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寝起き、提出、報告

その後、2時間たって交代しようと思ったが、リュカとトリスがあまりにも気持ちよさそうに寝ていたので、何だか起こすのが悪くなりそのまま見張りを続けた。ファルは見張りに立ってから1時間くらいで、耐え切れなくなってしまったのか寝てしまった。なので、リュカたちと一緒に寝かしといた。

ルウとリンは交互に仮眠をとって、ずっと見張りに付き合ってくれた。いやー、本当にありがたいよ。誰かと話してるだけでも、眠気は飛ぶからな。


そして、特に何事もなく朝を向かえ、リュカたちが起き出した。最初に起きたのはトリス、リュカもファルも低血圧だからな。二人とも、一応男なんだろ...。


「あうー...」

「おはよう、トリス。今水出してやるから、顔洗えよ」

「あうー」


桶を持ってきて、中に魔法を使い水で満たす。便利だよな、魔法。食事には使えないみたいだけど、こうやって身支度を整えるくらいのことはできる。

のろのろと動いてばしゃばしゃと顔を洗っていたトリスに、タオルを手渡す。


「あー、ありがとうでありますー。・・・ツチオ殿?」

「おう、やっと目が覚めたか」

「・・・交代時間でありますか?ずいぶんと明るいでありますけど...」

「いや、もう朝だぞ」

「・・・なななな、何ですってー!!!でありますー!!!」


急に大声を上げるトリス。ちょ、うっさいって!


「何で起こしてくれなかったんでありますか!?」

「だって、すごく気持ちよさそうに寝てるんだもん」

「寝てるんだもん、じゃないでありますよ!何のために、見張りの順番を決めたんでありますか!?」

「そうは言ってもよ...」


今の大声で起きた二人を指差す。


「うううーん...。ふあああああーーー。・・・ぐう」

「あああああーーーー」


大あくびをして、再び寝入ってしまうリュカ。よだれをだらだら垂らしながら、目は閉じたままのファル。


「あれじゃ見張りなんて出来ないだろ。寝ぼけながら、見張りなんて出来ないしな」

「そりゃそうでありますけど...。って、二人とも寝ちゃ駄目でありますよ!ほら、起きる起きる!であります!」


おお、トリスが二人を起こしていっている。いつもとは真逆の光景だけに、かなり新鮮だよ...。






「ツチオ君ー、起こしてよー...」

「ごめんさなさい、ツチオさん!僕、すっかり寝込んじゃって...」


俺も協力して、何とか二人を起こした後。俺の話を聞いたファルは何度も謝り、リュカは膨れっ面でむくれている。かわいい。


「二人とも、寝起きが悪いのは自分でも分かってるだろ?夜に起こしたところで、多分起きないかまたすぐに寝るかのどっちかだ」

「でもー...」

「デモもストもない。自分のケツくらい自分で拭く、それが大人ってもんだ」

「・・・ツチオ君、大人じゃないじゃん」

「だまらっしゃい」


そういうことじゃないの。心構えの問題なの。つうか、リュカたちから見たら俺は十分大人だろ。


「この話はここまで。ほら、さっさと朝飯食って残りの課題を終わらせよう。ちょっと遅れ気味なんだから、早くやり始めないと」

「はーい。でも、次こういうことがあったら、ちゃんと交代してよね」

「了解了解。ちゃんと起きてくれるんなら、交代するよ」

「絶対でありますよー...」

「ううう、ツチオさんごめんなさいー」

「ファルはいつまでも謝んない。次しないようにすればいいから」

「はい...。気をつけます」


さて、さっさと飯を食って課題を再開するかね。



「ツチオ殿、これでありますかー?」

「どれどれ・・・お、合ってるぞ。さっすが毒物ホイホイ、百発百中だな」

「全然嬉しくないでありますよ...」

「まあ、そういうなよ。これで課題は終わったんだしさ」


トリスが採ってきた、見分け辛い毒草を袋の中に入れて課題の品は集め終わった。ふう、中々大変だったな...。


「今何時くらいだ?」

「日の入りちょっと前ですから、けっこうギリギリでしたよ」

「そうか。なら、もう少しで実習はおしまいか」

「一日しか経ってないのはずなのに、かなり長く感じられたねー」


色々あったからなー。リンをテイムできたのは良かった、普段ならお目にかかれないような魔獣だからな。倒しても逃がしてても、きっと後悔していただろうな。


「あ、もうすぐ日が落ちますよ!終了の合図は、最初と同じで魔法が打ち上がるんでしたよね」

「ああ、そうだな。そう言っている間にも...」


上空に火球が上がり、大きな爆発を起こす。これにて実習は終了だな。


「この後、どうすればいいんだ?先生が来るのを待ってりゃいいのか?」

「どうなんだろ?あの火球の下に向かえばいいんじゃないかな?」

「そうだな、とりあえず行ってみっか」






リュカの予想は正しかったみたいで、火球の真下に向かって歩いていったら、森の入り口に戻ることが出来た。さて、リンを見た先生はどんな反応をするんかな。


「とりあえず、先生んとこに行ってみっか」

「うん、課題も渡さないといけないしね」


ラング先生はすぐに見つかった、背は高いし声も大きいからな。


「お、戻ってきたか!課題が書かれている紙と袋を渡してくれ!」


両方を取り出し、先生に手渡す。中をチラッと見てから、


「よし、とりあえずは集まってるみたいだな!細かいチェックは後でやるから、お前らは休んどけ!すぐに晩飯だからな!」

「分かりました」


先生の横を通り過ぎて、テントに向かう。リンには全く触れられなかったな...。気づいてるはずなんだけど。


「はあー、疲れたでありますよー」

「お疲れ。横になるのはいいけど、寝たら駄目だぞ」

「晩ご飯、食べられなくなっちゃいますからね」


テントに戻ると、トリスが床に寝っ転がる。まあ、その気持ちは分かるけどな。俺も寝ちゃいたいけど、ちょっと用事がある。


「さて、飯の前に済ませちゃおうか」

「ん、どうしたの、ツチオ君?」

「なんでもない。ちょっと出てくるから、飯に遅れないようにな」

「分かりました、ツチオさんも遅れないでくださいよ」

「わーってるよ」


テントを出て、テイマーの従魔が集められている所に向かう。多分、そこにいると思うんだけど...。


「あ、いたいた。おーい、サシャ先生ー」

「・・・はい、何でしょうか?」


俺のテイムの授業を受け持っている、サシャ先生だ。きっとここで従魔の監視をしてると思ってた。


「いえ、大したことじゃないんですけどね」

「なら、いいですね。わざわざ私に聞くまでもないでしょう」

「・・・大したことなんで聞いてください」

「それならそうと、最初から言ってください」


あいかわらず、俺に対する当たりが強いなー...。いや、俺だけじゃないんだけどね。


「森にユニコーンが入ってきてたので、テイムしちゃったんですけど...。どうしましょう?」

「嘘はいけませんよ、ユニコーンはあなたみたいな未熟者がテイム出来るような魔獣ではありません。・・・そうとう疲れでもしてない限りは」

「いや、嘘なんてつきませんって。ほら、あそこにいるじゃないですか」


リンが見えたので手を振ると、チラッと俺を見てフンっと鼻息で返してくれた。


「・・・あれをあなたがテイムしたんですか?」

「ええ。冒険者が倒し損ねたのを、俺がテイムしました」

「その冒険者は?」

「あいつに殺されましたよ。あ、死体はありません。俺のスライムが食べちゃいました」


どうせ、テイムした経緯は言わなきゃいけないんだ。こっちから言っちゃったほうが、後々面倒がない。犯罪ではないし。


「・・・そうですか。放っといても最悪魔獣化するだけなので、その判断で間違いではないでしょう。人としてどうかとは思いますが。普通は焼いてしまうものです」

「利用できるものは、すべて利用しないともったいないじゃないですか」

「・・・まあ、そうですね。それで遺品はあるのですか?」

「・・・アリマセンヨ?」

「出しなさい」

「はい...」


マジックアイテムらしい、2つの黒い鞄を出す。その中に手を突っ込んで、何やらゴソゴソと探している先生。


「・・・ありました」

「何です、それ?」


先生が取り出したのは、4枚の金属で作られているプレートだった。そういやあったな、何に使うか分かんなかったから、とりあえず元通りにしといたんだけど...。


「これはギルドカードです。冒険者の身分証みたいなものですね」

「へー、それをどうするんです?」

「ギルドに渡して、この人たちは死亡したと伝えます。そうしないと、失踪扱いのままですからね」

「そんなことをしないといけなかったんですか...。この鞄はどうしましょう?」

「とりあえず、遺品としてギルドに持っていきましょう。受け取り手がいなければ、拾った人に渡ることになりますよ」

「んじゃ、とりあえず渡しておきますね」

「無理矢理にでもそうさせます」


2つの鞄を先生に渡す。ま、期待しないで待っときますか。


「それで、テイムしたユニコーンなんですが...」

「テイムしてしまったものは、仕方がありません。私が学院側に伝えておくので、あなたは全力で手綱を握っていてください。暴れられたら、殺さなければいけませんから」

「・・・そんなことは、絶対にさせませんよ」

「当然です、それがテイマーの勤めですから。どの魔獣をテイムするかはあなたの自由ですが、身に余る魔獣をテイムして制御できずに暴れさせでもしたら、私は誰でも退学させますから。覚えておきなさい」

「うっす」

「分かったのなら、さっさと戻りなさい。もう夕食ですよ」

「りょーかい、先生はどうするんですか?」

「ここで食べます。見張りがいなくなるにはいかないでしょう」

「そんなら、俺が貰ってきてあげますよ。持ち場を離れるわけにはいかないでしょうし」

「・・・お願いします」


よし、さっさともらってきちゃおう。ちょっとでもご機嫌を取っておかなきゃいけないしな!






「そういや、先生の従魔って何なんですか?」

「・・・そんなことより、何であなたまでここで食事を取っているんですか?」


晩ご飯は、茸と野草と肉のスープに大きなパンだ。これ、俺たちが採ってきたものじゃないよな...。


「いやー、折角なんでこの機会にお近づきになろうかと」

「落第させますよ?」

「ちょ、邪まな気持ちはありませんよ!?ただ、テイマーの先輩として色々聞きたいことがあってですねぇ...」

「・・・まあ、聞くだけ聞きましょう。授業の範囲を逸脱しないものなら、答えてあげないこともないです」

「そんじゃ、先生の従魔を教えてください」

「ガルムです。今は影の中に入っててもらってます」


ガルム?えっと、確か北欧神話に登場する怪犬だったな。血を滴らせた4つ目の怪物で、死者の国の番犬だ。冥界の門の前に立ちはだかり逃亡を防ぎ、貧者に施しをしない守銭奴にうなり声を上げる。最後は神との一騎打ちで相討ちになっちゃったんだっけ。


「影の中って、どうやって入ってるんですか?」

「私の従魔は、シャドウウルフからガルムへと進化したので、進化前に使えた魔法とかはそのまま使えるんです。教えたはずですけど?」

「ああ、そうでしたね!授業で言ってましたね!」


しかし、ガルムか...。どんな魔獣なんだ?かなり怖そうだな...。


「ガルム、見せてもらえませんか?」

「・・・まあ、いいでしょう。この実習が終わったら、見せる予定でしたし。マグ、出てきなさい」


先生の影から、ビュン!と何かが飛び出して俺の目の前に着地する。どす黒い赤色の毛の牙と爪が異様に大きい、リン並みの大きさの狼だ。目は2つだけれど、こめかみの辺りに目のような模様(蝶や蛾の羽にあるようなもの)が片方に一つずつ、計2つあるから4つ目に見えなくもない。


「これがガルムですかー。でっかいですね...。馬くらいの大きさですよ」

「Aランクの魔獣にしては、小さいほうですよ」

「え、こいつAランクなんですか!?」


リンはBランクって言ってたし、それと互角のルウも同じだろう。ルウやリンより強い魔獣か・・・初めて見るな。


「個体ではBランク下位ですけど、群れならAランク下位にまで上がります」

「・・・群れるんですか?」

「そりゃ、元は狼ですから群れるに決まってるでしょう。この子は、群れのリーダーですよ」


そういう扱いなのか・・・やっぱり地球とは違うんだな。つうか、群れのリーダー?他にも使役してるのか?


「えっと、先生は何体のガルムを使役してるんですか?」

「6体です」


6体!?何それすごい、モフモフ天国じゃん。


「伊達に教師じゃありませんね...」

「当然です、今までなんだと思ってたんですか」

「いやー、ははは...」


上には上がいるもんだな...。群れを使役してるなんて、戦略的にもかなり有用だし。ルウとライム、リンでの連携も考えておくべきだな。


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