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落ちて、転移して、懐かれて

連載、始めましたー。息抜きです、極振りで煮詰まったらこっちを書いてます。

『極振る者たち』もよろしくお願いします。

「はあ、やっと一週間がおわった...。授業面倒くせぇー...」


学校からの帰宅途中、日々の鬱憤を晴らすかのように深いため息をつく。毎日毎日、同じようなことを繰り返して、本当につまらない。


「異世界からのお迎えでも来ないかなー。または、空から美少女が落ちてくるのでもいいんだけど」


自分でもありえない、馬鹿馬鹿しいと思っていながらも、ついつい口にしてしまう。まあ、実際にそういうことがあったとしても、俺が巻き込まれる訳えぇぇぇぇ!!!


「うおおおををを!!!???何でこんなところに、穴が空いてんだああアァァァ!!!」


突然、地面にあいた穴を落ちていく俺。おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は御門土雄、アニメとマンガとラノベとゲーム等々が好きな高校一年生だ!今は真っ暗な闇の中を落下中だぜ!


「・・・って、誰に自己紹介してんだよぉぉぉ!!!あまりの出来事に脳みそ涌いちまったんじゃねぇよなーーーあああああぁぁぁ!!!???」


下を見ると、光が差し込んできている。おっしゃ、出口か!


「とおおおおおう!」


頭を抱えて着地に備える。勢いをどうやって殺そう、とかそんなんは後回しだ!まずは頭を守る、骨の数本はくれてやる!

・・・だが、いつまでたっても衝撃は襲ってこない。恐る恐る目を開けてみると、辺り一面真っ白だった。真っ白といっても、霞のようなものが一面に漂っている感じだ。・・・こんな光景を、俺は飛行機の中から見たことがある。もしかして、もしかしなくても俺って今...。


「雲の中にいるのかあああぁぁーーー!!!???」


っていうか、何で雲の中にいるのに寒くないんだよ!雲が出来るとこだったら、気温はかなり低いはずだぞ!?ああ、今はそんなこと気にしている場合じゃない!どうにかしないと、このまま地面に叩き付けられてペシャンコだ!


解決策について考えを巡らせていると、ブワッと雲が無くなり視界が開ける。俺の目に映ったのは、一面の青青青。ここは海の上だったのか!


「ああああ、やばいやばいやばい!これで通りすがりの誰かさんに助けてもらえねぇ!万事休すなのか!?」


ところが、そこで土雄の身に奇跡が起きる。バッと目の前を何かが通り過ぎ、彼はその上に乗ることが出来たのだ!


「うぐっ!痛ってええぇ...。痛いってことは、生きてるってことだよな。はあー、良かったー...。そういえば、俺は何の上に着地したんだ?妙にゴツゴツしてるけど...」


何やら視線を感じるんだよな...。そう思いながら顔を上げると、


プテラノドン、いやリ◯ードンみたいなやつが、俺を目だけで見ていた。・・・うん、目だけ?ってことは・・・ここって、こいつの背中?


「ギャアアアアアアア!!!」

「ぎゃあああああああ!!!」


俺を振り下ろそうと、グルングルン回転しだす飛竜。慌てて首にしがみつく。

縦横斜めと三次元、縦横無尽に飛び回られて、俺の胃と脳がグルングルンと揺らされる。うぷ、気持ち悪ぃ...。意識が落ちそうだけど、ここで気絶したら海に一直線だ。なんとか持ちこたえないと...!


「うぐううううぅぅぅ...」

「ギャアアアウ...」


流石に飛竜もずっとアクロバット飛行を続けてはいられないようで、水平に身体を戻す。た、助かったぁ...。


「グルウウウゥゥゥ...」

「そ、そんな睨むなよ...。怖いだろ」


とりあえず、俺を落とすのは諦めてくれたみたいだ。後でどうとでも出来ると思っているんだろうな。くそっ、一難去ってまた一難か。どうしようか...。



しばらく考えた結果、どうしようもないという結論に至った。こうなったら出たとこ勝負、その時になったら考えよう。と、いうわけなので、次に重要な問題について考えよう。それは・・・ここはどこだということだ。

こんな飛竜、地球にはいない。いるとしたら、大昔の恐竜が一番だろう。もしくは・・・異世界とか。

いや、ホントありえないし馬鹿馬鹿しいとは思ってるんだよ!?でも、異世界だったら嬉しいなーとか、魔法とか獣耳とかモンスター娘とかいたらもっと嬉しいなーとか...。思っちゃうんだよ、男の子だもん!


・・・まあ、それはおいおい確認できるだろう。別にここで死んでも後悔はない。母さんや父さんには悪いと思うけど、俺はここで生きていこう。帰る方法があったとしても・・・帰らないだろうな。

はあ、とにかくまずは落ち着ける場所に着くまで待とう。こいつをなんとかして、助けを待つかな。






小一時間ほど飛んでいただろうか、でっかい壁がみえてきた。どうやら岸壁のようだ。真ん中辺りに穴が掘られていて、そこに鳥の巣が大きくなった感じの物がある。あそこが巣なのか。

着地する飛竜の背中から転がるように降り、出来るだけ距離を取る。こいつの巣は狭く、せいぜい5m離れている位だ。ちょっと前に出られたら、ヒョイと食べられてしまう。ど、どうしよう...。


俺の予想に反して、飛竜は何もしてこなかった。ちょっと俺の方を見て、フンと息を吐いて身体を丸めて寝てしまった、猫みたいだ。

しかし解せない。何で食べないんだ?もしかして、明日の朝ご飯にするつもりとか...。見逃してくれてたんなら、嬉しいんだけど。


とりあえず無事に安定した場所に着いたからだろうか、急に強い疲労感と眠気が俺を襲う。やば、今寝たら明日の朝食われる!ああ、けどめちゃくちゃ眠い...。




目が覚めたのは、真夜中だった。良かった、何とか起きれたみたいだ。

隣を見ると飛竜がすやすやと寝ている。こうやってみると、中々愛嬌があるじゃないか。ゴブリンとかオークに嬲り殺されるよりは、こいつにバクッと食われたほうが全然マシだな。


空を見上げると、ちょうど月が天頂に上り切ったところだった。濃紺の空に白い星々が光っている中、薄水色の月が輝いている。


「うわ、月が青い。これはもう異世界だと断定しちゃっていいよね」


ここは異世界なのか、冗談でもずっと行きたいと思っていたから、けっこう感慨深いな...。

しかし、そうとなると生きていくのは大変だぞ。こんなモンスターがいるんだから、他にも色んなやつがいるとみて間違いないだろう。となると、戦いはどうやっても避けられないな。現代日本から来た何の変哲もない高校生が、殺し合いなんてそう簡単に出来る訳がない。どうしたもんか...。


「へ、へ、ヘックシュ!」


海の側だからか、風が強い。寝ている間に冷やしてしまったようで、思わずくしゃみをしてしまった。その音で目が覚めたのか、飛竜が目を開け俺を見る。やばい、このままじゃこいつのお夜食になっちまう!

飛竜が俺に口を近づける。くっ、せっかく異世界に来れたのにここまでなのか!?どうせ食べるなら、一思いに飲み込んでくれ!


しかし、またもやこの飛竜は俺の予想を裏切った。俺の首根っこを咥えると、自分の翼の中に入れて再び寝始めたのだ。あ、けっこう温かい。っていうか、なんでこいつ俺を食わないんだ!?その上、自分で暖めるなんて!あ、いや、食べられたいって訳じゃないよ?


「お、おい。何で俺のことを食べないんだ?」


試しに聞いてみたが、飛竜は俺をチラッと見てフンッ!と鼻を鳴らしただけで答えない。期待はしていなかったけど、やっぱり話せないか...。意思の疎通が難しいな。


「えっと...。よ、よしよし?」


とりあえず、感謝の気持ちを込めて頭を撫でてみる。最初は嫌がっていたが、俺が止めないのを見て諦めたようだ。されるがままになっている。本当に嫌だったら、俺の手くらい噛みちぎってるだろうからな。そこまで嫌ではないのだろう。猫や犬相手に鍛えた俺の撫でスキルが、命を救う日が来るとは...。どんなくだらないことでも、ちゃんと練習すれば役に立つ日が来るんだな...。

暖かくなったからか、再び眠気が襲ってきた。とりあえず、命は助かったみたいだし寝よう。疲れを取ってから、これからのことを考えるか。


そうして俺は、飛竜がとぐろを巻いているなかで眠った。鱗があったけど、結構柔らかくて寝易かったです。






「んううぅぅぅー...。よく寝たなー」


飛竜が動いたことで目が覚める。翼をのばして、首をフルフルと振っている。そうしてから翼を一振りして、俺の首根っこを噛む。え、やっぱ食べるん?

そのまま背中に俺を乗せて、飛竜は空に飛び出した!・・・ってええええええ!!!???


「何でええええぇぇぇぇ!!!???」


ギューーーーンと一気に加速する。どうやったら、こんなに加速出来るんだよ!?魔法、魔法なのか!?

昨日みたいなアクロバット飛行はせず、たまに羽ばたきながらまっすぐ飛んでいく。飛んでるのにまったく風圧を感じないのは、多分魔法のせいだろうな。・・・理由が分からないものを、全部魔法のせいにしてるような気がする...。


「ったく...。飛ぶなら飛ぶって言ってくれよ」


背中をバシバシと叩きながら、そう愚痴をこぼす。「グルルウ...」と飛竜が返事をしたような気がした。

そういえば、何で飛んでるんだ?朝だから食い物でも取りに行くのかな。

しかし、こうやって飛ぶのは中々気持ちいいな。ちょうどいい強さの風が吹き、日光が暖かい。人のいるところにいかなきゃいけないけど、少しはこうして飛んでいた「「「ギュアアアア!!!」」」・・・ギュアア?


「って、後ろから何か来てる!おいおい、気づいてるかー!!!」

「ウウウ...」


背後から三羽の鳥が近づいてくる。どいつもくちばしとかぎ爪が異様に大きく、あれで獲物を仕留めるんだろう。

三羽が一斉に鳴き声を上げると、火の玉が発生して俺たちに向かって飛んでくる。うおおおお。魔法だああああ!!!


「ちょ、避けろ避けろ避けろ!!!」

「グラア!」


まるで、「うっさい、分かってるわ!」と言っているように、急降下して魔法を回避する飛竜。鳥たちはぴったりと背後にくっついて、全然離れてくれない。そんなに甘くないか...。

しばらく後ろから魔法を放っていた鳥たちだが、全て避けられいるのを見て埒が明かないと思ったのか、一羽を残して左右に移動し俺たちを挟む。挟撃?いや、後ろの奴も突っ込んでくるつもりか!?これを避けるには・・・バレルロールだ!


「おい、バレルロールだ、バレルロール!ああくそ、どうやって伝えたらいいか分からん!」


伝われ、俺のビジョン!そう思いながら、必死にバレルロールを想像していると、ついに鳥たちがかぎ爪を前に出して突撃してくる。これが最高速みたいだし、何より飛竜の顔がかなり真剣で切羽詰まってる。くっそー!ここまでなのか!?


「こんの馬鹿飛竜!助かるために言ってるんだぞ!いいから、バレルロールしろおぉぉぉ!!!」


俺が思いっきり背中を叩くのと、飛竜がグン!と上昇するのは同時だった。そのまま左に回転し、少し離れた所で水平に戻る。・・・バレルロールだ。どうして分かったんだ?まさか、俺の念じてたことが伝わったとか。それってどんなファンタジー、ってこの状況もかなりファンタジックだな。何が起こっても不思議じゃないか。


鳥達がお互いのかぎ爪で傷つき落ちていくのを見ながら、俺は考えを読んだ飛竜に話しかけてみる。


「お前、俺の考えてることが分かるのか?」

「グルルゥ...」


「何となくは」と言っているような気がする。俺も、何となくこいつの考えてることが分かるな...どうなってるんだろう。


「そういや、最初はあんなに暴れたのに、何で巣に着いたら食べなかったんだ?」

「グ、グルル...」


ふむ、色々事情があるのか。細かいことは流石に分からん。まあ、こいつに俺への敵意がないって確定しただけでも十分か。


「あ、食い物を取りにきたんだよな。俺の分も頼む」

「グル」


最初からそのつもりらしい。気が利く奴だな。







その後、魚を二匹ほど取ってから巣に戻った。飛竜の足には、大きな魚が掴まれている。取る時に、いきなり急降下するもんだから、めっちゃビックリした。思わず首にしがみついて、「くるしいわ!」って怒られちまったよ。


「・・・なあ、そのままで食べるのか?」


そして、今は食事の時。バクバクと生魚を食べる飛竜に向かって、目の前に置かれた魚を見る。何故かひれが刃のように鋭いが、そこらへんは気にしないことにしておく。


「グラア」


当たり前だろ、食っちますぞ、と言う飛竜君。まあ、こいつに俺のことを分かれというのもお門違いか。


「せめて焼いてくれ。ブレスとか出せないのか?」

「ギャウ」


無理らしい。どうしよう...。まだ殺して間もないから、新鮮だとは思うけど...。ええい、ままよ!

ガブリと魚の横っ腹に噛み付く。口に広がる、濃厚な血の味。ううう、生臭いよ...。寄生虫とかいないよな?


生魚を食べるのは、三口が限界だった。残りの魚は飛竜に上げて、俺はバックに入っていたお菓子を食べる。明日中には、人のいるところに行くことに決めた。こんな食生活を続けてたら精神的にキツい。


「だから、ここにいるのは今日までだぞ。明日は人のいる場所に行くからな」

「ギャウ」


それでいいらしい。巣に執着とかはないのか。明日は早くなるだろうし、早めに寝とくか。今日も飛竜と一緒だな。あそこ、暖かいし。


そうして、俺は飛竜のとぐろの中で寝た。日本の夢をみることはなかった。




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