準備、移動、森の中
投稿が安定しない...。
それから三日間は、ほとんど実習の準備に使った。どこに行くのかを聞いて、そこで出てくる魔獣を調べたり、ルウを連れて行ってもいいのか先生に聞いてみたり...。結果、同行を許可してもらえた。テイマーが魔獣を連れてなかったらただの足手まとい、というサシャ先生の意見のおかげだ。まあ、テイマーである先生が言うのも何だが...。やっぱり、テイマーのことはテイマーが一番良く分かっている。
今回の実習で行くのは、学院から二日近く馬車で走ったところにある、学院が管理している訓練用の森だ。強めの魔獣は予め狩られており、数も多すぎないように調整されているらしい。俺としては、強い魔獣をテイムしたいんだけど...。まあ、命には代えられないな。夜は視界の確保が難しいため、一日目は途中にある街に泊まる。予定では、二日目の夕方には森の近くにつくようだ。
そんな俺たちが乗っている馬車だが、生徒数が多いため非常に窮屈だ。男女別で分けられているので、俺の周りは男子ばっかり、めちゃくちゃうるさい。あ、リュカは女子のほうの馬車に乗っている。当然の判断だな。連れてきている魔獣は、自分で歩いてついてきているが、疲れたら馬車で休むようになっている。ライムはルウの上に乗っている。たまに休憩を挟むので、ルウなら泊まる街まで飛び続けられそうだ。スピードも遅いしな。
まあ、そんなぎゅうぎゅう詰めのところに俺が耐えられるはずもなく、早々にルウの背中に退避した。こっちのほうが居心地はいいし、一人くらいでも少ないほうが、他の奴らは嬉しいだろうし。
「ふう、こっちだと大人数で移動するのも大変だな。馬車じゃなくて、もっと大きな魔獣に大きな車を引かせればいいのに」
「グルゥ」
「まあ、そう簡単にテイムは出来ないか。けど、そういう商売も面白そうだな。力が強くてスタミナがあってそこそこ足が速い魔獣をテイムして、大人数を一気に移動させられる乗合馬車的な。この場合は、乗合魔獣車か」
「・・・?」ぷるぷる?
「そうだな、もっと魔獣をテイムしたいよ。お前たちに落ち度があるってわけじゃなくて、ちょっとした目標のためにな」
モンスター娘ハーレム・・・道のりは遠い。今回の実習で、一体くらいはテイムしたいよ。
そして翌日の夕方、予定通りに森へ到着した。皆、疲れた様子で馬車を降りている。俺はまだまだ元気だけどな。
「よし、全員いるな!それじゃあ、今からお前らが泊まるテントを張るぞ!やり方は授業で教えている、班で協力しろよ!」
今日はここで泊まって、明日から実習が始まる。明日に疲れを持ち越さないよう、しっかりと睡眠をとっておきたい。そのためには、出来るだけ平らな地面にテントを張ることが重要だ。斜めっているところだと、やっぱり寝づらいからな。
テントは班で一つ、メンバー全員が同じテントで寝るらしい。男女で分けなくていいのか、と思ったのだが、普通は男子は男子で、女子は女子で班を組んでいるので、わざわざ分ける必要がないそうだ。つまり、俺たちが例外だってこと。少数派の都合になんか、構っていられないのだ。まあ、一年生のほとんどはまだ12~3歳。間違いなんて起こるわけがない、と思うのが普通だよな。俺?俺は大丈夫、紳士だからな。Yesロリータ Noタッチだ。ロリコンじゃねぇけど。それに、もしそんなことをしたら問答無用で退学&逮捕だ。わざわざこんな監視の眼があるところで、やる奴なんていない。
実際に実習が開始されるのは明日からだが、もうこの時から真の実習は始まっている。一人がテントを借りに行き、あとの四人が場所の確保。チームワークが重要だ。
「ツチオさん、僕たちも場所取りをしたほうがいいんじゃないんですか?」
「そうだよ、ちゃんと寝ないと明日が大変だよ」
「大丈夫大丈夫、俺に任せとけって」
皆が周りを走り回っている中、俺たちの班はのんびりと歩いていた。トリスがテントをもらいに行ってくれたので、俺はリュカとファルと一緒に場所取りだ。
「任せとけって...。だったら、早く探しましょうよ!魔獣が入ってこないようになっている範囲は決まってるんですから、場所がなくなっちゃいますよ!」
「そんな慌てなくても平気だって、ほら」
俺が指差した先には、ルウとライムがいっしょに座っていた。周りで場所を取っている生徒たちは、ルウたちと一定の距離を保っている。よし、ちゃんと場所を取っておいてくれたな。
「悪いな、場所取りありがと」
「グル!」
「・・・!」ぷる!
毎回こういった場所取り合戦が行われると聞いたんで、昨日の夜にルウたちに平らで石が少ない場所を取っといてほしいと、頼んでおいたのだ。他の生徒たちは、ルウには近づかないだろうからな。まして、居座っている場所を取ろうなんて思わないし。
「あ、ツチオ殿ー!テントでありますよー!」
トリスがテント一式を抱えて、俺たちの元へやってくる。場所も取れたし、さっさと張っちゃいますか。
その日はテントを張って夕食を済ませたら、全員明日に備えてすぐに寝た。今回の実習のメインイベント、ちょっと楽しみだ。
次の日、朝早く起床してささっと朝食を食べ終えて、俺たち一年生は全員整列させられている。
「よし、お前ら!今から実地実習を開始するぞ!今から明日の日没まで、お前らにはこの森の中ですごしてもらう!雑魚とはいえ魔獣は出没するから、死にたくなけりゃ油断しないことだ!一応、俺たちが見守っているが、基本手は出さないことになっている!そのことを頭に入れて、行動するように!」
『はい!』
「いい返事だ!それじゃあ、班別でそれぞれの開始地点に集まれ!」
どうするんだ?
「全員、配置についたな?・・・よし、そんじゃ目隠しをしろ!」
布を配られて、自分で顔に巻き周りを見えないようにする。ここに戻ってくれないようにするため、らしい。
「一列に並んで、前の奴の肩に手をのせろ!一番前の奴は、手が引かれるのに従って歩くように!」
そういうふうにするのか...。森って足元が悪いだろうに、大丈夫なのかな?
俺たちの班は、身長順にトリス・ファル・リュカ・俺という順で並んでいて、俺の後ろには、さらにルウとライムが立っている。
しばらく待っていると見覚えのない先生がやってきて先導し始めたので、それについていくように歩いていく。たまにこけたりするけれど、軽く整備されているのか障害物は少ない。
大体2~30分ほど歩かされただろうか、いつまで歩くんだろうなー、と思っていたところで、突然歩みが止まりリュカにぶつかってしまう。なんだ、ここが開始地点なのか?
「それじゃ、合図の魔法が上がるまで動かないでね。これが君たちの課題だよ」
そう言って折りたたまれた紙を渡して、去っていく先生。課題を出されるなんて聞いてないぞ、言い忘れやがったな...。はあ、大人しく開始を待ちますかね。
「ここ、どこらへんなんでしょうか...。ちょっと怖いですね」
「魔獣とかも、普通にでるらしいでありますよ」
「そんな強いのはいないんだろ?ルウもいるんだし、そんな心配するこたないと思うけどね」
「グル!」
ルウが倒せない敵か...。当然いるんだろうけど、想像出来ないな。
数分後、上空にいくつもの火球が打ち上げられ爆発する。あれが合図だな、今から実習開始だ。
「それじゃ、動き始めますか。まずは辺りを探索してみようかな」
「そうだね、何があるのかも気になるし...。課題もやんなきゃだしね」
「こんなのあるなんて、ラング先生は言わなかったでありますよ」
「きっと言い忘れてたんですよ...。それとも、直前まで内緒にしてたんでしょうか」
「どっちでもいいだろ、内容を見てみるか」
紙を開いて、中を確認する。どうやら、書かれているものを採ってくればいいみたいだな。
「あ、これって授業でやったやつだよ。似てるのがあるから、注意するよう言ってたね」
「他のやつも、何かと授業中に言われたものばっかりだな。まあ、これなら予習もしたし、問題ないか」
「そうだね。ちゃんとやっといて良かった」
「そんなこと、やったでありますか?」
「やったと思う、多分。あまり覚えてないけれど...」
この二人は...。まあ、座学は苦手です!って感じだけれども。
「トリスは一緒に予習したろ...」
「そうだったであります。あ、これは自分でも分かるでありますよ!」
「僕もこれなら分かるかな。ちゃんと予習したんですよ!」
「そーなのか、偉いなー」
「えへへー」
やっぱり、こんくらいの男の子は可愛いなー。日本の小学生は駄目だ、生意気だし。それに比べて、ファルはどうよ。素直だし可愛いし・・・言うことなしだよな。断じてショタではないけれども。
「ほら、行くよー。出来るだけ早く、課題を終わらせるんだからね!」
「了解了解、ルウとライムもちゃんとついて来るんだぞ」
「グル」
「こくこく」
実習が始まって数時間がたった。辺りを探索しつつ、課題の品を集めていた俺たちは、食事のために休憩することにした。
「そうは言っても、何もないんだけどな...。探してこなきゃな」
「そうだね。魔獣を遭遇していれば、肉とかが取れるんだけど...」
そこそこな時間、森を歩き回っていたわけなのだが、おかしなことに魔獣と一回も遭遇してないのだ。学院の近くの森に行ったときは、けっこう戦ったのにな...。こりゃ、ちょっとした異常事態だな...。
「戦闘がないのは、いいことでありますよ。危険が減るでありますからな!」
「むー、折角出番が来ると思ってたのにー」
トリスとファルは、別段気にしてないようだ。まあ、確かに戦闘がないのはいいことなんだけど...。やっぱり、気になるよな...。
「リュカ、どう見る?」
「んー・・・他の班のところに、集中しちゃってるとか?」
「その可能性もなくはないが、この森はそこそこ広いぞ。たとえどこかに集まっているとしても、一回くらい遭遇してもいいはずだ」
「それもそうだね。んじゃ、ツチオ君の考えは?」
「・・・出来れば外れてて欲しいんだけど、強力な魔獣か何かがこの森に入り込んだって考えだ。他の魔獣は、別の場所に逃げてる」
「てことは、近くに強い魔獣がいるってこと?」
「確たる証拠はないんだけど・・・さっきから、ルウとライムが変なんだ。嫌な感じがするって」
二体とも、しきりに辺りを見渡して臭いを嗅いだりしている。何かを警戒しているのは間違いない。
「そうなんだ...。注意したほうがいいよね」
「するに越したことはない。一応、まとまって動くようにしようか。二人とも、食いもん探しに行くぞ」
鬼が出るか蛇が出るか・・・どっちも出ないほうが、ありがたいんだけどね。
周囲の食べられそうな物を探していく。雑草とか茸、木の実もあるな。
「こうしてみると、色々あるんですね」
「そうだな、こんな草も食べられるんだし」
日本でも、ヨモギや明日葉は食べられるんだったな、ヨモギ餅とかあるし。おいしいかどうかは別として。
「リュカ殿、この茸はいけるでありますか?」
「見せて・・・食べられる茸に似てるけれど、実は毒茸だね。ほら、かさの形が違うでしょ」
「そうでありますな...。さっきからずっとであります」
「そうだねー。毒茸を見つける才能があるのかもしれないね」
トリスが見つけてくるものは、どれも食用茸に似ている毒茸ばかりだ。まあ、そのおかげで食用の茸が出てくるんだけど。
「はい、ライムちゃん」
「・・・」ぷるぷる
あの毒茸も課題の品だったのだが、既に回収していたので全部ライムに食わせている。あんくらいの毒なら、ライムには効かないだろ。効くんなら食わないしね。
「けっこう集まったな。そろそろ戻るか」
「そうだね。暗くなる前に、寝るところを探さなきゃだしね」
採取したものを持って、元の場所へと戻る。その途中、
「・・・グルルル」
「ちょいちょい」
「ん、どしたん、ライム?」
「・・・」ぷるぷる
「ルウが?何かあるのか?」
「グル」
「そうか...。ちょっと待ってろ」
どうやら、ルウがおかしな魔力を感じたらしい。魔法は使えないルウだけれど、こういう感知とかは得意だ。野生の本能だな。
「何か、ルウが気になることがあるらしい。俺はルウとライムと一緒に行くから、皆はこのまま戻ってて」
「気になることって、何なんでありますか?」
「それがよく分からないんだ。だから、見に行ってくる」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、危なそうだったらすぐに逃げるよ」
「うん、分かった。気をつけて行ってきてね。あんまり遅いと、置いてっちゃうよ?」
「そうならないよう、努力するさ」
そう言ってから、ルウを歩かせる。俺たちがいたところから、正反対の方向にあるみたいだ。ひとまず安心だな、さっさと確認して戻ろう。