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二ヶ月、たって、実習をするよー

それから2ヶ月、日々の授業をこなしていく日々が続いた。武術では、みんな長いランニングと素振りを乗り越え、ようやく型を教えてもらえることとなった。いやー、本当にキツかった。今では素振りも全部こなせるけど、途中で何回もギブアップしたからなー。これ以上量を増やされたら、またそうなっちゃうけど。


テイムの授業では、魔獣同士での模擬戦を行っている。まだまだうまく意思が通じてないけれども、なんとか形にはなってきている。ルウだと強すぎて危ないので、俺はライムと戦っている。今のところ全勝だ。考えてることなら大体分かるし、ライムはライムで頭が良くなった。自分でも色々と考えて戦っている。


外国の授業は、各国の詳しい情報や歴史を教えられている。どうやら、歴史の授業は王国の歴史を詳しく勉強するみたいだ。世界史と日本史の違いみたいなもんだな。


魔法の授業では、攻撃・回復・支援に分けられて魔法の勉強に勤しんでいる。人数は攻撃≒回復>>>支援といった感じで、支援魔法を勉強している人はかなり少ない。仲良くはなれたけど、改めて支援魔法の不遇っぷりを見せ付けられたよ。今度、先生とかに色々聞かないとな。

この前読んだ本のとおり、支援魔法は分類が曖昧でごちゃごちゃしている。なので、自分でどんな系統の魔法が学びたいかを決めてから、それを先生に言って教えてもらうって感じになっている。生徒の数も少ないけど、先生の数も少ないのが難点だな。


サバイバルでは、もうすぐ実地実習を行うらしい。どんなに勉強しても、実際に使えなければ意味がない、少し離れた内陸の森でサバイバルをするとのこと。危なくなったら助けてくれるらしいけど、そうならないにこしたことはない。ちゃんと復習しておかないと。魔獣も出るみたいだから、剣も手入れしとかないとな。


「実地で実習かー。やっぱり、魔獣が出るところでやるんだよな」

「そうだろうね。一応、引率も付くみたいだから、大きな問題は起こらないと思うけど...」

「絶対魔獣と戦わせられるって。困ったなー、ルウは強いけれど、森とかだと厳しいんだよな」

「飛べないからねー。ライムちゃんも、けっこう強くなってるんじゃない?」

「あいつはまだまだ経験が少ない。戦闘経験はあるけど、街の近くの森でしか戦ったことはないしな。どこで実習をするかは、いつ発表されるんだ?」

「そろそろだと思うけど...。生徒が準備する時間も必要だしね」


素振りをしながら、リュカと実習のことを話す。効率的な剣の振り方は、この2ヶ月で体に刻み込まれている。まあ、より早く、より鋭くするためには、もっと研鑽しないといけない。スキルは持っていないけど、ある程度は戦えるようにしたいしな。


「ただ振ってりゃいいってもんじゃないぞー!ちゃんと考えて素振りをするんだぞ!」


と先生は言う。とりあえず先生の振り方を見て、こうしたらいいのかな?ってところは真似してるけど...。


「はあ、武術の鍛錬もしたいけど、魔法の勉強もしなきゃいけない。他にも、魔獣について色々調べなきゃだし、やらなきゃいけないことが多すぎて大変だよ...」

「退屈よりはいいと思うけどね。そうだ、後で数学を教えてくれるかな?ちょっと分からないところがあって」

「いいぞ、晩ご飯の後にやろうか」

「うん!」






武術の授業を終えた後、昼食を食べてから俺は魔獣舎に向かう。ルウはまだ帰ってこないだろうから、ライムと武術の訓練でもしてようかね。


俺が人っぽい魔獣を取ってきてと言った翌日から、ルウは変な魚人みたいなのを持って帰ってくるようになった。魚の顔が人のようになって、手と足が生えたようなやつだ。サハギンとかマーマンみたいな奴。どっちかというと、人よりゴブリンに似ていたな。

そいつらをライムが食べ続けること2週間ほどで、少し変化が起こった。ライムの体がまた少し大きくなって、手と足が長めになったのだ。形はより人間に近づいたな。色も青っぽくなって、魔法のようなものも使えるようになった。まだ水の球しか出せないけれど、これからに期待できる。溶解液の濃度もさらに上がり、似たような液を出せるようになるのも時間の問題だろう。金属を食べる量も増え、体の表面をカチカチに出来るようになっている。手の先を尖らせることもでき、爪攻撃の威力が上がった。そのうち、体全体を金属のように硬化できるようになってほしい。


ルウも俺が見てないところで頑張っているようで、体が少し大きくなっている。元が強いから成長は遅いけれど、着実に経験と魔力を溜めている。相変わらずインファイトしか出来ないけど、強化系の魔法が成長すれば、もっと強くなれるだろう。だが、今のところ人化は出来そうにない。ここらで一発、ドカンと稼ぎたいところだなぁ...。


「よ、ほ、は!」

「・・・!」ぷるぷる!


俺の木刀をかわして、両手で殴りかかってくるライム。剣でいなしつつ、時々反撃も繰り出す。こうやって一対一で戦って、どうやって動けばいいのか?とか考えてみているのだ。訓練しないと上達しないし、素振りばっかやってても実戦じゃ使えないからな。型どおりの動きだって、俺の腕じゃそう簡単に出来ないし。

今までは俺がライムの攻撃を受けているだけだったけれど、ライムが大きくなってからは、俺からも打ち込むようになった。ライムも学習しているみたいで、だんだん近接戦闘が様になってきた。こりゃ、俺もうかうかしていられないな。


「そいや!」

「・・・!?」ぷるん!?


下から斬ると見せかけて足を狩り、すっ転んだところに木刀を突きつける。何とか今回は勝てたか。体術なんてやったことないけど、何となくで多少は再現できる。格下にしか通用しないけど。


「ライムも強くなったなー。このままじゃ、俺が勝てるのもあとちょっとだな」

「・・・」こくこく

「そこで頷かれると悲しいんだけど...」


まあ、事実だからしょうがない。近くに置いといた桶からひしゃくで水を汲み、一気に飲み干す。水分補給は大切だ。


「・・・」ぷるぷる

「ライムも飲むか?」

「・・・」こく


頭から水をかけてやると、あっという間に吸収されていく。それだけじゃ足りないのか、桶に入って直接飲みだした。


「・・・」ぷるぷる

「金属を食べたいんだな、持ってくるよ」


ライムは運動すると腹がすくのか、金属を食べたがる。水じゃ満足できなくなったのは、食欲が増したからだろうか。ゴブリンとかマーマンを食べた影響かな?仕草も人っぽくなってきたし、段々近づいていってる。早く人化してほしいもんだよ。

ルウとライムの部屋から、出来損ないの剣をいくつか取ってくる。だいぶ数が減ったから、またもらいにいかないと。どんどんもらう量が増えてるから、これからももらえるかどうか、心配だ。


「ほら、もってきたぞ」

「・・・」ぺしぺし


ライムの元に戻って剣を渡すが、足りないとでも言いたいのか、地面を叩いている。・・・ちょっと甘やかしすぎたかな?


「もうすぐルウが帰って来るんだぞ?おみやげを食べれなかったらどうする」

「・・・」ふるふる


それはない、と頭を横に振っている。これはあれだな、晩ご飯の前にちゃんと全部食べるから大丈夫って言って、お菓子を食べる子どもと同じだな。叱ろうとしても、きっちりご飯は食べるから怒るに怒れない。そんな感じだ。・・・はあ、しょうがない。


「分かった、持ってくるよ。だけど、おみやげを残したら次からは絶対食べさせないからな」

「・・・」ぷる


まったく、どうすればいいんだか。まだ若いのに、母親や父親の苦労が分かるような気がするよ...。


その後、ルウが大きなイカを持って帰ってきて、ライムはそれを丸ごと食べきったのだった。






数日後の朝、朝会的なもののため全員が教室に集まっている中、先生から実習の日取りが言い渡された。


「実地実習は、明々後日から行われるぞ!明日と明後日で準備を済ましておくように!朝食を取ったらすぐに出発だから、あまり詰め込みすぎるなよ!」


明々後日という急な予定に、教室がざわめきに包まれる。確かに、ずいぶんと急な話だ。もう少し早く言ってくれてもいいんじゃないか?


「それと、今日中に一緒に行動する班を作っておくように!四人一組だぞ!」


その一言で、ざわめきはさらに大きくなる。まあ、班決めは色々考えなきゃいけないことがあるからな。しかも今日中、ハブられる奴がいないといいけど...。俺?俺は問題ない。だって、


「ツチオ君、班組もー」

「ツチオ殿、班を組むでありますよ!」


こうして声をかけてくれる、二人の友人がいるからな。特にリュカ、後ろのほうでちょうど声をかけようとしてた奴らが固まっている。男子に大人気だからなー、この子は。もっと自分の容姿について、自覚を持ったほうがいいと思う。


「いいけど、後一人はどうする?誰か、あてはあるのか?」

「うーん、もう皆けっこう組んじゃってるよ。まだどこにも入ってない人、いるかなー?」

「私の友達も、それぞれで固まってるでありますから、組んでない人はいないと思うであります」

「まあ、そうだよな。とりあえず、誰かあいてる人はいないか聞いてみてくれ。俺も知り合いをあたってみる」


そういって、俺たちは一旦バラける。一応、授業をいっしょに受ける知り合いはいるんだけど...。どうやら、同じ支援魔法組で組んでしまっているみたいだ。当てが一気につぶれちゃったよ...。

1分もしないうちに、元のところに戻る。当然、二人はまだ戻ってこない。周りじゃ集まってワイワイ話してんのに、俺だけ一人ぼっちである。寂しい。


「あのー....。もしかして、まだ組んでいませんか?」

「んあ?」


ボーっとしていたところに、誰かが声をかけてくる。そっちの方向を見ると、小さい子が俺を見上げていた。赤っぽい髪をショートカットにしている、運動大好き!って感じの子だ。頭に丸っこい黒色の耳がのっかっている。・・・熊耳?


「えっと、その」

「あ、ああ。まだ三人しかいないよ」

「そうなんですか!?その、出来れば班に入れて欲しいんですけど!」


熊耳がピコピコ動いている。男で獣耳はどうかと思っていたが、小さい子なら可愛らしいな。・・・ショタコンじゃないよ?


「他の人にも聞かないと、何とも言えないけど...。あ、戻ってきた」

「ツチオ君、そっちはどうだった?僕のほうは、もう誰も残ってなかったよ」

「こっちもでありますよー...。お、そこのビーストさんはツチオ殿のお知り合いでありますか?」

「いや、ここで二人を待ってたら、班に入れてくれないかって。二人とも駄目だったみたいだし、こいつを入れるんでいいんじゃないか?」

「お願いします!」


深々と頭を下げる熊耳の子。俺としては、こいつでいいと思うんだけどな。男が三人?になっちゃうけど。


「僕は別に構わないよ、他に当てはないしね」

「そうでありますな、折角来てくれたのに悪いでありますよ」

「そうか。というわけだ、俺たちの班に入ってくれるか?」

「も、もちろんです!ありがとうございます!」


再び頭を下げる。ここまで感謝しなくてもいいだろうに。


「頭上げろよ、血が昇るぞ。それより、お前の名前を教えてくれ」

「あ、そうでしたね!」


ガバっと顔を上げる。なんというか、一つ一つのアクションが大きいな。


「僕の名前はファルシオンです!気軽にファルって呼んでください!えっと、みなさんの名前は...」

「僕はリュカだよ。よろしくね、ファル君」

「私はトリスであります。よろしく、お願いするでありますよ!」

「俺はツチオだよ、まあよろしくな、ファル」

「はい、よろしくお願いします!」


こうして、俺たちの班はこの四人になった。ようやく男の友達ができそうだな。






「ファルはビーストなんだよな」

「はい、黒熊族ですよ」


俺たちは班を組み終わったのだが、まだ周りでは班決めが難航している。先生はここで全ての班を作る気なのか、いすに座って面白そうに様子を見ている。終わるまでの間、お互いのことについて話すことになった。


「黒熊族かー。王国で育ったの?」

「そうですよ。元々先祖は帝国に仕えていたらしいんですけど、灰熊族との権力争いに敗れて、王国にやってきたそうです」


灰熊ってことはグリズリーか、そりゃ負けるわな。


「灰熊族は強いんでありますか?」

「強いですけど、黒熊族も同じくらい強いです!争いに負けたのは、灰熊族が卑怯な手を使ったからです!黒熊族の戦士は勇猛果敢で誇り高いんです!正々堂々戦ってたら、絶対黒熊族が勝っていたに決まってます!」

「わ、分かった。分かったから落ち着けって」

「はあはあ。す、すいません。つい熱くなっちゃって」


ファルにとって、そこんとこは譲れないんだろう。まあ、灰熊族のやり方は嫌いじゃないけどな。騎士道ではないだろうけど、そういうのは持っているだけで重荷になるし。


「えっと、ツチオさんたちはどんなことを勉強してるんですか?」

「僕は攻撃と回復魔法かな。武術もちょっとは出来るよ」

「私は武術一筋でありますよ!」

「俺はテイムで魔獣を使役することだな。支援魔法も少しは使えるけど、魔力はそんなに多くない」

「テイマーなんですか。どんな魔獣を使役しているんですか?」

「ツチオ殿はすごいんでありますよー。なんたって、竜種をテイムしているんでありますから!」

「竜種!?え、本当ですか!?」


ファルが身を乗り出して聞いてくる。トリスめ、誤解をまねくような言い方をしおって...。


「竜種っていっても、最下位の竜だし俺の実力でテイムしたわけじゃないよ。たまたま、偶然、奇跡的に」

「まあ、普通にテイムしたんじゃ、あんななつき方はしないよね。もうゾッコンって感じ」

「そうなんですか...。たまたまでも、竜種をテイム出来たのはすごいですよ。後で見せてくれませんか?」

「いいけど、大丈夫か?腐っても竜だぞ」

「問題ないです!いつかは、一人で竜を倒せるような、父のようになりたいんです!」


こぶしを振り上げるファル。熱いねー、さすが男の子。父親を越えていかないとな。


「・・・えっと、ツチオさん?さっきからずっと気になってるんですけど...」

「ん、何が?」

「そのぉ・・・何で、ずっと僕の頭を撫でてるんですか?」

「特に意味はないよ。強いて言えば、俺が撫でたいからかな」


念願の獣耳を眼の前に、撫でるのを我慢できようか?いや、出来ない。ルウのスベスベの鱗やライムのひんやりした肌もいいけど、やっぱりもふもふはいいなー。


「思いっきり我欲じゃないですか!やめてくださいよ、子どもじゃないんですから!」

「俺から見たら、ファルなんてまだまだ子どもだよ」

「そんなこと言って...。ツチオさんはいくつなんですか?」

「16かな」

「え!?僕より3つも上!?」


いや、驚くことでもないだろう。身長高いし。


「年上だとは思ってましたけど、せいぜい1~2歳だと...。童顔なんですねー」

「そうなんだよね。僕も最初聞いたときは驚いたよー。若く見えるよね」

「顔が幼いとで言いたいのか?」


日本じゃ、大学生だと間違われることもあったのにな...。外国で日本人は若く見られるって、本当だったんだな。


「・・・って、それは撫でてもいい理由にはなりませんよ!?」

「いいじゃん、別に。減るもんでもないし」


熊耳をつまんでみると、ふにふにとした感触。思ってたより柔らかいんだな。


「耳触んないでくださいー!」

「ああー...」


俺から離れてリュカのほうへと行ってしまうファル。折角の獣耳がー...。


「そんな悲しそうな声、出さないでくださいよ...。気が向いたら、また触らせてあげますから」

「絶対だぞ。触らせてくれなかったら、部屋まで追いかけていくからな」

「無理ですよ、どこにあるか分からないでしょ」


そう言ってられるのも今のうちだ。今度、寮母さんに聞いてやる。そうすりゃ一発だ。


「よーし、全員班が決まったようだな!それじゃあ、この紙に班員の名前を書いて出してくれ!」


やっと決まったか、さっさと書いて授業に向かおう。




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