表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/113

攻撃、詠唱、支援

ようやく書きあがりました。遅くなってしまいすいません。

ライムが人型になった翌日。魔法の授業は、原っぱで行われた。ここ、かなり使われてるな。訓練所だと、全員入りきらないからな。


「それでは、授業を始めるぞい。今日から、本格的に魔法を使う。全員、魔力を動かせるようになってるか?」


誰も否定しないので、ゴーシュ先生は話を続ける。


「それでは、魔法について説明しよう。魔法とは、精霊にして欲しいことを伝えて、様々な現象を発生させることじゃ」


精霊?また分からん言葉が出て来たな...。


「精霊とは、どういうもの何ですか?」


真面目そうな男の子が質問する。


「精霊とは、世界そのものじゃよ。山・川・森など、あらゆる物に宿っておる。エルフは精霊と会話出来るので、直接して欲しいことを伝えられるわけじゃ」


それが所謂、精霊魔法ってことか。


「そうなの?」

「うん、聞こえるよ。話すことだって出来るし」


さすがエルフってところだな。


「どのように使えるか、それはイメージと言葉じゃ。精霊は人の考えていることが分かるから、それで何をして欲しいか伝えるのじゃ」


イメージが大切ってことか。じゃあ、言葉は?


「じゃが、イメージだけでは伝えるのは難しい。そこで、言葉を使ってイメージを補うわけじゃ」


逆に言えば、イメージがしっかりしてれば言葉はいらないってことだ。妄想なら得意だ、俺の時代が来たか!?


「それじゃあ、見本を見せるぞい。精霊よ、風で敵を撃て、風弾」


小さな風の球が出現する。おお、あれが魔法か...。想像していた通りだな。


「これは風の魔法の基本、風弾じゃ。魔力を調整することで、こんな風に小さなものから」


今度はかなり大きな風の弾が出てくる。ゴーシュ先生が木に向かって撃つと、高速で飛んでいき、木に当たってバァン!と大きな破裂音をあげる。


「このように、大きなものまで出すことが出来る。まあ、儂は風魔法のスキルを持っとらんから、そこまで威力は上がらないのだがな」


スキルを持っていなくても、あんだけの魔法が撃てるのか...。まあ、俺は魔力が少ないから、それを増やすことから始めないと。


「それじゃ、まずは全員でこの魔法を練習するぞ。ここに一列で並ぶのじゃ」


皆が横一列に並ばされる。まあ、当たったら危ないから、当然決まった方向に撃たせるのだろう。


「スキルを持っていない者もおるだろうが、とりあえずやってみるのじゃ。詠唱は、最初の『精霊よ』と最後の『風弾』さえ入れれば、間の言葉はどのようなものでも構わない。エルフは、風弾だけでもいけるかもしれんの」


自分で考えるのか...。ちょっと、いやかなり恥ずかしいな...。とりあえず、先生のを真似してみるか。


「んじゃ、やってみせい」


先生がそう言うと、生徒全員が一斉に詠唱を始める。さて、俺のやってみますか。

まずは大きさを決める。大体、テニスボールと同じ位でいいかな。そして、それを風が球になっているよう、想像を膨らませる。


「精霊よ、風で敵を撃て、風弾」


俺の手に、ゴルフボール大の風の弾が現れる。むう、思ってたより小さいぞ。使った魔力は・・・二割くらい?ホント、魔力が少なくて困っちゃうよ...。


「風弾!・・・うん、まあこんな物だね」

「精霊よ、風で敵を撃て、風弾!・・・ううう、出来ないでありますよー...」


リュカはハンドボールくらいの大きさに風の弾を出し、トリスは発動しなかったみたいだ。俺は、発動しただけ良かったのかな。


「リュカのは大きいな...。さすがエルフってとこか」

「ツチオ君だって、スキルがないのにちゃんと発動するって、けっこうすごいことだよ!」

「そうなのか?まあ、イメージがしっかりしてたんだろうな」

「イメージでありますかー...。難しいでありますよー」


込めた魔力が尽きたようで、風の弾が霧散する。ふう、持続させるのもけっこう難しいな。


「出来たか出来なかったかは抜きにして、全員魔法を試したようじゃな。出来なかった者は、手を挙げてみい」


半分以上の生徒が手を挙げる。スキル持ちは全員出来るだろうから、こいつらは持っていない奴らだな。


「ふむ...。このくらいの魔法ならスキルが無くても撃てるじゃろうから、悪いのはイメージや言葉じゃろうな。そこの、なんて詠唱した?」


先生が手を挙げていた元気そうな人間の男の子を指す。


「え!?えっと、先生と同じのです」

「いかんのぉ。ちゃんと自分で考えて、一番しっくりくるものでなくては、上手く魔法は使えんぞ。とりあえず、撃てなかった者は工夫して撃てるようにする。撃てた者は、詠唱を短く出来るようにする、今日はこれをやってみようか」


支援魔法を教えて欲しかったんだけど・・・まあいいか。とりあえず、使う魔力を減らせるよう、頑張ってみるかね。






「ツチオ殿、どういう風にすればいいんでありますか?」

「いや、自分で考えろって言われてただろ」

「でも、一から考えるのは大変でありますよ。リュカ殿は?」

「うーん、やったことないから分からないなー。ほら、僕エルフだから、詠唱ってあまりしないんだよね」

「そうでありますか...。うーん、どうすればいいんでありましょう...」


とりあえず、俺も一言で魔法を使えるようになりたい。イメージを鮮明に描ければ、言葉だっていらないと思うんだけど...。やってみよう。


さっき出した風弾を、頭の中にはっきりと思い浮かべる。そしてそのまま、


「風弾」


と一言呟く。すると、一回り大きくなった弾がでてきた。大きくなったってことは、言葉に魔力が込められているってことか?


「ツチオ殿が一言で魔法を出したでありますよ!?」

「ツチオ君、本当にスキルを持ってないの?」

「持ってないよ...。それに、これってすごい集中しないと出来ないよ。リュカはあっさりやってるだろ?」

「そりゃそうだけど...。それでも、スキルなしで一言はすごいよ。よっぽどイメージがハッキリしてるんだね」


まあ、オタクにとって妄想ってのは、格好の暇つぶしだからな。自然と想像力は鍛えられるんだよな。


「ううう、分かんないでありますよー」


そろそろトリスを放っておくのも可哀想だな。ちょっとは考えてみるか。


「そうだなー・・・精霊よ、敵を撃つ風の弾を現せ、風弾、とか?」

「精霊よ、敵を撃つ風の弾を現せ、風弾!」

「まんま言うなよ」


トリスの手に小さな弾が現れる。え、あれで出来たの?ちょっと捻っただけなのにな...。

「出来たでありますよ、ツチオ殿!出来たであります!」

「よかったなー、トリス。それじゃ、もっと短く出来るよう頑張ろうか」

「でありますな!」






昼の鐘が鳴ったので、その日の魔法の授業は終了した。トリスはずっと頑張ってたけど、あれ以上短縮させることは出来なかった。


「悔しいでありますよ...」

「まあ、トリスは魔力の操作を練習する為に、魔法の授業を取ってるんだろ?そっちのほうを頑張れよ」

「そうだよ!剛体とかを集中して鍛えればいいじゃん!」

「そうでありますけど...。ちょっとくらい、使えるようにはなりたいであります」

「まあ、俺も攻撃魔法を多少は使えるようになりたいから、その気持ちは分かるけどな...。昼飯が冷めるぞ、早く食べよう」


後で図書館に行って、支援魔法のことでも調べてみるかね。この前見たのは、基本的なことしか書いていなかったし。ライムにご飯をあげたら、いってみようかね。



ライムに剣と薬草、水をあげてから図書館に向かう。今日も食欲は旺盛で、よく剣を食べる。気に入ったのか?溶解液入りの水も大量に飲んでるので、身体も大きくなってきた。


「こんにちは、今日はどんな本を探しているのですか?」


図書館の受付の人が、俺を見ると話しかけてくる。いいね、こういうの。


「支援魔法に付いて書かれている本です。今日魔法の授業があって、ちょっと興味がありまして」

「そうなんですか。ちょっと待っててくださいね」


受付の男性が本を取りに行く。どこのあるか行ってくれれば、自分で取るのに...。


「これが色々載ってておすすめですよ」


そう言って持ってきたのは、辞書ほどの厚さの本。・・・厚いな。


「こんなに大量にあるんですか?」

「支援魔法は、あまり分類分けがなされていませんからね。一冊の本にまとめてしまうと、ここまでの量になります。そういうせいか、難しい魔法も一緒くたになって、まとめられちゃってます」

「・・・支援魔法って、どういうものがあるんですか?」


支援だから、味方の能力を上げたり、行動を助けるものとかじゃないの?バフ的な。


「えっと、能力を向上させるものや行動を助けるもの。あと敵を妨害するのとか攻撃を防ぐものもありますし、呪いとか分類し辛いものも、支援に含まれていますね」

「呪い!?いや、それは全然違うでしょう...」


敵を妨害するのはまだいいとしても、呪いとかは違うんじゃないか?まあ、どっちもデバフって考えたら似たようなものだけど。


「魔法というのは、攻撃・回復・支援に分けらています。この中で攻撃と回復はすごく研究が進んでいるんですけど、支援っていうのはあまり研究されていないんですね」

「そりゃまたどうして。味方の能力を上げれば、戦うのも楽じゃないですか」

「まあ、色々理由はあるんですけど...。攻撃魔法が優遇されている理由は明白ですね」

「何ですか?」

「派手じゃないですか、攻撃魔法。支援魔法は地味ですからね」


・・・まあ、確かに地味そうだな。魔法って聞いたら、攻撃魔法を思い浮かべるし。どうせやるなら、派手でかっこいい方をやりたいか...。


「回復魔法は絶対に欠かせませんから、研究はされます。でも、支援はあくまでも支援。必ず必要ってわけじゃないですからね」

「確かに、その通りですね。けど、地味だからって軽視するのはよくないでしょう...」

「まあ、他にも理由はありますよ。支援魔法っていうのは、集団相手に使えるものが少ないんです。特に、能力を上げるようなものは。攻撃魔法には範囲攻撃用のものもあるので、もっぱらそれを強化するための研究に、力が入れられるんです」

「範囲攻撃が出来る魔法を、支援魔法に転用は出来ないんですか?」

「されてはいますけど、結果が出るにはまだまだ時間がかかりそうです。国は、出来るだけ早く結果を出して欲しいんですよ」

「何でそんなに急ぐんです?」

「決まっているでしょう、戦争の際に使えなければ意味が無いからですよ」


ああ、なるほど。理解した。確かに戦争だったら、味方の兵を強化するより、敵を殺したほうが手っ取り早い。どこの世界でも、戦争が起こると技術が進歩するんだな。


「それじゃあ、冒険者の方は支援魔法を使いますか?」

「よく使うと聞きます。少数や強力な魔獣の相手なら、能力の強化が活きてきますしね。パーティーは多くても十数人なので、かけるのもそんなに大変じゃないですし。中には、独自でオリジナルの魔法を作っている人もいるみたいですよ」

「そうなんですか、色々話を聞いてみたいですねぇ。この本、ありがとうございます。とりあえず読んでみますよ」

「いえいえ、これが仕事ですから。勉強、がんばってください」


本を机の上に置き、目次を見る。一応、効果の種類で大まかに分けられているようだ。ざっと流し読んで、気になるものだけ詳しくみてみよう。






量が多かったので、流し読んでいくつか詳しく見ていただけも、けっこうな時間を費やした。本を閉じたのは、太陽が傾き始めて日光が少しオレンジっぽくなる頃だった。そろそろルウが帰ってくるだろう、魔獣舎に移動しよう。

いくつかの魔法をメモって本を返し、図書館の外に出る。魔獣舎の前に着いたのは、ちょうどよくルウが空から降りてきたときだった。今日も海に行ってきたみたいだ、大きな魚を二匹持ってきている。


「今日もお疲れ様。また海に行ってきたんだな」

「グル」

「鱗が塩でベトベトになってるぞ。後で洗ってやるからなー」

「グルゥ!」


ライムを連れてきて、魚を食べさせる。やはり強化されているようで、溶かすスピードが早くなっている。この調子で、どんどん強くなってほしいもんだよ。ルウも強くしてやりたいんだが、元々強い上に俺は学院からあまり離れられない。しばらくは、狩りを続けてもらうしかないな。


「ルウ、今度は人っぽい魔獣を持ってきてくれないか?ライムに食べさせてみたいんだ」

「グル?グルルゥ...」


人っぽいのは肉が少ないから、あまりいい獲物じゃないのか。まあ、食事のために取ってきてもらってるわけじゃないし、そこは気にしなくてもいいな。


「だから、次は人っぽいやつを頼む。見かけたらでいいからな?無理に探す必要はないぞ」

「グル」

「ライムも、ルウにちゃんと礼を言っておくんだぞ」

「・・・」ぷるぷるこくこく


うなずくライム。これで是非とも人型に近づいてほしいもんだな。


そろそろ話を進めていきたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ