?」

「そうですけど...。ルウも一緒に泊まれる宿ってありますかね?」

「幾つか教えてやるから、そこで私の名前を出しな。色々融通を効かせてくれるよ。私がツチオ坊を助けてやるのは、とりあえずここまで。後は自分で頑張りな」

「はい、色々ありがとうございます」






学院長に紹介された宿は、テイマー用の宿屋だったらしく、色んな魔獣を見る事が出来た。ルウもけっこう見られてたけどね。

王国の貨幣には石貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨があるらしい。それぞれ100枚で上の貨幣に両替できるみたいだ。一泊が銅貨10枚だから、それぞれの価値は十円・千円・十万円・一千万円・十億円だと思う。あくまで、日本円換算だけどな。


それから二日間は、ひたすら空を飛んで魔力の操作を練習していた。俺自身に魔力があるかどうかは、調べてみないとまだ分からないし。


そして二日が経ち、俺は再び学院の門の前に立った。俺の他にも、何人もの子どもが奥に進んで行っている。俺もさっさと試験を受けて、予習でもしてるかね。


学院本校舎に入り、受付に名前を書く。偽名を使っても分かるようになってるから、魔法ってのは凄いよな。ちなみに、文字は読んだら勝手に脳内で変換され、書いたら日本語ではなくこっちの文字になっていた。ご都合主義万歳!


「それでは、番号が呼ばれるまでそこのロビーで待っていてください」


俺の番号は・・・143か。143人目ってことなのかな。ベンチにでも座って待ってるか。

ベンチに腰掛けると、近くにルウも座って俺の膝に頭をのせる。最近ずっと撫でてたから、気に入ってしまったらしい。まあ、目を閉じて喉をゴロゴロ鳴らしてるのは、中々可愛くていいんだけどね。


のんびりと順番を待っている間に、人がどんどん増えていく。ベンチも埋まっていって知り合った人たちが楽しくおしゃべりしている中、俺はずっとルウを撫で続けている。・・・何か、俺の座ってるベンチに人が来ないな...。きっとルウが怖いんだろうな...。なんだろうが、


「ジー...」

「・・・」

「ジー...」


随分と前から、小柄な少女が俺とルウの事を凝視している。豊かな髪を両肩から前に出し、黒いリボンで両方

結んでいる。かなり身長が低く、140cmないんじゃないんだろうか。


「・・・触るか?」

「いいんでありますか!?」


ありますかって...。どこの天才犬耳少女博士主席だよ...。


「お、おう。頭は触るなよ。手を食い千切られるぞ。背中を上から下にな」

「りょ、了解であります...」


恐る恐る、少女がルウを撫でていく。手が触れた時、ルウが動こうとするけど、俺が目で止める。ここで暴れられたら、それこそ俺の学院生活は灰色決定だ。


「おおおー!ツルツルでありますなぁ...」

「昨日洗ったからな」

「思ってたより、温かいんでありますなぁ...」

「そ、そうか。それはなにより?だ」


夢中でルウを撫で続ける少女。だんだんルウの機嫌が悪くなっていく。そろそろ止めさせんと危ない。


「はい、ここまでー」

「あああぁー...」


少女をルウから引っ剝がす。名残惜しそうに、しぶしぶ離れていく。ルウは「褒めて褒めてー!」と言わんばかりに、俺に頭を擦り付けてくるルウ。


「すごい懐いているんでありますな!」

「出会い方が強烈だったからな...」

「そうなんでありますかー...。あ、自己紹介がまだでありました!私、トリスであります!ドワーフであります!」

「俺はツチオだ。よろしく」


こっちで名乗るときは、基本名前だけみたいだ。俺も真似しておく。


「よろしくお願いするであります、ツチオさん!」

「さん、かい!殿じゃないのかよ!」

「ん?殿のほうが良いのでありますか?」

「まあ、そう言うと思ってたな」

「そうでありますか。なら、今日から殿をつけるであります!よろしくであります、ツチオ殿!」


よっし!何か知らんが、殿が敬称になったぞ。やっぱ、語尾がありますなら敬称は殿だよな!

ってか、今ドワーフって言った!?よくドワーフの女の子は小柄で髪が豊かって風になってるけど、この世界でもそうだったんだな。


「ツチオ殿はテイマーなのでありますか?」

「ああ。トリスはドワーフだし、鍛冶師を目指してるのか?」


鍛治師の話題になった途端、トリスの顔がサッと曇る。・・・地雷だったか。


「・・・私は、武術を学びに来たんであります。ドワーフじゃ力が強いでありますから」


顔が曇ったのは一瞬のことで、すぐに笑顔に戻るトリス。恐らく、鍛冶もスキルで才能が分かるんだろうな。


「俺はまだどんなスキルを持ってるか、知らないんだよ。テイムのスキルは持ってると思うんだけど、他にはどんなのがあるか楽しみだよ」

「そうでありますね・・・私も楽しみであります!」

『143番の方、11番の部屋に入ってください』


俺の番だな。ようやく魔力量とスキルが分かるのか。


「んじゃ、行ってくるわ。また後でな、トリス。ルウ、おいで」

「あ、はい。頑張るでありますよ、ツチオ殿!」

「何も頑張りようがないだろ。ま、トリスも頑張れよー」


ルウを連れて、11番と書かれた扉に向かう。ルウを見た奴らは勝手に離れていってくれるので、どかす必要がなく楽である。


扉は人サイズなので、ルウは部屋の前で待っててもらう事にする。触られそうになったら、脅していいと言っておいたから、ちょっかいをかけられることはないだろう。


ノックをすると、「どうぞ」と若い女性の声がかけられる。中に入ると、眼鏡をかけて髪留めで後ろにまとめた美人さんが、机を挟んで向かい側に座っていた。机の上には、大きな水晶玉とA4サイズの紙が重ねて置いてあった。


「こちらに座ってください」


机の前の椅子に座る。なんか、就職時の面接みたいだな...。き、緊張してきた...。


「まずはスキルを調べますので、この紙に手をのせてください」


言われた通り、紙の上に手をのせる。しばらく待っていると、紙の上に何やら図形が出始めてきた。


「こ、これは?」

「出てくる順が早いほど、才能が眠ってるスキルだということです。また色が濃いほど、眠ってる才能は大きいです。図形の形で、どんなスキルか分かるんですよ。これは・・・テイムですね。色がかなり濃いので、中々強いようですね」

「そうなんですか。あ、次のが出てきましたよ」


こんどは別の図形が出てくる。確かにテイムより色は薄いな。


「これは・・・愛撫?」

「は?」

「どうやら、撫でるのが上手いみたいです。上手いですか?」

「まあ、それなりには...。よく撫でますし」

「そういうことです。魔獣を懐かせるにはスキンシップも大切ですから、便利だと思いますよ」


愛撫って...。そんなものまでスキルになるのか...。いや、スキルになるまで高められたってことなのか?


「まだあるのか」

「誰にでも、才能は眠っていますよ。平均は3つほどですかね」

「はあ...。じゃあ、俺はこれで終わりですかね」


出てきた図形は、愛撫よりちょっと薄かった。俺、どんだけ撫でるのが上手いんだよ...。


「これは・・・魔手ですね」

「魔手?なんですか、それは」

「魔力を手で操作できるんです。経験、ないですか?」


・・・ルウが強化魔法を使ってる時、魔力を移してより強化出来たな。それだろう。


「多分ですけど、ありますね」

「ならいいです。スキルを自覚してないほど、面倒なものはないですからね」

「そ、そうなんですか...」

「・・・しかし、愛撫と魔手ですか...。中々凶悪、いえ強力な組み合わせですね...」

「はい?」

「こちらの話です」


凶悪か...。今度、詳しく調べてみるか。


「あ、まだあるみたいですね。才能の数は平均以上ですよ」

「それ以外は平均以下、みたいに言わないでくださいよ...」

「すいません、つい癖で。今度出たのは、支援魔法ですね。あまり濃くないので、そこまで期待はしないほうがいいですよ」

「だから、何でそんな心を挫くようなことを言うんですか!気に障ることでもしたんですか!?」

「すいません、つい癖で」

「テンプレート!?」

「てんぷ・・・何ですか?」

「い、いえ。何でもありません...」


地球の言葉は、当然通じないか。変人扱いされるのも困るし、口に出さないよう気をつけなきゃ。


「これで終わりのようですので、魔力量検査に移ります。この水晶に手を当ててください」


出された水晶に手を当てる。小説とかなら、ここで滅茶苦茶な魔力量を俺は持っていて、水晶玉が壊れるんだろうけど...。そんなことは期待してないよ。だって、地球には魔力がないじゃん。そして俺は地球人だ。ゆえに、俺は魔力を持ってない。なんて見事な三段論法!

そもそも、ルウが懐いてくれた事が奇跡的なんだ。後は俺の努力次第、ってな。


しばらく手を置いたまま待ってると、うっすらと水晶玉の中心が光り出す。光は本当に弱く、今にも消えてしまいそうだ。あー、やっぱりな。人生、そう上手くはいかないんだよ。


「・・・かなり少ない、0と言ったほうが早いくらいですね。御愁傷様です」

「そりゃどうも」

「驚かないんですね。これだけ少ないのは、逆に異常ですよ。ショボい支援魔法すら、使いこなせないと思います。それに、魔獣を使った戦闘で魔力が少ないっていうのは、かなり辛い...」

「いいんです、予想してましたから」

「そうですか。0ではないので、まあ魔手も使えるでしょう。これから増えるかもしれませんし、精々頑張ってください」

「頑張りますよ、強くなりたいですからね。俺が強くなきゃ、テイムも出来ませんし、テイムしたとしても申し訳ないですからね。不甲斐ない主では」

「私なら願い下げです」

「でしょう?だから、俺は頑張りますよ。こっちでは、したいことも見つかりましたし」

「(こっちでは?)・・・何ですか?」

「秘密です。言うのは恥ずかしいですし。それでは、ありがとうございました」


そう言って部屋を出る。さて、ルウを待たせちゃったし、いっぱい撫でてやろう。俺にはその才能があるみたいだしな。撫でて撫でて撫でまくって、その才能をのばしまくってやる!撫でで魔獣をメロメロにできるくらいにな!・・・出来れば、女の子とかも。






トリスはロビーにいなかった。多分、検査に呼ばれたんだろう。受付に戻ると、寮の鍵と番号が書かれた金属板を渡された。ルウは魔獣舎に住まわせるように、とのこと。これが鍵になるらしい。多分、魔法がかかってるんだろうな。便利だなー。


まずはルウを魔獣舎に連れて行く。角を持ってる狼や馬鹿でかい蛇を見ながら、いたと同じ番号を探す。お、ここだな。


「ルウ、今日からここがお前の巣だ。俺がいないときは、ここで過ごすんだぞ」

「グル」


素直に中に入っていくルウ。あれ、もっと抵抗すると思ったんだけど...。妙に聞き分けが良いな。


「それじゃ、大人しく寝てるん・・・だぞ?」

「グル?」


出て行こうとした俺の服の裾を、ルウが噛み付いて止める。そのままズルズルと引っ張られて、俺を真ん中に置いてとぐろを巻く。こいつ、俺も帰らせない気だな...。今までずっと一緒に寝てたから、ルウにとってはいつも通りなんだろうけど!


「なあ、ルウ。俺はここで寝ないんだよ。ここで寝るのは、ルウだけだ」

「グル!?グルルル!」


いや、嫌だって言われても...。そう言う決まりだし、俺も柔らかいベッドで寝たいし...。ルウは割と柔いんだけど、ベッドには負けるんだよな。


「グルル...」

「ここは寝るだけの場所だ。昼間は一緒にいられる・・・はずだ。だから、これからはここで寝てくれ。いいな?」

「グル...」


かなり渋ったけど、俺を困らせるほうが嫌だったみたいだ。泣きそうになりながらも、俺を離してくれた。・・・なんか、俺が悪いことしてる気になってきたな...。


「部屋に荷物を置いたら、すぐに出してやるからな?朝一で会いに来てやるからな?だから、ちょっと待っててくれ」

「グルゥ...」


俺が鍵をかけると、部屋の入り口に透明な膜が発生する。触ってみると、パチ!と静電気が走る。電気柵かよ...。


「すぐに戻ってくるからな。大人しくしててくれよ」

「グル...」


俺に背を向けて、とぐろを巻くルウ。出来るだけ早く戻ってこよう...。




11/21 貨幣の価値を書き直しました。寝ぼけながら書いていたので、色々間違ってました...。すいません。

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