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到着して、押しの強い善意を受け取り、ギルドへと向かう

<side 追い返された海賊の親玉>


「何!?追い返されただと!相手は貴族の船で、人数も倍は向かわせたんだぞ!負ける余地がないだろう!テメェらそれでも、ピテラ海賊団の団員か!?」

「で、ですが親分。あいつらの話によると、妙な奴が応援に来たらしいですぜ」

「妙な奴?どんなんだ!」

「何でも竜とユニコーンを従えたテイマーで、シルバーホースに乗ってるらしいっす!」

「シルバーホーンに乗ってるテイマー?・・・その竜はワイバーンだったか?」

「い、いや。そこまでは分からねぇそうです。戻ってきたのは、すぐに逃げ出してきた奴らだけですから」

「ちっ、腰抜けめ...。おい、これから偵察に行かせる奴らに、シルバーホースを見つけたらすぐに知らせろと伝えおけ!恐らくシアノに交易に向かったんだろう、帰り際を襲うぞ!」

「う、うっす!」


やられっぱなしは癪に合わねぇんだ・・・この前の礼も兼ねて、ぶっ殺してやる!






デブの船を海賊から助けてから5日が経過し、その日の午後。ようやくシアノ諸国最大の島、ランディス島に到着した。途中、懐しい鳥型の魔獣たちが群れで襲ってきたが、船員さんたちと協力して大きな被害なく撃退した。雨も降らなかったし、デブに会ったことを除けは、比較的快適な旅だったな。


「すみませんな、荷降ろしを手伝ってもらって」

「いいんですって、誘ってもらったお礼ですよ。途中でも、魔獣を倒すくらいしかしていませんし」

「それで十分じゃのに...。まったく、これでは釣り合わんよ」


ルウが荷物が入った木箱を持って、港へと下ろしている。力が強いし飛べるしで、こういう作業に向いているな。そういう仕事も出来るのかな...?


「それで、この後はやはりダンゼ島に行かれるのかな?」

「ええ、ここらにしかいない魔獣に興味がありますから」


魔獣の棲家になっている島は、ダンゼ島という名前らしい。探索が進んでいないといっても、島の一部は開拓されているらしく、宿屋や武具屋など必要な施設はそろっているらしい。テイマー用の宿屋もあればいいんだけど...。


「そういえば、ツチオ殿は武器を使わないのか?」

「ええ。両手を使うスキルがありますし、テイマーですから自分で戦いませんしね」

「まあ、それは分かるんじゃが...。防具もつけないのか?戦っている際、こっちが見てて冷や冷やするぞい」


革鎧は学院から借りていたから、夏季休暇中に持ち出すことが出来なかったんだよな。外に出て戦うことも多いし、自分用の防具がほしいんだけど...。高いんだよな。


「まあ、あまりお金もありませんし...。ここでお金を貯めて、買ってみようかと思います」

「ふむ・・・ちょっと待っとれ」


キサトさんが船内に向かう。・・・もしかして、気を使わせちゃった?うわああああ、何やってんの俺...。これじゃあ、たかってるみたいじゃん!そんな気はないんだからね!こうなったら置手紙を残して、キサトさんが来る前に逃げるしかない!


「ルウ、戻ってこい!すぐに出発するぞ!」

「グ、グル!」


荷物は既にまとめて持ってきている。さらっと手紙を書いて、さっさと出発...。


「待たせたな、ツチオ殿!ほら、これなんかどうじゃ!?軽くてしなかやかで丈夫な、レッサードラゴンの革鎧じゃぞ!」


早っ!?1分もかかってないぞ!


「ん、ツチオ殿はどこに行かれようとしているのじゃ?」

「い、いえ。そろそろ出発しようかなー、と」

「ははは、まだ帰りの船がいつ出発するか、伝えていないではないか。このままじゃ、帰れなくなってしまうぞ」


そういえばそうだった!・・・まさかキサトさん、俺が逃げるのを見越してあえて言わなかったのか?さすが騎士団長、あなどれない!


「そ、そうでしたね。で、帰りの船はいつ出るんですか?」

「大体、30日後の日の出と共に出航じゃ。ちょうど1ヶ月後じゃな」

「大体、というのは?」

「その日の天気や、海域の状況によって遅延することがあるのじゃ。まあ、1ヶ月後には、ここに戻ってきておいてくだされ」

「分かりました!それじゃ、俺はもう...」

「逃がさんぞ?」


ガッ!と腕を掴まれる。やっぱりー!この人、絶対俺にあれを渡すつもりだよー!


「あ、ありがたいですけど、遠慮しておきます!あれ、絶対高価じゃないですか!」

「まあまあ、そう言わずに受け取ってくれ!防具は大切じゃよ!」

「自分で用意しますから!船に乗せてもらった上、あんな物までもらっちゃったら...。どうやって恩を返せばいいんですか!」

「返さんでよい!労働の対価じゃ!サイズもピッタリじゃし、さっさと受け取らんか!」

「いや、何でサイズがピッタリって分かるんですか!?」

「ふっふっふ、儂くらいになれば、一目見ただけで相手の体型が分かるんじゃよ!」

「何そのギャルゲー的特技!?」


うらやましい!年をとれば、あんな特技を習得できるのか? 


「ええい、強情な男じゃ!皆のもの、やってしまえ!」

『応!』

「え、ちょ、皆さん何してんの!?わ、持ち上げないで!って、どこに運んでいくんですかー!」

「諦めな!こうなった以上、団長を止められる人は奥さんしかいないぜ!」

「それに、俺らも心配していたしな!」

「荷降ろしの途中だ!さっさと着させちまうぞ!」

「いやー!」



「うう、何てことをするんですか...」


あれよあれよと船内に運ばれ、革鎧を着させられる。渋い茶の色合いが美しい、俺でも高価だと分かるような一品だ。本当にピッタリとフィットし、体を動かしても擦れるところがない。


「素直に受け取っておけば、こんなことにはならなかったのじゃぞ」

「そうは言いますけど・・・はあ、もういいです。ありがたく受け取っておきます」

「うむ、それでよいのじゃ。血がついたら、きちんとふき取っておくことじゃぞ」

「了解です、はあ...」


まったく、どうしてこうなった...。いや、嬉しいんだけど、それ以上に申し訳ない。


「ほれ、そろそろ行ったほうがいいのではないか?ダンゼ島へ向かう船の時間もあるじゃろう」

「そうですね。従魔も乗れるでしょうか?」

「問題ないと思うぞ。けっこうな数の冒険者が行くからの」


まあ、乗れなかったら交代で空を飛んでもらおうか。


「それでは、また帰りの船で。何から何まで、ありがとうございました!」

「ああ。十分に気をつけるのじゃぞ。未だ探索が進んでいない島じゃ、何が起こるか分からん」


船員さんたちにもお礼を言って、俺はシルバーホース号を降りた。とりあえず、ダンゼ島への船の時間を調べよう。時間があったら、この島を回ってみようかな。



「ダンゼ島行きの船?それなら、もう少しで出発するぞ。日没する前に、向こうからも帰ってこなきゃいけないからな」

「それじゃあ、もう乗船したほうがいいですかね」

「そうだな、そんなに時間があるわけでもないし」


ランディス島観光は、またの機会になりそうだな。宿も取らなきゃいけないし、今のうちにダンゼ島に渡っとこう。


「テイマーなんですけど、従魔は乗せられますか?」

「ああ、そのくらいの大きさなら何とかいけるだろう。まあ、甲板の端によってもらうがな」

「分かりました。はい、運賃」

「確かに。それじゃ、船上で待っててくれ。あと10分くらいで出航だ、2時間もかからないで着くぞ」

「魔獣の島なのに、ずいぶんと近いんですね」

「島だからだよ。飛べる魔獣以外は、島から出てこない」


なるほどね、だからこんなにのんびりとしているのか。

ダンゼ島行きの船は、シルバーホースと同じ位大きな船だった。そんだけ、ダンゼ島に行く人が多いんだろう。この時間は少なくて、甲板には数人しかいなかった。朝の便は、もっと多くの人が乗るんだろうな。

先端に陣取り、甲板で丸まって寝ているルウに寄りかかる。ふう、さすがに船に乗りっぱなしは疲れる。早く宿屋のベッドで寝たいよ。






船はすぐに出発し、船員さんの言った通り2時間もしないで、ダンゼ島の港に到着した。

遠くから見たダンゼ島は、島の外縁を森林が敷き詰めている感じだった。島の中心には巨大な樹の頭だけが見える。。冒険者たちは、あそこを目指して島を探索しているんだろうな。広さはどのくらいなんだろう、かなりの広さなのは間違いないんだがな。


港から町に入ると、ちょうど探索を終えた冒険者たちが、町の中をごった返している。うお、ルウたちがいると歩きにくいな。さっさと宿屋を探したいんだけど・・・全然当てがないんだよな。とりあえず、冒険者ギルドにでも行ってみるか。宿の情報くらい教えてくれるだろう。

俺の後ろを見て、ギョッとした顔で道を開ける人たち。うう、やっぱり目立ってるよ・・・早くギルドに行かないと。


10分ほど歩いて、ようやくギルドを見つけた。町の中心にちょっとした広場があって、そこにギルドが面していたのだ。分かりやすくてよかったよ。

ギルドの中は意外にきれいで、日本の役場を彷彿とさせる。これで長いすがあって、ロビーにいるのが武器を持った男たちじゃなければだけど。

従魔場というところがあったので、そこにルウたちを置いて俺は受付に並ぶ。冒険者じゃなくても聞けるかな...。

割とすぐに順番は回ってきた。ここはどうやら依頼の受領・達成の報告をするところらしく、報奨金などのやりとりを行っていた。


「こんにちは、冒険者ギルドダンゼ島支部にようこそ。ギルドへの登録でしょうか?」

「・・・いえ、従魔が泊まれる宿屋を探していて」


すごいな、俺が冒険者じゃないって一発で見抜いた。これが受付嬢の実力か...。


「宿泊料と期間はどれほどでしょうか?」

「大体1月ってところですね。料金は安い方がいいです」

「あまりお金は持っていないんですか?」

「はい、ここで稼ごうと思ってるので」

「それなら、素材の売却はぜひギルドへ。正当な値段で買い取らせていただきます」

「了解です。それで宿屋ですが...」

「そうですね・・・北の通りを少し進んだところにペガサスの翼亭という宿屋があるのですが、そこはテイマー専用の宿屋ですよ。最初は期間を短く設定して、お金が貯まったら延長すればいいのではないでしょうか?」

「・・・高いんですか?」

「その分、料理はおいしいですし従魔への対応もしっかりしていますよ」


まあ、ルウたちはお金に変えられないからな。使ったお金の分だけ、頑張って働けばいいんだ。


「それでは、そこにしてみようと思います。色々すいません」

「いいえ、それが仕事ですから」


さて、そのペガサスの翼亭に行ってみるかな。






翌日、俺はペガサスの翼亭の食堂で突っ伏していた。何だかんだでこの宿屋に泊まることになったのだが・・・宿泊料が予想以上に高かったのだ。キサトさんにもらったのや休日に魔獣を狩ったお金を全て使って、1週間しか泊まれなかったのだ。そこそこの金額あったのに・・・後3倍の金が必要なのかよ。具体的には、一般階級の家族が1月暮らせる位。かっこつけて、ルウィンにお金をあげなきゃ良かったかも...。はあ、1週間頑張らなきゃな。


テイマー専用の宿屋というだけあって、従魔と一緒に食事が出来るようになっている。俺もそれに習ってルウたちと一緒に食べているのだが、これが中々目立つ。他にもテイマーはいて従魔と食事をしているのだが、竜種を使役している奴は1人もいない。ほとんどの人は、獣系の魔獣を連れている。こちらを探るような視線を受けながら、俺は食事を終えた。


「いやー、お兄ちゃん竜種を使役しているなんてやるねー!さっきからずいぶんと人気者じゃねぇか!」

「ははは...」


苦笑いしか出来ないよ...。


「ここにゃ結構な数のテイマーが来るが、竜種を使役いている人は珍しいからね。気をつけるに越したことはないぞ」

「分かりました、気を配っておきます」


あのデブみたいな奴がいないとは限らないからな。それじゃ、探索に出発するとしますか。



町から出ると、目の前にはもう森が広がっていた。町は石壁や木の柵で囲まれていて、ちょっとした要塞のようになっていた。


「んじゃ、とりあえず森には入ろう。死角が多いから、奇襲には気をつけろよ」


先頭にリン、背後にルウを従えて俺は森の中へと入っていった。さあ、どんな魔獣が出てくるんだろう?


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