第三話
涼の新人研修がスタート。
まあ、新人研修とは建前で、情勢や軍の説明が大半だと思います…
涼はこの広い研修室の、一番後ろの机に座っていた。
余談だが、涼は以前学校の席替えで真面目ぶって一番前の席に座った。そして次の日の最初の授業、教師の目の前で寝たのである。なので次の席替えから、涼は一番の後ろの席に好んで座るようになったのだ。
教官が入ってくる。研修が始まった。
ヤ、ヤバいぞこの上官。目を閉じていてもここまで殺気が伝わってくる。と、思ったが。
「えー、それではね、さっそく研修ね、始めちゃおうかね」
「へ?」
な、なんだよコイツ。見た目と全然違うじゃないか。読み取れなっかたとは不覚。そうか俺はたとえ中二病だとしても(違います)、実際に使える訳じゃないのか。そんな感じで、研修が始まる。
「えー、まず最初にだね、この国が今どうなちゃってるのかね、確認していこう」
まあ俺に取っちゃ初めてだが。
「えー、私たちが住んでるこのね、日本はねうんたらかんたら」
ぐお、これは最高級の不協和音だ。眠くなってきた。あ、意識が遠のいてゆく…
ああ、ダメだダメだ。寝ちゃだめだ…。うう、ヤバすぎる。あ、朝飯まだだ。
涼がダウン間際なので、省略したものを載せておこう。読者に必要な知識を記した。
1年前の2688年、副宰相であった西条尚富が大阪で武力蜂起した。これをきっかけに、日本は東西で二つに分かれている。宰相の都宮陽明の勢力範囲は岐阜高山以東だ。つまり国会で決まった法律も、この範囲でしか効果がない。対する西条尚富の勢力は、愛知名古屋以西だ。そのため、この範囲は大阪の「仮国会」で決められた法律が効果を発揮する。また、どちらの領地でもない地域がある。能登半島と、愛知豊橋付近だ。ここは両軍がずっと睨み合いを続けている。以上だ。
ちなみに涼が「上官」と呼んでいた人物は、東京軍学大学の非常勤講師である、吾妻先生である。東京軍大とは、21世紀の東京大学の位置にある、日本トップクラスの大学である。この時代、多くの若人は軍学大学を目指した。
「今回は以上。ね。次回は現代科学について学習するね。うん。では、朝食後に会おう。ね」
吾妻先生が出ていく。涼が気になっていた、朝食はこの後のようだ。
涼は、どんな料理があるのか不安を抱きつつも、食堂に向かうのだった。
都宮軍青年志願兵宿舎七号棟の食堂。涼の期待以上に、21世紀と変わらない。並んだ先で配膳されたメニューも、「鮭の塩焼き定食」であり普通すぎる。
「文化、変わってないんですが、どうしたんだろ?人類。衰退したのかな?」
食べてみる。味はやはり変わらないようだ。返却カウンターも変わっていなかった。
まあ、このあとの研修で科学の進歩の凄まじさが分かる。
いつか設定集も出すので、おおまかなことが知りたかったらそれを読んで頂ければ幸いです。では次回あいましょ。